ワンルームマンション投資を本気で検証してみた(1)本当に儲かるのか?

今回のテーマはワンルームマンション投資です。最近になって、ワンルームマンションを販売している不動産業者さんと情報交換する機会があったのですが、その際に直近のワンルームマンション投資の状況を教えてもらいました。

筆者は「1棟もの」のアパート・マンション投資に比べて、ワンルームマンション投資の知見は少なめなのですが、今回業者さんから話を聞いて、一度しっかりと収支検証して、アパートなどの1棟門もの投資と比較してみようと思い立ちました。

そうしたところ、ワンルームマンション投資には、アパート投資には無い特長が見えてきました。今回は、ワンルームマンション投資について、基本の情報をまとめたうえで、1棟もののアパート投資との比較、そしてワンルームマンション投資ならではのメリットなどをお伝えしたいと思います。

ワンルームマンション投資 はじめに

実は筆者は、ワンルームマンション投資についてはややネガティブでした。筆者のクライアントの多くがレバレッジや規模、投資効率を重視しており、いわゆる「1棟もの」を求める人が多かったことに加え、「1棟もの」の方が「区分」のワンルームマンション投資よりもの収益性が高い局面が多かったからです。

そんな筆者でしたが、先日、冒頭の業者さんから色々と興味深いお話を伺えたので、一度しっかりと収支検証して、アパートなどの1棟門もの投資と比較してみようと思い立ちました。そうしたところ、ワンルームマンション投資には、アパート投資には無い特長が見えてきました。

そこで今回から数回にわたって、不動産投資の基本の情報をまとめたうえで、ワンルームマンション投資と1棟アパート投資との比較を通じて、以下の3点を中心に、ワンルームマンション投資ならではのメリットなどをお伝えしたいと思います。

(1)本当に儲かるのか?
(2)他にもっといい投資はないのか?
(3)自分で実践するにはどうしたらいい?

そもそも不動産投資は本当に儲かるのか? 合格ラインの基準は?

まずはアパート・マンション投資の成功例の話です。筆者は主に首都圏の投資家様からご相談いただくことが多いのですが、うまくいっている投資家さんの投資利回りは、大体以下のような感じに落ち着きます。

首都圏に偏ったごく一部の参考例になりますが、その点はご容赦ください。なお、新築・築浅が多いのは、実は中古が思ったよりも価格が下がらず、新築~築浅の方が投資のメリットが大きかったことが背景にあります。

(1)8%以上 新築木造アパート(一都三県)

新築木造に積極的な銀行はオリックス銀行ですが、金利は2%前後で融資期間は30~35年程度。金額は1億円くらいまでが上限なので、都心は無理ですが、一都三県であれば1棟アパートを購入できます。

また、融資条件次第ですが、地銀で金利1%台で借入できたとすると、もっと結構良いキャッシュフローになります。筆者のクライアントはほぼこのパターンが多く、8.5%の新築物件を1%前後の金利で借りている状況です。(入居者から人気の高いエリアや駅が近くにあれば8.0%くらいまで下げても大丈夫)

(2)7%以上 新築木造アパート(東京23区内の強い駅)

都心のアパート物件になると、土地値が高いので、どうしても1億半ばから2億超の価格帯になってきます。そうすると融資でオリックス銀行は難しくなってきます。

年収が2000万円超で、金融資産が1億円くらいある方であれば、りそな銀行などの都銀に相談してみることも可能だと思います。金利も1%を下回る水準で35年融資が可能になれば、かなり大きなキャッシュフローを得ることができます。また、融資完済後は無担保の土地が残りますので、建て替えをしても十分高い利回りで運用が可能になります。

(3)6.5%以上 築浅RCマンション(一都三県)

融資期間35年が前提となりますが、築7年以内であれば、このくらいの利回りでも利益を上げることができると思います。

出口戦略としては、10年くらい持って、次の買い手の融資期間が最低でも30年以上あるうちに売却すること。そのくらいの期間で売却してしまわないと、次の買い手の融資がどんどん不利になっていくため、徐々に買い手からの指値が厳しくなっていきます。

(4)6.0%以上 新築RCマンション(一都三県)

新築RCマンションの場合、出口で「相続対策」狙いの投資家を相手にできるのが強みです。不動産投資は相続税対策として用いられることが多いのですが、相続対策が必要な方々が最も好むのが「築浅RC」です。

この層の買い手は、通常の投資家目線よりも高い金額で物件を買ってくれるので、キャピタルゲインが出やすいのが特徴です。筆写のクライアントでも、土地から仕入れて、土地・建物総額で4億円くらいで物件を仕上げて、2年程度で5億~6億くらいで販売し、2年で1億近い金額を儲けた方も複数いらっしゃいます。

