不動産投資・アパート経営と火災保険 物件購入時に入るべき特約とは?

先日、初めてアパートを買う方から、火災保険について相談がありました。保険料はどのくらいなのか、地震保険には入るべきか、どこの保険会社で、どんな内容にすればよいか、教えてほしいとのことでした。

以前の記事で、アパート経営のリスクの一つとして自然災害を挙げたことがありますが、そのリスクヘッジの手段が、まさに火災保険です。

【参考記事】アパート経営のメリットとリスクを解説!年収いくらからやる?

実際、火災保険と言っても、保険で補償されるのは火災だけでなく、大雨による水害・風害などの自然災害はもちろん、補償範囲を広げればそれ以外の事故(偶然による破汚損)も補償対象となります。

アパートの火災保険は、ある程度相場が決まっていますので、正直なところ、どこの保険会社のものでも構いません。しかし、補償内容については、メインの補償に加えて、どうしても付加してほしい補償・特約があります。保険にこの内容をつけなかったばかりに、事故発生時に結構な損失を被ったアパートオーナーもいらっしゃいます。

そこで今回は、アパート経営で必須となる火災保険について基礎知識をまとめつつ、保険料が決まる仕組みや、是非付けていただきたい特約補償などについて解説していきます。

目次

火災保険料は「構造」「保険金額」「補償範囲」で決まる

賃貸住宅に限らず、建物の火災保険料は、「構造」「保険金額」「補償範囲」で決まります。細かいところを言えば、地震保険はエリアによって保険料が変わりますが、基本はこの3つです。

●(1)構造級別の違い

建物は、構造によって燃えやすさなどが異なり、火災保険の保険料も異なります。 その危険(リスク)実態に応じた区分のことを「構造級別」といいます。

構造級別は住宅物件と一般物件の2種類が存在し、それぞれがさらに3つに分類されています。賃貸住宅は「住宅物件」なのですが、耐火性が高い順に「M構造」「T構造」「H構造」となります。

3つの級別については後述しますが、耐火性が高い方が火災の被害が少なくなりますので、保険料は安くなります。たとえば、同じ規模金額の建物だったとしても、「T構造」より「M構造」の方が保険料は安くなります。

●(2)「保険金額」

次に「保険金額」です。火災保険で補償されている保険金額が高いほど、保険料は高くなります。

保険金額は、建物の構造・面積などの基本情報があれば、保険会社のシステムで標準的な価額が算出されます。ただ、建物のスペック(設備や仕様)によっては乖離がありますので、常識的な範囲の中で調整できますので、その範囲で契約者が任意に設定できます。

新築物件の場合は概ね取得価格で設定(いわゆる全部保険)、中古物件の場合はオーナーの考えによって異なりますが、筆者のクライアントは比較的出来るだけ高めの価格を設定している印象があります。

注意点というか、覚えておいていただきたいのは「新価」と「時価」。新価とは、同等のものを新たに建築あるいは購入するのに必要な金額をいいます。時価とは、同等のものを新たに建築あるいは購入するのに必要な金額から、「経過年数による価値の減少と使用による消耗分」を差し引いた金額をいいます。

最近は多くの場合「新価」設定が前提となっていると思うのですが、火災保険を契約する場合は、念のため「新価」設定になっているかは確認したほうがいいでしょう。実務上は新価の方が圧倒的に有利で、トラブルにもなりにくいです。

ちなみに、筆者のクライアントはほぼすべてが「新価」×「全部保険」で契約しています。「新価」「時価」の違い、「全部保険」など、少し専門的になるのですが、以下の情報をご参考にしてください。

【参考】損保ジャパン 火災保険の正しいつけ方~むだなく十分な補償を得るためには~

●(3)「補償範囲」

最後に「補償範囲」です。火災保険は、火災以外の損害も補償されますが、補償範囲が広ければ広いほど、保険料は高くなります。

まずは、基本となる「自然災害」です。自然災害には「火災」「風水害」「落雷」「ひょう」「雪災」などがあります。注意が必要なのは「風災」と「水災」。おそらくデフォルトで、免責金額や支払基準が設定されていますので、いざ損害が発生したときに保険が出ない、ということになってトラブル・クレームに発展することもあります。きちんと風水害の補償については、免責金額・支払基準の説明を受けるようにしてください。

