資産運用の感度が高い方なら、誰もが一度は「オフショア投資」を考えたこともあると思います。
でもオフショア投資には不安なイメージが付きまとうのも事実のようです。
「友人がオフショア投資で損したらしい」「オフショア投資って実態がよくわからないし、詐欺にひっかかるのでは・・・」など、オフショア投資の実態がよくわからないことから、不安なイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
確かにインターネットで検索してみると怪しげなオフショア投資の情報も溢れていますが、一方で多くの投資家がオフショア投資を実践しているのは事実です。
そこで今回は、オフショア投資の概要についてまとめてみたいと思います。
「オフショア投資」とは?
オフショア投資の定義は単純です。
「オフショア地域」で投資を行うこと、資金を運用すること、それがオフショア投資です。
それでは、オフショア地域とは一体どこなのか?これはタックスヘイブンと呼ばれる地域のことです。
タックスヘイブンはその言葉通り、TAX(=税金)のHAVEN(=避難地、回避地)。
つまり、税金の高い地域から人々が避難してくる地域や国を指してこう呼ばれています。
オフショアとタックスヘイブンは同義と考えてよいです。
これはもともとはタックスヘイブンと呼ばれる地域が、ヨーロッパやアメリカから見て沖合にあったからです。
オフショアとは元々「沖合に離れる」という意味。
歴史的な流れのなかで、タックスヘイブンを指して自然とオフショアと呼ばれるようになりました。
オフショア地域の定義としては、国際金融ビジネスの世界では「法人所得税率が25%以下の地域」がオフショアと線引きされます。
ただし日本では2010年以降、租税負担率が25%から引き下げられ20%以下の地域を指すようになりました。
オフショア地域のメリット
そしてオフショア投資の舞台となるオフショア地域の最大の特徴は何といっても、他の国に比べ税金面で非常に優遇されているところ。
所得税や住民税はもちろん、投資による売却益、譲渡益にかかる税金(キャピタルゲイン税)や、配当、利子収入にかかる税金(インカムゲイン税)が非常に低い、もしくはゼロのところもあります。
日本国内だと税金でかなり持っていかれるところがオフショア投資ではそれがない、もしくは軽減されるので、投資面でも非常に有利にすすめることができるわけです。
このように税金面で優遇されたオフショア地域ですから、当然ながら世界中から企業や投資家がこの免税の恩恵を受けるために、オフショアを利用したり経由させて投資やビジネスを行っています。
一説によるとオフショア地域には、世界の制度資産の60%以上が集まっていると言われるほどです。
世界の代表的なオフショア地域一覧
世界にあるオフショア地域をまとめてみました。
ヨーロッパ・地中海
スイス、ルクセンブルグ、オーストリア、ハンガリー、オランダ、リヒテンシュタイン、カンピョオーネ(イタリア領)、モナコ、ダブリン、マン島(イギリス領)、ジャージー島(イギリス領)、ガンジー島(イギリス領)、サーク島、アンドラ、マルタ、キプロス、マデイラ(ポルトガル領)、ジブラルタル(イギリス領)
アジア・南太平洋
香港、シンガポール、ラブアン島(マレーシア)、クック諸島(ニュージーランド領)、マーシャル諸島、西サモア、バヌアツ、パラオ諸島、トラック諸島
インド洋・中近東・アフリカ
セイシェル諸島、モーリシャス、スリランカ、バーレーン、アブダビ、ドバイ、リベリア
北米・中南米
ユタ、ワイオミング、ネバダ、デラウエアー、ベリーズ、パナマ、ウルグアイ
大西洋・カリブ海
ケイマン諸島(イギリス領)、ヴァージン諸島(イギリス領)、バミューダ島(イギリス領)、バハマ諸島、ネヴィス、アングイラ(イギリス領)、アンティグア、モントセラート(イギリス領)、バーブーダ、グレナタ、バルバトス、アンティール諸島(フランス領)、アルバ諸島(フランス領)
国や地域によって税率に若干の違いはありますが、これらはすべてオフショアと呼ばれる地域です。
日本から近いオフショア地域といえば香港やシンガポールですね。
オフショア投資の魅力・メリット
