2019年以降の不動産投資は難しい。
不動産投資家の間で、よくそう言われることがありますが、本当に2019年以降の不動産投資は難しくなるのでしょうか。
そもそも日本国内における不動産投資は、少子高齢化、空き家の増加、供給過多、地方の過疎化、都心エリアへの一極集中、など不安要素がいくつも挙げられます。
たしかにこれらの要素は、中長期的に厳しい環境に置かれるかもしれません。
立地・場所と間取りの選択は慎重に行う必要がありそうです。
他方で、「2019年問題」という言葉が注目されています。
様々な業界で「2019年問題」は問題視されておりますが、不動産においても大きなインパクトを与える可能性があります。
今回は、不動産市場における「2019年問題」、不動産投資への影響について解説します。
不動産投資「2019年問題」とは
2019年問題とは、複数の事情によって2019年に不動産市場が「大きな転換期」を迎える可能性があるという問題です。
さらに具体的に言うと、東京都心部を中心に不動産価格が下落する複数の要因が、2019年に同時発生することが予想されているのです。
「2019年問題」で不動産価格が下落するかもしれない3つの要因
では、不動産価格が下落する可能性がある複数の要因とは具体的に何なのでしょうか。
「2019年問題」と言われている要因は、大きく分けて次の3つがあります。
1.日本の世帯総数の減少
不動産投資・市場の動向に影響を与える要因の1つが「世帯数」です。
日本の人口が減少傾向であることはすでに周知の事実ですが、不動産市場に与える影響が大きいのは人口よりも「世帯数」の推移です。
単純に1世帯が1つの物件に住んでいると考えれば、世帯数の減少はすなわち不動産需要の減少ということになります。
「国立社会保障・人口問題研究所」の予測データによれば、日本の世帯総数は2019年に5,307万世帯となり、以降はピークアウトして減少の一途をたどるとの予測がされています。
世帯数の減少によって不動産の需給バランスが崩れ始めることが予想されるため、これに伴う不動産価格が下がるのでは、と見られているのです。
2.2020年東京オリンピック景気の反動
2013年に東京オリンピック開催が決定して以降、東京都心部を中心に日本の不動産が世界の投資家から注目され、中国人を中心に多くの外国人が日本の不動産に投資しました。
ただ、過去のオリンピックでは、オリンピック開催決定による期待値で上昇した不動産価格は、オリンピック開催の前年くらいからピークアウトする傾向があります。
つまり、オリンピック開催を待たずして、外国人投資家の利益確定のための売却が進む可能性があるのです。
すでに都心部では、東京オリンピック開催決定直後のときほど、東京都心部の物件を高額で購入する外国人不動産投資家が減っているようです。
東京オリンピック開催の前年である今年から、東京都心部を中心に不動産の売り傾向が強まり、その結果不動産価格が下落する可能性が考えられます。
3.不動産譲渡所得の税率が変わり目を迎える
3つめの要因は、一言で言うと「税金」の問題です。
不動産を売買して生じた利益、つまり譲渡所得については、いわゆる「譲渡所得税」が課税されます。
譲渡所得税については、不動産を保有していた期間に応じて「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2種類があり、それぞれ次のように税率が異なります。
譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年以下の場合:
短期譲渡所得
所得税:30%
復興特別所得税:2.1%
住民税:9%
譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年を超える場合:
長期譲渡所得
所得税:15%
復興特別所得税:2.1%
住民税:5%
このように、不動産の所有期間が1月1日の時点で5年を超えているかどうかによって、所得税と住民税の税率はおよそ2倍も違うのです。
では、なぜ譲渡所得の問題が2019年問題と関係するのでしょうか。
東京オリンピック開催が決定したのが、2013年9月に開かれたIOC総会の時です。
そこから、外国人投資家が東京の不動産に対して、本格的に投資を始めました。
不動産経済研究所が毎月発表している「首都圏のマンション市場動向」を見ると、この頃の新築マンションの供給はかなり活発に行われていたことがわかる。
13年9月は前年同月比77%増の約6千戸だったし、11月は約5千戸、12月も約8200戸だった。
また、投資物件になりやすい20階以上の超高層物件が約4900戸、この時期に分譲されている。
2013年9月に購入した不動産が長期譲渡所得扱いになるのは、1月1日時点で5年を超える「2019年」からなのです。
ちなみに、譲渡所得税については、日本国外に居住している外国人投資家についても課税されます(※譲渡対価の10%が源泉徴収、その後確定申告が必要)。
現時点ですでに東京の不動産価格はピークと言える状態のため、長期保有を前提としている日本人投資家は別として、オリンピック特需で儲けて売り抜けようと考えているような外国人投資家の中には、この譲渡所得の関係で、売りたくても今年まで我慢している可能性があるのです。
2013年9月に購入した場合は、今年を超えれば譲渡所得税が半分になるため、そこから一気に売却が進んで不動産価格変動が生じる可能性が考えられます。
今年以降の不動産投資は難しい!?
このように、今年以降は不動産価格が下落する可能性がある要因が3つも重なるため、それによって不動産市場が大きな転換期を迎えると予想されます。
ただ、一方で強気な見解を示すエコノミストもいます。
特に東京圏に関しては、東京都政策企画局が作成した「2060年までの東京の人口推計」というデータによれば、不動産投資のターゲットとなる東京の単身者世帯は、今後も2035年をめどにさらに増加するとのことです。
その後緩やかに減少するようですが、それでも2055年の時点でも2015年とほぼ同じ単身者世帯が存在すると予想されています。
日本全体としては世帯数が減少傾向であるものの、東京圏に関して言えばその影響はほとんどなく、むしろプラスととらえてもよい状況。
もちろんこれはあくまでも予測なので、その通りになるとは限りませんが、一つの参考にはなるでしょう。
二〇一九年以降の不動産投資 よくある質問
Q. これから不動産投資を通じて、老後の生活資金の備えをしようと思っているのですが、東京五輪の前年である二〇一九年以降の不動産投資は危ないよ、と周りから言われて反対されています。
二〇一九年以降は不動産以外のものに投資したほうがよいでしょうか。
A. たしかに二〇一九年以降は不動産業界、とりわけ不動産賃貸事業にとっては厳しい環境になるかもしれません。
前述のとおり、世帯数の減少が二〇一九年以降に始まり、中長期的に見たときの市場規模が縮小していくからです。
東京五輪後の反動、譲渡所得税率が関係した売り圧力などは一過性のものなので、短期的な視点では影響があるかもしれませんが、もっと重要なのは中長期的に賃貸用不動産を運用できるかどうかです。
その意味で、人口動態の予測を検証しながら、中長期的にも勝負しやすいエリアを選んで投資していくことが出来れば、まだまだ不動産投資は可能ではないでしょうか。
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