さらに補償範囲を広げると「破壊」「事故」「盗難」といった人為的な被害や、「隕石などの飛来物」「車の衝突」などの損害も補償されるようになります。保険料はもちろん高くなりますが、いざという時には安心です。

ちなみに、クライアントから補償範囲を広げたほうがいいかどうか、アドバイスを求められることがあるのですが、筆者としては、最初の5年か10年は広めに補償をつけておくようにお話します。

5年、10年所有をすると、残債務も減ってくるほか、ある程度はサジ加減が分かってくるので、その時に改めて補償内容を見直していくとよいと思います。

(参考)水災不担保と土砂災害

ちなみに、水災不担保とすることで保険料を結構安くすることが出来ますが、筆者は水災不担保には消極的です。高層マンションの上層階や、高台の住宅であれば、浸水被害に遭う可能性は低そうですが、土砂災害(土砂崩れなど)は水災として扱われるので、水災不担保にすると保険金を受け取れません。またゲリラ豪雨などの都市型水災もありますので、水災補償は付けておいた方がいいと個人的には思います。

(参考)地震保険

火災保険の特約とは違いますが、火災保険とセットで加入する地震保険もよく質問・相談がある保険です。地震保険の概要については、ネットを探せばいくつも参考記事があります。

(参考)日本損害保険協会

地震大国と言われる日本ですから、当然地震への備えはしておきたいですが、地震保険は保険料が高いのがネック。そのため、新しく物件を買う方から、地震保険を付けるかどうか相談されることもあります。

個人的には、地震による被害は怖いので「付けたほうがいいですよ」というアドバイスをしています。買ってから数年で震災被害に遭ってしまっては目も当てられません。

ちなみに筆者の周りでは、当初10~15年くらいは地震保険を付けて、その後は様子をみて判断する、というクライアントが多いと思います。これはある程度合理的で、借入金の残債務が減った段階で外すのは私もアリだと思います。(債務が減っていれば、地震で建物が壊れても、土地として売却が可能なため)

アパート経営の火災保険 知っておくべき3つの「構造級別」

●M構造(マンション構造)

M構造に該当するのは以下の共同住宅です。M構造は、共同住宅のうち、コンクリートやレンガなど耐火性に優れた建材で建築された建物が該当することになります。T構造、H構造に比べ耐火性に優れているため、保険料を安く抑えられます。

なお、共同住宅とはマンションやアパートなどの集合住宅です。1つの建物の中に世帯単位で区分された戸室が2つ以上あり、各戸室に炊事を行う設備が付属しているものを指します。

 ・レンガ造建物
 ・コンクリートブロック造建物
 ・コンクリート造建物
 ・耐火建築物
 ・石造建物

現在の日本国内では、多くの場合、鉄筋コンクリート造(あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造)の1棟マンション、あるいは区分マンションが対象となっています。

●T構造(耐火構造)

T構造は、住居専用の独立した建物(主に一戸建)のうち、とくに耐火性能に優れた建物を指します。耐火性能の高い建材(下記)で建築されています。

なお、T構造とM構造の違いは、T構造が戸建などの住居専用の独立住宅なのに対し、M構造は共同住宅である点です。

 ・耐火構造の建物
 ・レンガ造建物
 ・石造建物
 ・準耐火建築物
 ・鉄骨造建物
 ・省令準耐火建物
 ・コンクリートブロック造建物
 ・耐火建築物(共同住宅建物以外)
 ・コンクリート造建物

●H構造 (非耐火構造)

H構造(非耐火構造)は、住居専用の建物のうち、T構造にもM構造にも該当しなかった建物になります。日本国内では主に木造をイメージしていただくとわかりやすいです。

他の構造と比較して火災に弱いため、火災による損害を受けやすいため保険料は他の構造に比べ高くなります。非耐火構造にあてはまる建物は以下に示した建物を指します。

・非耐火構造の建物
・木造
・土蔵造
・M構造やT構造に該当しないもの

アパート経営の火災保険 保険料の相場は?