次に、オフショア投資のメリットについて解説します。
オフショア投資のメリット1. 税務的なメリット
オフショアで資産を運用するメリットとして、一番に挙げられるのがやはりこの税金面。
オフショア地域では日本と比べて極端に税率が低いか、まったくの無税なので、かなり大きな節税になります。
例えば、所得税でみてみましょう。
下記はオフショア地域と日本の所得税をまとめたものです。
日本 45%
シンガポール 20%
香港 17%
ハンガリー 16%
スイス 12-26%
モナコ 0%
バハマ 0%
バーレーン 0%
バミューダ 0%
ケイマン諸島 0%
押しなべて日本とは比べものにならない税金の低さです。
なんと所得税0%の国もあります。
これがオフショア税率の魅力の一つです。
いかに税金面で優遇されているかわかりますよね。
キャピタルゲイン税(売却益、譲渡益にかかる税金)やインカムゲイン税(配当、利子収入にかかる税金)が0%(無税)なの地域は非常に有利です。
日本の投資信託では毎月利益がでるたびに20%の税率がかかりますが、オフショア投資では出した利益に税金がかからず、非課税のまま再投資が可能になります。
オフショア投資のメリット2. 金融商品の豊富さ
金融商品の豊富さもオフショアの魅力と言われます。
海外やオフショアでは、ファンド・保険など、日本では考えられないほどリターンの大きい商品も多数存在します。
また、運用する通貨も選べたりするので分散という意味でもメリットです。
香港やシンガポールに行ったことがある人はわかると思いますが、オフショアでは普通にテレビCMや電車や街中で宣伝されています。
オフショア投資のメリット3. 厳重なプライバシーの保護
地域にもよりますがオフショアにおいては、課税当局であっても預金者等の個人情報を教えさせる事は難しいと言われるほどライバシーの保護は非常に厳重です。
ヨーロッパ諸国では、長い歴史の中で領土が入り乱れる紛争の歴史を刻んできたこともあり、大きな権力に資産を略奪されることや、国が滅ぶことも当たり前のようにありました。
そんな中で個人が危機にさらされないための手段として、資産を隠す、守るということは欠かせませんでした。
ですから、資産のプライバシーの保護という点が非常に重視されてきました。
オフショアでもまさにそういった歴史的な流れを受け、プライバシー保護の文化が受け継がれているのです。
2016年の「パナマ文書」流出以来、OECD(経済協力開発機構)を中心とした世界100か国で銀行口座の情報開示を行い、日本も各国と租税条約を結ぶなどして、税逃れへの取り締まりが年々強化されているといわれています。
しかし、それでもやはりテロ組織のマネーロンダリングや武器売買など不審な資金に関わる場合を除けば今もその秘匿性は変わっていません。
例えば日本だと、ふつうに銀行通帳というものが発行されますし実名も明かされているわけで、これは世界的にみても秘匿性という面に関してはかなり低いと言えます。
オフショア投資のメリット4. 国際分散投資
リスクヘッジをしていく上で大切なポイントは、環境の違う場所に分散することです。
国外に資産を分散するリスクヘッジという意味でも、オフショア投資は非常に大きなメリットです。
「分散投資」と言えば、
- 複数の大手銀行口座に預金を分散している
- 東証一部上場の優良会社の株で銘柄を分散している
- 首都圏・地方など場所を分散して不動産投資している
- 銀行預金だけでなく日本国債にも投資している
- 日本に支店をもつ外資系銀行にも預金している
これらはすべて日本という一つの国の中で行われているため、本当の意味での分散投資にはなっていません。
たとえば、円の価値がインフレなどで大きく変動してしまったら、その影響を直接受けてしまいます。
預金する銀行を分散しても、国内の銀行法が適用される銀行ならば封鎖されるときは一緒です。
そもそもその国の通貨が無価値になったとしたら、その国の資産はすべて危機にさらされます。
ですから、本当にリスクヘッジのために資産を分散するには、国ごと分散させる必要があります。