(参考)世の中の投資物件の利回り

ちなみに、いま市場に出ている投資物件の利回りがどのくらいなのか、不動産投資ポータルサイト「健美家」の統計情報をご紹介します。

出典:収益物件市場動向マンスリーレポート<2022/09>

2022年8月
■ 区分マンション
利回り7.35%( 前期比-0.01ポイント )、価格1,511万円( 前期比+2.03% )
■ 一棟アパート
利回り8.20%( 前期比-0.03ポイント )、価格7,742万円( 前期比+4.58% )
■ 一棟マンション
利回り7.80%( 前期比+0.03ポイント )、価格1億7,148万円( 前期比+3.15% )

こちらの数字はあくまでも全国平均値であり、エリア・構造・築年数によって指標は大きく変わってきます。

事例紹介 実際のリターンはどのくらい?

(1)1棟アパート投資(23区)の場合

これはあくまでも過去の参考ですが、2016年に新築アパートを仕入れた方の事例です。

 所在地  23区(品川区)
 物件価格 約2億円
 構造   木造二階建アパート
 利回り  約7.5%
 借入   ほぼフルローン(2億)

フルローンで借りられたのはタイミングや物件の評価が良かったからですが、かなり好条件でした。ちなみに、経費を差し引いて、さらに借入金も返済した後に残る手残り(税引前キャッシュフロー)は年間平均500万円に上ります。

この物件を、約5年間保有して、2.2億円(利回り7%弱)で売却しました。その時の残債務は約1.7億まで減っていました。この場合、オーナーはどのくらいのリターンを得たことになるでしょうか。

税金計算など、ものすごく簡略化しますが、ざっくりとしたリターンは

(5年間運用した場合のリターン)
 A インカムゲイン 年間500万円×5年=約2500万円
 B キャピタルゲイン 売却額2.2億円-残債務1.7億円=約5000万円
 C 頭金+購入時諸経費  約1500万円

あくまでも税引前ではありますが、「A+B-C=約6000万円」のリターンを得ることになります。税金で20%強引かれるとしても、5年間で約5000万円ものリターンを上げたことになります。

ただし、この規模(2億円)の投資をするためには、年収が高いこと(年収1500万程度)と、自己資金を5000万くらい持っていることが必要です。これは融資が関係するからです。ある程度の年収と資産背景がないと、このクラスの物件は買えないのでその点は注意が必要です。

(2)1棟アパート投資(首都圏)の場合

また、もう少し小粒の物件の事例も結構あって、購入時1.3億、利回り8.5%のアパートを5年くらい保有してから7%強で売却し、3000万円くらいの利益を確定させた事例が数多くあります。ちなみに次の買い手の融資はオリックス銀行を使う方、もしくはキャッシュで買う方が多かったようです。

 所在地  さいたま県
 物件価格 約1.1億円
 構造   木造三階建アパート
 利回り  約8.5%
 借入   ほぼフルローン(1.1億)

これもほぼフルローンで借りられたのは属性がよかったのと、タイミングや物件の評価が良かったからです。ちなみに、経費を差し引いて、さらに借入金も返済した後に残る手残り(税引前キャッシュフロー)は年間平均260万円ほど。

この物件を、約4年間保有して、1.2億円(利回り7.5%)で売却しました。その時の残債務は約1億弱まで減っていました。この場合、オーナーはどのくらいのリターンを得たことになるでしょうか。

税金計算など、ものすごく簡略化しますが、ざっくりとしたリターンは

(4年間運用した場合のリターン)
 A インカムゲイン 年間260万円×4年=約1040万円
 B キャピタルゲイン 売却額1.2億円-残債務1億円=約2000万円
 C 頭金+購入時諸経費  約1000万円

あくまでも税引前ではありますが、「A+B-C=約2040万円」のリターンを得ることになります。税金で20%強引かれるとしても、4年間で約1600万円のリターンを上げた結果になります。

大体、不動産投資で儲かるイメージは持てましたでしょうか。大事なのは、出来るだけ利回りの高い物件を仕入れて一定期間保有し、高値で売却することです。

(3)ワンルームマンション投資(23区)の場合

次にワンルームマンション投資の事例を紹介します。あくまでも参考になりますが、これも筆者のクライアントの事例です。

ワンルームマンション投資は、短期売買で物件を回転させていく場合と、10年~20年と時間をかけていく長期投資など、いくつかパターンが分かれますが、今回は長期投資。

約10年前に23区内で築20年くらいのワンルームマンションを利回り8%くらいで買ったのですが、10年間ほぼ満室稼働。10年間で入居者の入れ替わりはわずかに1回だったそうです。