次に、アパートの大家さんが火災保険の保険料をいくら払っているか、その負担額について情報をまとめます。

火災保険のシミュレーションサイトがいくつかありますので、今回は以下のサイトを参考させていただきました。

参考1 損保ジャパン 1分でできる 保険料クイック試算

参考2 火災保険比較サイトi保険 火災保険料シミュレーション

いずれも、自己居住を前提としているので、アパートオーナーが入る保険とは多少違いますが、保険料はそれほど大きく変わりませんので、参考としては十分使えます。エリアは東京都、新築、補償範囲は広め、地震保険あり、5年契約でシミュレーションします。

なお、2のサイトは複数の保険会社の試算を見られるのですが、保険金額の上限が3000万円までなので、2500万円で試算し、2倍、4倍することにより参考値とさせていただきました。

●木造物件(H構造)の保険料目安(H構造)

物件種別 建物金額 保険料(5年合計) 保険料(単年)
戸建て賃貸 2500万円程度 30万円~40万円くらい 8万円くらい
木造アパート(小中規模) 5000万円程度 70万円~80万円くらい 15万円くらい
木造アパート(大規模) 1億円程度 150万円~160万円くらい 30万円くらい

●(参考)ワンルームマンションの場合(建物金額1500万円程度)

区分のワンルームマンションを購入した場合の保険料はどのくらいでしょうか。マンションは「M構造」になるのでH構造の木造よりも保険料は割安になります。保険金額1500万円であれば、年間の保険料は大体2万円~2万5000円くらいです。

そもそも大家さんが火災保険に入らないとどうなる?

日本における火災の状況はどうなっているのでしょうか。総務省消防庁に統計資料があります。

総務省消防庁 令和2年(1~12月)における火災の状況(確定値)について

令和2年(1~12月)の総出火件数は34,691件で、そのうち住宅火災は10,564件でした。火災全体のうち約3分の1が住宅火災であり、日本のどこかでは、一日あたり住宅火災が30件程度は起こっている、ということになります。

出火原因はたばこ・焚火・コンロが比較的多いのですが、放火や原因不明、その他の原因、などが半分以上を占めており、自分が気を付けていれば大丈夫、という次元ではないのが分かります。

●融資条件としての火災保険

さて、火災保険は任意保険であり、アパートオーナーには、火災保険の加入は法律上義務付けられていません。しかし、多くの場合、購入時に金融機関からの借り入れを利用されると思いますが、融資条件には火災保険の加入が必須条件となっているケースがほとんどです。

金融機関が融資をする際に火災保険の加入を必須としているのは、火災保険に加入しない場合、万が一火災等の事故が発生した場合に、ローンの回収ができなくなる恐れがあるからです。

仮に火災保険に入っていない状態で火災が発生し建物が焼失するとローンだけが残ってしまうことになります。そうすると、金融機関は担保物件を失い、債務者の他の財産から弁済を受けざるを得なくなってしまうため、債権回収が難しくなります。

しかし、火災保険に入っていれば、建物が全焼しても、保険金で残債務の返済は可能です。そのため、お金を貸す側としては、取りはぐれがないように、火災保険の付保を条件とすることで、担保となる不動産を守っているのです。

●アパートオーナーも知っておくべき「失火法」とは?

日本で火災保険を考えるうえで「失火法(失火ノ責任ニ関スル法律)」の理解は必須です。失火法は明治32年に制定された法律で、失火者を保護することを目的とします。これは、日本では木造住宅が密集して建築されているため、類焼による損害が多大になることが多いことが背景にありました、

この法律により、失火によって他人の家が延焼した場合であっても、失火者に「重大な過失」がなければ、損害賠償責任を負わせないことになりました。これは逆に建物所有者の立場から見ると、たとえば隣家から出た火災によって自分の家が焼失してしまった場合でも、隣家へ損害賠償請求ができないということになります。 