世界を見渡してみると、近年でも国の経済が破綻、もしくは深刻な経済危機に瀕した国は、ギリシャ、イタリア、トルコ、ブラジル、アルゼンチン、ロシア、など数多くあります。
ほとんどの国民は国の財政とともに生活が破綻し困り果てましたが、前もって海外に資産を分散させリスクヘッジしていた人たちは危機から逃れることができました。
国と自分(家族)の運命を一緒にしてはいけません。
とはいえ、もちろん海外やオフショアでも、投資なのでもちろんリスクとリターンがあります。
オフショア投資のリスク・デメリット
どんな投資にも多かれ少なかれリスクはつきものです。
リスクなくしてリターンはあり得ません。
税金面で優遇されているオフショア投資といえど、これは同じことです。
オフショア投資のリスクやデメリットとついてまとめます。
オフショア投資のリスク1. 為替リスク
いわゆる為替リスクと呼ばれるものです。
これは国内の金融機関を通して海外やオフショアの金融商品に投資する場合。
厳密にいえばオフショアではなくオンショアではあるのですが、そのほとんどが米ドルで運用されているので、基本的に入出金時など円にもどすタイミングでは為替の影響は受けます。
また、原則としてオフショア投資を行う場合は現地の銀行口座を開設し運用しないとあまり意味がありません。
オフショアの多くの銀行口座では米ドル、ユーロ、円など複数の通貨で運用しながらしかも世界中外貨のまま引き出せすことが可能なので、預金もそちらで回すほうが効率的でしょう。
オフショア投資のリスク2. 言語リスク
先ほど、オフショア投資を行うなら現地で銀行口座を持つ必要があると言いましたが、ここでもまた多くの日本人にとっては一つの障壁があります。
例えば、オフショアとして香港を利用する場合、使用される言語はもちろん英語です。
口座開設での会話も英語、契約書も英語。
ネット取引もありますが、基本的には口座開設後もオフショアセンターとのやりとりは日本語ではなく英語になります。
この対策というと、「頑張って英語を勉強する」です。
簡単に言うなよと思われるかもしれませんが、これしかないです。
オフショア投資のリスク3. カントリーリスク
国の政治的な事情によって損害を受けることもあります。
いわゆるカントリーリスクと呼ばれるものです。
その国や地域の政治状況やクーデターによって起こりうるリスクのことをいいます。
オフショア先の政治状況、国際状況などもある程度考慮する必要はありますが、しかしそもそも確実で絶対的に安定した場所など世界にないのも事実です。
クーデターが多く政治的に不安定に思える国だってありますが、日本だって財政が破綻して円が暴落する可能性だってゼロではないですよね。
やはりそういった意味でも、こっちがダメになってもこっちがある、というような国境を越えた資産分散は必須でしょう。
オフショア投資のリスク4. 詐欺の可能性
オフショア投資を行う際は、とくに初心者は現地のIFA(独立している中立的な立場から資産運用のアドバイスを行う専門業者)を通して運用するのが一般的であり安全と言えます。
しかし、一方、詐欺が多いのも実態です。
これはもちろんオフショア投資に限ったことではありませんが、一部のネットワークビジネスや保険代理店などが、手数料欲しさに、オフショア投資の正確な内容や特徴、起こりうるリスクなどをきちんと説明せずに契約させ、結果的に被害を受けるという人がいます。
海外投資詐欺においては、販売会社そのものやその販売手口に問題があるパターンがほとんどです。
そのほとんどは、国内のIFA(個人のファイナンシャルプランナー)が金融庁に無許可で海外ファンド、海外FX、オフショアファンドなどを運用しております。
あとは、運用会社が無許可であったり、海外にあり実態が不明な場合などがあり、資金が持ち逃げされてしまうケースがあります。
また、単に海外銀行の口座開設や海外ファンドへの仲介として投資資金を渡してしまい騙されるリスクもあるようです。
また、投資詐欺まではいかないまでも、会社が資金を使い込んでしまい、出資者のもとに戻ってこないケースなどもありますので、その意味でリスクはかなり高いと言えます。
具体的なオフショア投資商品!それぞれどんな特徴があるの?