 所在地  23区(新宿区)
 物件価格 約1000万円
 構造   鉄筋コンクリート造マンション
 利回り  約8%
 借入   700万円
 家賃   月7万円

仮に今現在売却したと仮定すると、最終的なリターンはどのくらいになるでしょうか。

まずは家賃収入(インカムゲイン)。家賃収入は月に7万円。借入金返済後の一室あたりキャッシュフローは月に2万円程度。年間では24万円となります。10年間の累積で約240万円。

次に売買差益(キャピタルゲイン)。直近2ヶ年の成約事例を参考にすると、同じ建物内の成約事例で1200万円くらいのケースがありましたので、それが市場価値になりそうです。また、15年返済でローンを組んでいたので、返済が早く進んでおり、残債務は200万ほどでした。

(10年間運用した場合のリターン)
 A インカムゲイン 年間24万円×10年=約240万円
 B キャピタルゲイン 売却額1200万円-残債務200万円=約1000万円
 C 頭金+購入時諸経費  300万+約100万円=400万円

あくまでも税引前ではありますが、「A+B-C=約840万円」のリターンを得ることになります。仮に税金で20%強引かれるとしても、税引後で約650万円のリターンとなります。10年間でこのリターンですから、年平均で約65万円のリターンを上げた計算になります。

自己資金(上記C)を400万使って、年間65万円のリターンを得たことになりますので、自己資金あたりの投資効率は、利回り16%程度となります。おそらく巷にある他の投資比べると、かなり良好な投資と言えます。

ただし、これは10年前に仕入れたワンルームマンションなので、今と比べるとかなり利回りが高い水準です。現在ですと新宿でワンルームマンション投資をしようとすれば、築年数などにもよりますが、利回り5~6%程度になってしまうかもしれません。そうするとリターンの計算がもっと悪くなるのはご理解いただけると思います。

ちなみにこのオーナー様は物件を売却するつもりはなく、残債務が少なくなった段階で繰上返済し、今は無借金の物件として保有。各室毎月7万の家賃収入を上げてくれる不労所得になりました。無理に売るつもりはないようです。

自己資金当たりの投資効率を考える

さて、ここまで二つのアパート投資事例と、一つのワンルーム投資事例のリターンを紹介しましたが、おや?と思ったことはないでしょうか。

単純にリターンの金額を比較すると
 投資事例1 約5000万円(5年保有)
 投資事例2 約1600万円(4年保有) 
 投資事例3 約650万円(10年保有)

筆者が注目してほしいのは、自己資金当たりの投資効率です。それぞれ保有期間が違うので、1年あたり平均リターンを並べてみます。

 【投資事例1】
  一年あたりの平均リターン 約1000万円(5年保有で5000万円)
  投下した自己資金 1500万円 
  自己資金当たりの投資効率 66%

 【投資事例2】
  一年あたりの平均リターン 約400万円 (4年保有で1600万円)
  投下した自己資金 1000万円 
  自己資金当たりの投資効率 40%

 【投資事例3】
  一年あたりの平均リターン 約65万円 (10年保有で650万円)
  投下した自己資金400万円
  自己資金当たりの投資効率 16%

結果だけ見れば、
 【投資事例1】 > 【投資事例2】 > 【投資事例3】
ということになりますが、この違いがどこから生じているか。そこが問題です。

結論から言うと、「レバレッジ比率」の違いです。

投資物件を買うのに融資を最大限使ってレバレッジを最大限活用することによって、自己資金当たりの投資効率を大きくすることが出来ます。

融資と自己資金比率 投資用不動産への融資は逆境

長期投資を前提としたワンルームマンションのリターンは?

実は今回お伝えしたかった内容の一つが、長期投資を前提とした「ワンルームマンション投資」のリターンです。

ワンルームマンションの耐用年数は117年?

ワンルームマンションの長期投資は、法定耐用年数(47年)を超えるような築古マンションの資産価値をどう見るか、によって投資のリターンが大きく変わります。

これまで筆者はワンルームマンションの寿命は47年(長くても60年程度)と見ていましたが、国土交通省では、管理状態がまともなワンルームマンションの寿命は117年と言及しています。

国土交通省「RC造(コンクリート)の寿命に係る既住の研究例」

実際に、RCマンションが法定耐用年数は47年ではなく、100年以上も稼働し続けるならば、資産価値の評価が大きく変わるので、投資リターンの予測も大きく変わってきます。

※ 細かい点は具体的には別の回で解説する予定です。

100年の寿命を持つワンルームマンション投資のリターンは?