そのため、隣家など外部の失火に起因する延焼火災に備える意味でも、各自が火災保険を契約しておくことが必要ということになり、火災保険が普及しました。

●(参考)失火法で「重大な過失」があると判断された事例

・石油ストーブの火をつけたまま、カートリッジタンクに給油した上、タンクの蓋をきちんと閉めずに収納しようとして石油が漏れ、ストーブの火が着火して出火した事例

・寝たばこの危険性を十分認識しながら、何の対応策も講じず、漫然と喫煙を続け、眠ってしまい出火した事例

・台所のガスコンロにてんぷら油の入った鍋をかけたまま台所を離れたため、てんぷら油が過熱され、出火した事例

・マンションの解体工事でアセチレンガス切断機を使用して鉄骨を切断中、飛散した溶融塊により出火した事例

●(1)隣家からの延焼の場合

たとえば、隣家からの延焼(もらい火)を考えてみましょう。通常の不法行為責任を前提とすると、類焼によって損害を受けた場合は、火災を起こした人(失火者)が損害を補償するのが民法規定(民法703条不法行為責任)の帰結です。

しかし、「失火法」は民法の特別法であり、火災を起こした側に重過失あるいは故意がないと認められれば、燃え移った家の損害には補償をしなくてもよいと規定しており、他の民法規定(不法行為責任)に優先されてしまいます。

そのため、他からの失火で自分の建物が燃えてしまっても、自分で費用を出して建物を建て替えるしかない状況になります。通常、建て替えには大きな費用がかかりますが、失火者に損害賠償請求できなければ、被害者といえども経済的に困窮・あるいは破綻してしまいます。

この時、事前に火災保険に加入していれば、自宅が受けた損害は火災保険から補償を受けられますので、最悪の事態は避けられるといえます。

●(2)入居者が火災を起こした場合

次に入居者が火災を起こした場合を考えてみましょう。

まずは第三者に対する建物所有者の責任。

入居者の過失により共同住宅から火があがり、第三者に損害を生じさせた場合には、建物の設備等に問題があったなど特別の事情がない限り、大家には責任は及びません。

次に、第三者に対する失火元(入居者)の責任。

アパートのように複数の入居者があり、火災を生じさせた入居者とそれ以外の入居者との間でも、失火責任法の適用により故意又は重大な過失がない限り、火災を生じさせた入居者は不法行為責任を負うことはありません。

最後に、失火元(入居者)と建物所有者(大家さん)との関係・責任。

これも、失火法の適用がある限り(失火元に故意・重過失がない場合)、大家さんから入居者に不法行為責任は追及できません。しかし、それとは別に、建物所有者は入居者に対して、賃貸借契約に基づく「債務不履行責任」を追及することができます。

債務不履行に基づく損害賠償請求は、不法行為に基づく損害賠償請求とは法律上異なります。古い判例ですが、最判昭和30年3月25日では、債務不履行に基づく入居者の賠償責任は、大家が被った損害の範囲に限定され、損害が膨大となるわけではないため、失火責任法の適用はない旨を判示しています。

ちなみに、この場合の入居者の債務不履行とはどういうものか。少し細かくなりますが、「善管注意義務違反」と「原状回復義務違反」の2点が該当します。借主(入居者)は、賃貸借が終了した場合には、原状回復をしたうえで物件を大家に返還する義務を負います(民法第601条、第621条)。返還するまでは、善良な管理者として物件を管理する義務があります(民法400条)。

入居者の過失によって借家が焼損した場合には、この各義務を履行できないため、債務不履行に基づく損害賠償義務を負うことになります(民法第415条第1項)。

この時、入居者が無資力であると、建物所有者は賠償を受けられないため、自分で火災保険に入って危険に備えたり、入居者に賠償責任までをカバーした火災保険(「個人賠償責任補償特約」「借家人賠償責任保険」などの名称)の加入を義務化することで、リスクヘッジを考えたりするようになりました。

●(参考)類焼損害補償特約とは?

前述のとおり、重大な過失を除く失火による類焼損害は、「失火責任法」により賠償しなくてもよいことになっています。

しかし、損害を受けた隣家の方が火災保険に入っていなかったり、十分な保険金を受け取れなかったりすることもあります。そうすると、近隣との関係が非常に悪化してしまうことが懸念されます。

そのような場合でも補償に役立つのが「類焼損害補償特約」です。これは、自宅からの失火で近隣の住宅や家財に延焼してしまった場合に、法律上の損害賠償責任がなくても、近隣の住宅や家財を補償する特約です。

アパート経営・不動産投資と火災保険 おすすめの補償特約とは?