それでは、オフショア投資には、具体的にどんな金融商品があるのか。
オフショアには日本よりも豊富な金融商品が存在していて、選択の幅が広がります。
ここではオフショア金融商品の種類と、それぞれどんな特徴があるのか?について簡単にまとめてみました。
オフショア投資商品1. オフショア株式
オフショアに口座も持っておけば、外貨で取引をグローバルに行うことが可能になります。
外国株式市場は日本の市場よりもずっと成長しているので、より高いトータルリターンを得られる可能性も。
配当利回り5%超の銘柄なども普通にあります。
オフショア投資商品2. オフショア債券
いわゆる社債、国債。
オフショア株式と同じように、オフショア債券も世界の主要通貨で入手可能です。
例えば、AAAランクの国際債券に非課税で投資するなんてこともできます。
オフショア投資商品3. 外貨
外貨も一つの投資と言えます。
オフショア投資なら、あらゆる商品を外貨建てで運用できるので、自然と複数通貨の資産確保が可能。
米ドルであれユーロであれ円であれ、投資のすべてを一つの単一通貨で行うよりも、複数の外貨を混ぜて保有したほうがあらゆるリスクに対応できます。
オフショア投資商品4. オフショア投資信託
いわゆる投資信託。
複数の個人から投資資金を集めて、それを原資に運用して得た利益が還元されます。
いつでも解約できるオープンエンド型と、一定期間は解約できないクローズドエンド型が存在。
優秀なファンドマネージャーで長期的に見れば利回り10%~20%も可能です。
オフショア投資商品5. 上場投資信託(ETF)
一般的に証券取引所で取引される株価指数など連動する投資信託の金融商品です。
手数料なども含め比較的コストが安いのも特徴。
日本では良くて分配金利回り2%台とかですが、海外では5%以上のものもあります。
オフショア投資商品6. ヘッジファンド
投資信託と似たようなものですが、どちらかというと安定性よりも絶対的利益を追求します。
年20~80%など利回りが高いのが特徴的ですが、そのため一口あたりの金額も大きく、リターンも大きいのですが同時にリスクも高いのが特徴。
計画性をもってその中で限定的に行う投資と言えます。
オフショア投資商品7. コモディティファンド
コモディティとは現物資産です。
具体的には、金、銀、銅、アンティークコイン、カルトワイン、エネルギー、など。
コモディティファンドとは、これらの各商品を投資対象にした投資信託です。
オフショア投資商品8. マネージド・フューチャーズ
マネージド・フューチャーズは、世界中の多様な先物・オプションを投資対象とし、相場の上昇・下降の両局面で利益を追求する投資手法、並びにファンドのことをいいます。
上場されている先物などを対象にトレンドをとりにく戦略で、幅広い商品を扱います。
ただ、一般的には5%以上の運営管理費と純利益の15%の成功報酬がかかるので高額なコストもかかってきます。
オフショア投資商品9. 生命保険
本人死亡時は時価総額の101%が死亡保険金として支払われますが、日本の生命保険とは違いどちらかというと死亡時の保証も求めるものではなく、あくまで積立投資のようなものと考えましょう。
オフショア投資商品10. 銀行預金
オフショアだけでなく海外銀行では、銀行預金の利率だけでも日本の数十倍、数百倍あるところもあります。
東南アジアの新興国では年利7%とかも普通にあります。
今、日本の銀行に預けている預金を、そういった海外の銀行口座を開設してそちらに移しておくだけでも、一種の投資になります。
オフショアで銀行口座を開設すれば、たいていの銀行はすでに特定のファンド会社と取引関係を維持しているので、特別な知識がなくても取引銀行から投資商品を見つけることができます。
これ例外にもオフショアや海外には、魅力的な金融商品もたくさん存在します。
ただ、オフショア投資に限らず、非常に魅力的なリターンが期待できるものは、それ相応のリスクがあることも知っておかなければいけません。
これに投資しておけば誰でも100%儲かるというものはないので、自分にとって無理のない、かつ期待できるようなポートフォリオを構築することが重要です。
その中の一つとしてオフショア投資を検討するものありだとは思います。
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