フルローンを出すにはどうしたらいいですか?|不動産投資100問100答(15)

筆者の不動産投資のコンサルタントとしての体験から、よくある質問に簡潔に答えていく「不動産投資100問100答」シリーズ。今回は第15回として、不動産投資の融資について取り上げます。

今回の質問は「フルローンを出すにはどうしたらいいですか?」というものです。

フルローンとは、頭金を入れずに物件価格の全額を金融機関からローンで借り入れてまかなうことをいいます。フルローンで不動産投資を実践できると投資の効率性が高いので、多くの方がフルローンを望みます。しかし、借入額が多くなるのでリスクが多くなるほか、金融機関の審査目線も厳しくなります。特に不動産投資への融資引き締めが強くなってきた昨今、フルローンを受けられるケースは非常に限られてきました。

どうやったらフルローンを引き出すことができるのか、ハードルは高いですが、筆者のクライアントの事例を交えながら検証したいと思います。

不動産投資とフルローンの実例(ひと昔前の話ですが)

不動産投資でフルローンを希望する人はとても多いのですが、ハードルはかなり高いです。確かに昔はフルローンもありましたが、最近ではフルローンやオーバーローンの話はすっかり聞かなくなりました。

個別の銀行名は伏せますが、実はひと昔前はフルローンで物件に融資してくれる銀行さんが確かにありました。

さかのぼれば、某都銀で「収益還元評価」がもてはやされた頃、条件に合う物件を用意すればフルローンを受けられました。フルローン狙いで投資家たちが競って物件を探していました。

その後、リーマンショックの影響で物件価格が大分下がっていた頃、積算評価と収益性を両立するような物件が稀にありましたが、そういう物件がフルローンの対象となりました。某地銀は積算評価が高く、かつ利回りが10%を超える水準の中古鉄筋コンクリート造マンションにフルローンを出していました。(※今ではそんな物件はお目にかかれないですが)

某地銀は、ある程度利回りの高い木造新築アパートにフルローンを出してしました。この時は、担保評価が割れやすいので資産バランスを保てること(かなりの金融資産を所有すること)が求められました。

某都銀は金融資産をある程度(物件購入後に最低5000万円)持っている投資家を対象に、金利を「10年固定」にすることでフルローンを提供していました。

このほかにも、特定の不動産業者(開発業者)と提携した地銀・信金が、通常より有利な条件の融資を取り扱うことはよくありました。

そのような時期を経て、実際に筆者のクライアントの多くがフルローンで融資を受けています。

しかし、今はそんな話はほとんど聞きません。物件自体の利回りが大分下がったこともありますが、大きいのは銀行の融資姿勢です。不動産投資への風当たりが強くなりました。不動産投資を巡る不祥事(不正融資問題等)の影響もかなり大きいと思います。

そのため、筆者の周りでもフルローンで不動産投資を行う人はごく少数となりました。

ChatGPTのアドバイス 銀行からフルローンを引き出すにはどうしたらいいですか?

さて、そのような環境を踏まえて、どうやったらフルローンを引き出せるのか。まずは先入観なしに「ふわっとした質問」でChatGPT先生に聞いてみましょう。

「銀行からフルローンを引き出すにはどうしたらいいですか?」と聞いてみたところ、先生から以下のような回答がありました。

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銀行からフルローン(自己資金ゼロでの融資)を引き出すのは難易度が高いですが、適切な準備と戦略を講じることで可能性を高めることができます。以下にフルローンを引き出すための具体的なステップとポイントを紹介します。

1. 強固な信用力の確立

信用スコアの向上
過去の借入やクレジットカードの利用履歴を見直し、延滞や未払いがないようにします。
既存の借入を適切に管理し、クレジットスコアを高めます。
安定した収入の証明
安定した職業や長期間の勤務経験を持っていることが重要です。
年収が高いほど信用力が高まり、フルローンの可能性が上がります。

2. 魅力的な物件選定

収益性の高い物件を選ぶ
高い利回りが見込める物件を選定します。賃貸需要が高く、空室リスクの低い地域の物件が有利です。
キャッシュフローがプラスになる計画を立てます。
担保価値の高い物件を選ぶ
銀行が評価する担保価値の高い物件を選ぶことで、融資額が増える可能性が高まります。

3. 詳細なビジネスプランの作成

投資計画の詳細化
物件の購入価格、リフォーム費用、運営費用、予想収益、キャッシュフローなどを詳細に記載したビジネスプランを作成します。
リスク管理や収益性の向上策も盛り込むことで、銀行に対して信頼性をアピールします。
シミュレーションの実施
金利上昇や賃貸需要の変動に対するシミュレーションを行い、リスクに対する備えを示します。

4. 銀行との関係構築

複数の銀行にアプローチ
複数の銀行に融資の相談を行い、最も有利な条件を引き出します。
自分の投資計画や物件情報を詳細に説明し、銀行の担当者との信頼関係を築きます。
事前相談と準備
事前に銀行の融資担当者と相談し、必要な書類や情報を揃えておきます。
可能であれば、既存の融資を利用している銀行との関係を強化し、追加融資の可能性を高めます。

5. 保証人や連帯保証の活用

信頼できる保証人の確保
信頼性の高い保証人や連帯保証人を確保することで、銀行のリスクを軽減し、フルローンの可能性を高めます。
企業保証の利用
企業や法人としての保証を活用する場合、法人の信用力を銀行にアピールします。