前述の「補償範囲」にも関わってきますが、火災保険には特約というものがあり、基本となる火災保険契約よりも補償範囲を広げることが出来ます。

詳しい保険代理店でなければ、それほど詳しく説明はされませんが、実はアパート経営に使われる火災保険には多くのオプション特約があります。

その中でも、筆者の経験上、アパートなどの物件購入時には次の補償特約を付加することを強くお勧めします。(補償の名称・呼称は保険会社によって異なりますので、以下は筆者が使っていた保険会社の補償特約の呼称を使います)

アパート経営に必須の特約(1)施設賠償責任特約

施設賠償責任特約は、所有する賃貸物件の欠陥や、物件の管理、これに付随する業務の遂行を原因とする偶然な事故によって、他人にけがをさせたり他人の物を壊したりするなど、法律上の損害賠償責任を負った場合の損害(賠償費用)を補償します。アパート経営者の場合、アパートの経営に起因する偶然な事故(タイルの落剝で通行人にケガを負わせた、など)

保険会社によっては、特約として用意されていないこともありますが、その場合は、火災保険とは別に、個別に賠償責任保険を契約する必要がありますので、詳しくは加入しようとしている保険会社・保険代理店に確認してください。

アパート経営に必須の特約(2)家賃補償特約・家賃収入特約

家賃補償特約は、アパートやマンションが火災等により家賃収入が得られなくなった場合に、通常のアパート経営が再開できるまでの間の家賃収入を補償する保険。考え方としては、店舗の「休業損失」を補填する保険に近いものです。

火災などの事故が起きた場合、火災保険に入っていれば、建物や家財の損害は補償されます。しかし、修理や建替によって部屋を貸し出せない期間の家賃収入は補償されていません。これを補填してくれるのが家賃補償特約です。

家賃補償特約は、3ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間といったように契約時に補償する期間を設定し、その期間を上限として損失した家賃分の保険金が支払われます。

(アパート経営・不動産投資 火災保険・特約の注意点)

前述の2つの特約補償は、アパート経営上、いざというときに大変役立つ特約補償なので、物件購入時には是非とも付加してほしいものです。

しかし、これらの保険の内容は、詳しくない方にはあまり知られていないようです。実際、筆者が物件購入のお手伝いをしたときにも、特にこちら側から「つけてほしい」と言わなければ、これらをセットで提案してくれる保険会社・保険代理店はあまり多くありませんでした。

特約が存在することすら説明されないことも多いため、是非こちらから指示して火災保険に付加するようにしてください。

以下、これらの補償特約がアパート経営の現場でどのように使われるか、どのような場面で役に立つのか、もう少し詳しく解説します。

アパート経営・不動産投資「施設賠償責任特約」どんな場合に使うか

さて、前述の施設賠償責任特約ですが、どんな場面で使われるのでしょうか。筆者の経験を思い出しながら、事例をあげます。

(雨漏りで入居者の家具に損害)

筆者の経験上、アパート経営で施設賠償責任保険を使う場面として一番多かったのが、雨漏りによるトラブル。老朽化等で雨漏りが発生し、雨で入居者の家具に損害が発生してしまうことです。ひょっとすると、火災保険本体よりも使う回数が多かったかもしれません。

これまでで今までで一番ひどかったのが、お医者さんが借りたマンションで漏水事故が起こったケース。娘さんのために海外製の高額なピアノを購入し日々レッスンに励んでいたそうですが、雨漏りでピアノが台無しにしてしまったそうです。時価数百万円の楽器だったので、補償額をどのように評価するかでかなりモメました。

この時は、かろうじて建物オーナーが施設賠償責任特約に入っていたため補償の対象となり、金額的な負担は最小限で済んだようですが、入居者からの頻繁にクレームを受けたほか、「もし保険が出なかったら・・・」という不安を抱える日が続いたようです。

特にアパート経営する中で「施設賠償責任」を使う場面は、建物側に何らかの落ち度があって入居者に迷惑をかけてしまったケースがほとんどです。気のいいオーナーであるほど、ストレスはかなり重くなりますので、精神的な負担を減らす意味でも、施設賠償責任特約は付加しましょう。補償上限1億円でも保険料は数千円くらいで済むケースがほとんどなので、アパート経営で動かす金額を考えると、とても割安です。

