台風被害が不安です。不動産を持っても大丈夫でしょうか|不動産投資100問100答(16)

筆者の不動産投資のコンサルタントとしての体験から、よくある質問に簡潔に答えていく「不動産投資100問100答」シリーズ。今回は第16回として、不動産投資のと災害リスクについて取り上げます。

今回の質問は「台風被害が不安です。不動産を持っても大丈夫でしょうか。」というものです。

昨今、気候変動の影響もあって大型の台風や大雨による被害が多発しています。そういった中で、不動産を所有することに不安を感じる方も多いようです。

統計によると、台風は年間で約25個発生し、約3個が日本に上陸しているそうです。日本で物件を持つ以上、台風による災害リスクは避けることができません。

そこで今回は、特に台風被害について注目して、リスクヘッジの方法、考え方について解説してみたいと思います。

台風被害のリスクヘッジ 

台風による災害リスクについては損害保険である程度はカバーできます。損害保険では「水災」と「風災」の補償を付けることによってリスクヘッジが可能です。以下、そのあたりの情報をまとめていきます。

(1)水災の補償 大雨の浸水被害だけではない補償範囲

水災は、損害保険の契約時に「水災不担保」という特約を付けることが出来ることがあり、不担保にした場合、大幅に保険料を安くすることが出来ます。コストに厳しい方の中には、ハザードマップで水災のリスクを確認したうえで水災補償を外す方もいらっしゃいます。

しかし、余程の理由がない限り、水災補償は付けておいた方が良いと筆者は思います。元々、筆者は保険料を切り詰めるよりもリスクヘッジを重視する考え方なので、よほど水災のリスクがないエリア以外は必ず水災の補償も付けます。それは、以下のような理由です。

①被害額が大きい。
一度水災が発生すると、被害額がとんでもない金額になるからです。また、水災補償はいわゆる浸水被害だけではありません。

②土砂災害は水災補償の適用範囲

仮に高台にある物件であったとしても、大雨で土砂災害に巻き込まれることもあります。大雨による土砂災害は「水災」と判断されるので、もし水災不担保だと、保険金が下りなくなってしまいます。

(参考)ソニー損保
「火災保険で「土砂崩れ」による損害は補償される?補償例や必要性を解説」

③都市型水害のリスク
また、河川が近くになかったとしても「都市型水害」に巻き込まれることがあります。都市型水害とは、地表がアスファルトやコンクリートで覆われた人口密集地特有の水害。

集中豪雨の際、雨水が地表から地下に浸透しないため、埋設されている下水管、雨水管などに一気に水が集まり、その処理能力を超えることにより地表部に水が噴き出したり、排水用の河川が氾濫することにより発生します。

(参考)日本損害保険協会 水災害リスクに対する損害保険について

意外と都市型水害の被害額も大きくなるので、出来ればリスクヘッジしておきたいところです。

このように、水災補償がカバーする範囲は広いので、保険料は高いのですが水災補償は担保しておくことが望ましいと筆者は考えています。

(2)風災の補償 免責金額の設定と保険料のバランスを考える

風災による被害も損害保険でリスクヘッジが可能です。注意点としては、風災の補償に関する免責金額です。風災は「エクセス方式」がデフォルト設定されていることが多いようです。

「エクセス」とは、損害保険において、損害額が免責金額を超えた場合に超過した損害額のみ補償する方式のことで、損害額が免責金額を下回る場合は保険金の支払いがありません。

筆者が昔調べたときには、エクセス10万円くらいで設定されているものが多かったように記憶しています。

10万円というのは微妙なところで、細かい損害の修理・補修は零れ落ちます。もちろん、本来的な保険の役割は再起不能な損害を被った時に、損害を肩代わりしてもらって経営の立て直しを図ることだと思っています。

そのため、保険会社の立場からすると、細かい損害については自分で何とかして下さい、というのは納得できるところです。ですが、窓ガラスの破損など、結構風災で10万円未満の損害というのもあるもので、免責金額の設定を変更することによって契約者側のメリットが結構あると思っています。

保険料が過度に高くならないようであれば、免責を無くすか、エクセス方式ではない免責方法を選ぶ方が安心だと思います。

(参考)実際に台風で被害を受けた不動産投資の話

最近目にしたものだと、健美家でコラムを寄稿している「ものぐさ大家」さんの事例があります。

健美家「ものぐさ大家」さんのコラム

遠隔地で所有する物件が台風被害に遭って、大変な思いをされた記録です。とても貴重な体験談なので是非ご覧ください。

損害保険の重要さが身に染みてよくわかると思います。

台風被害の不安 自分自身のリスク許容度を理解すること

台風による災害リスクについては、完璧な予防・リスクヘッジは無理です。そのため、もし台風や地震など、天災によるリスクを大きく恐れている人は、あまり不動産投資に手を出さないほうが良いと筆者は思います。

物件の近くに台風が来たり、少し大きな地震が来る度に大きなストレスを感じることになります。もちろん、オーナーである以上は、その程度のストレスは皆さん抱えていますが、軽いパニックになる人も中にはいらっしゃいます。

たとえば東日本大震災の時には、さすがに筆者も肝を冷やしました。物件まで歩いて見に行ける距離だったので被害がないか確認できましたが、遠隔地に物件を持っていた方々は物件を見に行くことすらできず、生きた心地がしなかったのではないでしょうか。

あれ以来、ぱったりと不動産投資をやめた投資家さんもいらっしゃいます。決して悪い判断ではないと思います。ご自身のリスク許容度が分かったからです。特に、自身の精神的なリスク許容度を超えた投資は日々の生活に良くない影響が出てきます。あまり無理はしない方がよいと筆者は思います。

総括:台風被害が不安です。不動産を持っても大丈夫でしょうか。

・台風被害を完璧に予防・ヘッジすることはできないが、少しでもリスクを軽減させる対策は必要。多くの場合、損害保険でリスクヘッジできる。

・それでも台風被害が不安であれば、無理に不動産投資をしない方がよい。特にメンタル面でのリスク許容度は大切にした方がよい。日々の生活に影響が出てしまう。

・水災補償は出来る限り付けた方がよい。一見、水災リスクの少ないエリアに見えても、土砂災害や都市型水害など、思わぬところで水災に遭遇する可能性がある。

・風災補償は免責金額の設定に注目。保険料とのバランスで、できるだけ補償を広げた方がよい。意外と風災による事故は多く、軽微な損害も多い。

・損害保険のかけ忘れはNG。入居者への補償が必要となる場面もあるので、施設賠償の補償なども忘れずに。

【参考記事】
不動産投資・アパート経営と火災保険 物件購入時に入るべき特約とは?

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2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。