不動産投資の失敗事例を考える

次に、不動産投資の失敗についてお伝えします。筆者は職業柄、失敗した投資家さんからの相談を受けることもあります。

ちなみに不動産投資で取り返しが付かない失敗の多くは物件選び・物件購入の段階で発生します。ここでは、筆者が実際に相談を受けた事例を少しだけ紹介します。

1. 儲からない物件を大量買い ワンルームマンション投資

一例目は、儲からないワンルームマンション投資を繰り返してしまったケース。この方は国内大手企業にお勤めの方。聞けば誰もが知っている会社で、重役手前のポジション。海外にもよく出張されるエリート会社員でした。

異変が起きたのは、会社に係ってきた電話営業。ワンルームマンション投資の営業だったのですが、福岡、東京を中心にワンルームマンション投資を勧められたそうです。この方、属性がいいため、融資は簡単に通ります。そのため、気が付けば10室以上のワンルームマンション投資を始めることになりました。

問題は、買ってしまった物件。いずれも新築ワンルームマンションだったのですが、いずれも利回りは低水準。相談を受けた時点では、家賃収入に対して、融資返済額が大きく、キャッシュフローはプラスマイナス・ゼロの状態。さらに悪いことに、いくつかの物件で退去が出てしまい、次の入居者が決まらない事態が続き、毎月30万超のキャッシュアウトが常態化してしまいました。

そんな物件ならば売却するのが吉ですが、残念ながら物件の評価が低く、売却代金で残債務を返済することも出来ない状態。大きな損切を覚悟しなければならない状況でしたが、キャッシュアウトが長く続いたため、貯蓄も乏しい状況。「このままいけば自己破産か・・・」という状況でご相談にいらっしゃいました。

ここでのポイントは、「キャッシュアウトする物件を選んだこと」と「安値でしか売れない物件を選んだこと」。いずれも物件の選び方としては大失敗です。

ちなみに、この方の場合は、超高利回り物件を取得してキャッシュアウトを軽減させ、残債務の返済を継続。ある程度、売却予想額と残債務が釣り合ってきた時点で売却。最終的には10年弱をかけて不採算物件を売却し、定年退職とほぼ同時期に、無事に不動産投資の出口を迎えました。力業ですが、何とか収まってほっとしたご相談でした。

2. 難あり物件の検討 1棟中古マンション投資

二例目は、難あり中古RCマンションの購入。これは正確に言えば、購入直前でストップをかけられたので、ギリギリ失敗にはなりませんが、結構危ういところでした。

「難あり」のポイントは、

 ・都内の物件ではありますが築30年弱で利回り6.5%という低収益物件であり、

 ・かつそれほど便利と言えない立地で地下1階部分が事務所という仕様。

 ・おまけに最上階がオーナー居住仕様(ワンフロアすべてオーナー居住、106平米)

ちなみに全14室で、3室空きの状態で、満室想定だと表面利回り7.5%ですが、それでも低水準です。これで地下の事務所と最上階の広い部屋が空室になると、一気にキャッシュフローが悪化します。

これでよく買う気になったなと思うのですが、驚くべきことに、業者が出してきた収支シミュレーションでは、月々30万円弱のキャッシュフローが入ってくる試算になっていました。

このカラクリは、融資条件の設定と支出の甘い見積もり。融資条件は、金利1%弱、25年融資を見込んでおり、普通に考えてかなりハードルの高い試算。さらに、満室時想定の試算なので、現状3室空きのままであればプラスマイナスゼロです。経費の見立ても概算でしか出しておらず、さらに大規模修繕も未済。

ここでのポイントは以下の通り。

 「築30年弱の中古で利回り6%台は論外(7%台も論外)」

 「思わしくない立地での店舗・事務所は要注意」

 「バラ色の融資条件につられてはいけない」

 「無駄に広い部屋は客付けしにくく、空室リスクが高い」

 「大規模修繕未済の建物は要注意」

このご相談者様の場合は、買付を入れていたものの、契約前にアドバイスできたためキャンセルできたそうです。裏話として、業者の心理的圧迫もあくどい手法でひどかったのですが、この点は別の機会に解説します。相当揉めたそうです。

不動産投資は本当に儲かるのか? まとめ

以上、今回は不動産投資は本当に儲かるのか、という視点から実例を交えながら解説しました。少しデフォルメしていますが、リアルな数字をご紹介したのですが、参考になりましたでしょうか。

次回は、不動産投資、特にワンルームマンション投資を他の投資と比較しながら、その特徴、メリットデメリットを解説していきたいと思います。

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2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。