アパート経営と火災保険「家賃補償特約」どんな場合に使うか

前述のとおり家賃補償特約は、火災保険に付帯してアパートの休業損失を補填してくれる補償です。これは、ローンでアパートを購入した場合に、特に有効な火災保険の特約となります。

例えば、アパートの一室で火事(ボヤ)が発生し、上階と左右の部屋に延焼してしまった場合を考えてみましょう。火災が起きた部屋と上・左右の合計4室に焼損が発生し、入居者はホテル住まいなどで一時しのぎをしている状況です。火災保険と家賃補償特約がどのように役立つか、詳しく見てみましょう。

無収入期間のローン返済に役立つ

一般的にアパート経営を始める場合、銀行などからローンを組んで物件を購入することが多いものです。ローンで物件を買うと、毎月、家賃収入の中から元金・利息の合計額を銀行に返済していくことになります。

そんな状況下で前述のような火災が発生して4室分の家賃が入らなくなるとどうなるでしょうか。1室5万円の家賃だとすると、20万円の現金が入らないことになり、たちまち返済原資に窮することになります。

そんな時に、家賃補償特約を付けていると、逸失利益20万円が補填されるので、返済原資で困るリスクをヘッジできるのです。(あくまでも火災が理由で退去した場合に限ります。)

通常、火災による損害が起きると、焼損だけでなく、消火活動(消化のための放水)による損害も大きくなります。状態にもよりますが、焼損物の撤去と修繕で、概ね2~3か月はかかりますので、最低でもそのくらいの期間は補償期間として契約しておく必要があるでしょう。(大体6か月くらいが一般的でしょうか)

実際に入居者がボヤを起こして火災が発生したオーナーの手伝いをしたことがありますが、購入時にこの補償特約を付けるようアドバイスしていたので、資金繰りには困らず無事にアパート経営を継続することが出来ました。

無収入期間の生活費として使える

現在、生活費を家賃収入で賄っているアパートオーナーは、家賃収入が入らなくなると途端に生活が苦しくなります。定年退職後、年金と家賃収入で生活しているような方にとっては、4室空室となり、1か月で20万円も生活費が圧迫されるような事態になれば、目も当てられないでしょう。

もちろん、アパート経営をする前提として、ある程度の余剰資金をプールしておくことは必要ですが、一つの事故で生活が危うくなるような事態は避けるべきです。家賃補償特約は、家賃収入に生活を頼っている世帯の収入を守る意味合いもあります。

アパート経営で注目される火災保険特約 家主費用特約とは?

いわゆる火災保険とは別のものですが、昨今注目されているのが家主費用特約というもの。各保険会社によって名称が異なることもありますが、事故対応等家主費用特約、家主費用補償特約、孤独死特約などと呼ばれることもあります。

これは、アパートやマンション内で自殺や犯罪、孤独死による死亡事故が起きたことが原因で、該当の居住戸だけでなく、隣室や上下階の部屋が空室となった場合に家賃を補償する特約です。

補償内容は各保険会社の商品設計によって違いますが、概ね以下のような費用・逸失利益を補填します。数百万円程が補償されるケースが多いと思います。

・腐敗によって汚損が進んだ室内の原状回復費(消毒、脱臭施工費含む)、
・次の入居者が決まるまでに失った家賃(最長2年分)、または値下げした家賃(最大50%まで)、
・その他遺品整理費用やお祓いや供養に要した費用など、

比較的新しい補償特約なので、前述の2つの補償ほど普及はしていませんが、入居者の高齢化が進む中、有効なリスクヘッジ策として注目されています。アパート経営のリスク対策として情報収集してみてはいかがでしょうか。

アパート経営の火災保険 おすすめの補償特約 まとめ

今回はアパート経営・不動産投資で、オーナーが付加すべき火災保険の特約補償について解説しました。施設賠償責任特約と家賃補償特約の2つはアパート経営を続けるうえで大変重要なリスクヘッジ策となります。

これから火災保険に加入する方も、すでに火災保険に加入している方も、是非保険の補償内容を確認して下さい。

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2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。