6. 自己資金の補完手段の提示

他の資産の活用
他の資産を担保に提供することで、フルローンの引き出しを補完する方法もあります。
不動産以外の資産(株式、預貯金など)を活用し、銀行に対してリスクの低さを示します。
ローンの分割利用
複数の金融機関から分割してローンを利用することで、実質的なフルローンを実現する方法もあります。

7. 専門家の活用

不動産投資のアドバイザーやコンサルタント
不動産投資の専門家やコンサルタントを活用し、最適な融資戦略を立てることが重要です。
融資交渉の経験が豊富な専門家に相談することで、効果的なアプローチが可能になります。

まとめ

フルローンを引き出すには、信用力の確立、収益性の高い物件選定、詳細なビジネスプランの作成、銀行との関係構築、保証人の確保、他の資産の活用、そして専門家の助言が重要です。これらのステップを丁寧に行い、銀行に対して信頼性と収益性をアピールすることで、フルローンの可能性を高めることができます。

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いつものようにきれいにまとめてくれますが、実際のところ具体的に何をすればよいのか、ピンと来ない方も多いと思います。

一部の例外を除き、そもそもフルローンを引き出すのはかなり難易度が高い行為です。以下では、筆者の体験した事例をもとに、もう少し具体的な話をしていきます。

不動産投資とフルローン 結論は資産バランス「共同担保」と「金融資産」

筆者の直近2年くらいの事例の話をします。

まず前提として、ほとんどのケースでフルローンは難しいと思います。前述の通り、ひと昔前は、フルローンで不動産投資を始めるのが流行りでしたが、諸々の問題(不正融資等)が起こったほか、物件が高騰し銀行の目線も厳しくなったことから、積極的にフルローンを扱う銀行はほぼなくなりました。

そんな中、どうやったらフルローンを引き出せるかと聞かれれば、筆者は「共同担保」と「金融資産」が有効ですと回答します。

共同担保

「共同担保」とは、1つの債権(融資)の担保として複数の物(不動産)に担保権(抵当権)を設定することです。特に不動産投資では、購入物件の担保評価が足りないときに、他の不動産でそれを補う目的で共同担保が使われます。

2年前のクライアント事例になりますが、1棟モノの新築アパートを買う際に、無借金の区分マンションを共同担保に入れたことがあったのですが、ほぼフルローンになりました。

金融資産

「金融資産」は現金や預貯金、株式、投資信託などが該当しますが、この金融資産をどれだけ持っているかが、審査上重要な意味を持ちます。これは資産バランスの維持という意味合いが大きいです。

というのも、多くの場合で物件を買うと借り手の資産バランスは悪化します。それを補うのに、他の資産をどれくらい持っているかが審査上重要となります。

極論すると、物件をキャッシュで買えるような属性の人には銀行はフルローンでも貸してくれます。筆者の周りの実例で言うと、最近フルローンを受けられたのは「地主さん」と「会社経営者」です。

この方々は資産背景が普通の人とは違います。普通に金融資産が数億円あります。他に不動産も持っています。既存借入は少しありますが、手持ちのキャッシュでいつでも返せる状態です。ちなみに年収もかなり高い水準です。

直近の実例を挙げると、筆者のクライアントで経営者(金融業)の方がいるのですが、その方が1棟モノのRCマンションを買うことになりました。本人は「金利を払うのはもったいない」という考えなので物件価格の7割くらいしか借りるつもりがなかったのですが、圧倒的な金融資産があるので、銀行が頭を下げてフルローンをお願いしてきました。

実際には8割融資で落ち着きましたが、本人が望めばいつでも追加融資してくれる感じです。やはり金融資産・資産背景は強いなと改めて感じた次第です。

提携ローン付の物件ならフルローンもあり得る

前述の「共同担保」や「金融資産」でカバーできるのは、一部の方に限られると思います。率直なところ、一般の方がフルローンで不動産投資をするのはほぼ無理です。ただ、例外があります。不動産業者と銀行が提携ローンを用意している場合です。

不動産投資セミナーで「自己資金ゼロでもできる」などの謳い文句で集客しているものがありますが、おそらくこのパターンです。いわゆるパッケージ型なので、条件に合う顧客がいれば、自動的にフルローンが出るような仕組みです。多くはワンルームマンション投資で売主物件を購入する際によく用いられます。

金融資産も共同担保もない状況でも何とか不動産投資を始めたいという方は、提携ローンを用意している不動産業者を通じて物件購入を検討することになると思います。ただ、総じて収益性は高くないと思いますので、どの時点で利益確定させるのか、出口の見通しなどもきちんと検証していただきたいところです。

余談ですが、一棟アパートでも、このようなパッケージ、あるいはパッケージに近い状況になっていた業者・銀行の組合わせがありました。しかし、残念ながら不正融資問題も絡んだことがあり、今ではほとんど見かけなくなりました。物件さえ悪くなければ、投資の仕組みとしては便利だと筆者は思っているので、どこかのタイミングでまたこのようなパッケージ商品が出てこないかと期待しているところです。

総括:フルローンを出すにはどうしたらいいですか?

・昔はフルローンが出た時期もあったが、今は厳しい。フルローンを引き出せるのは、金融資産が潤沢な人、共同担保を差し出せる人に限られる。

・どうしてもフルローンにこだわる場合は、提携ローン付の物件を探すこと。特にワンルームマンションでよくみられる。

・区分マンション投資であれば、提携ローンでもよいが、一棟マンションや一棟アパート投資を志向する場合は9割融資を前提とする方が無難。ある程度使える自己資金を蓄えてから不動産投資を検討すること。

【参考記事】
不動産投資で融資が出やすい銀行はどこですか?|不動産投資100問100答(13)

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2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。