今回は、アパート・マンション経営の初期費用について解説します。
アパート・マンションなどで賃貸経営を始めるには物件を買わなくてはなりませんが、物件を買う時には様々な初期費用が発生します。
賃貸経営の初心者に方にとっては、どんな初期費用がかかるのか、どのくらいの自己資金を準備しないといけないのか、銀行からの借り入れはどのくらいが適切か、など不安なところも多いと思います。
アパート・マンション経営の初期費用は、一般の方にはピンとこないかもしれません。
しかし、物件の購入計画を立てる上で、初期費用や所有後の運営経費を把握することは、アパート・マンション経営のはじめの一歩と言えます。
今回の記事では、まずは物件の種別、アパート経営とマンション経営の違い、そして、アパート・マンション経営の初期費用を3つのパターンに分けてまとめました。
これを読めば、アパート・マンション経営の初期費用について理解が深まるはずです。
アパート・マンション経営で失敗しないために、ぜひご覧ください。
アパート経営とマンション経営とは?
まず、アパート経営とマンション経営について整理します。
アパート経営といえば、通常は一棟の建物を賃貸経営することです。
一般的なアパートとは、それぞれ独立した複数の住居があり木造や軽量鉄骨造で建築された建物のこと。
そのアパートを入居者に貸し出すことにより、家賃収入を得る賃貸事業です。
中古で購入することもありますし、自分で土地を持っている場合には、土地活用として取り組む方もいらっしゃいます。
これに対してマンション経営は、区分マンション(1棟ではなく部屋ごとにオーナーが分かれる)を賃貸経営することをイメージする人が多いようです。
たしかに件数としてはこの方が多いですが、他方でマンション一棟を賃貸経営するオーナーも多く存在します。
相続対策のため、地主さんが土地活用でマンションを新築したり、区分所有者が、より規模の大きい投資をしたいと思い、一棟マンションを購入したりするようです。
アパートとマンションの区別に明確な定義はありませんが、大まかに、賃貸マンションは階数に制限がなく、鉄骨造(S)、鉄筋コンクリート造(RC)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)で建てられているもの、アパートは階数が2階から3階程度で、木造もしくは軽量鉄骨造であるものを指すと考えられます。
アパート・マンション経営の初期費用は3パターン
次に初期費用のことについて解説します。
ここでは便宜上、「頭金」のことは外して解説します。
「頭金」のほかに係る諸経費・諸費用を初期費用と定義して進めます。
さて、初期費用(諸経費)の内容は、区分・一棟の別、さらには土地の所有の有無によって異なります。
大きく分けると以下の三パターンになると思います。
(アパート・マンション経営 初期費用のパターン)
1. 区分 マンション経営(中古・新築)
2. 一棟 アパート経営(中古・建売新築)
3. 一棟 アパート・マンション経営(土地から仕入れて新築or 自分の土地の有効活用)
初期費用(諸費用)は物件価格の大体7%くらい
区分マンション、一棟アパート(中古・建売新築)を購入する場合、主なアパート・マンション経営の初期費用は以下の通りです。
実際に、アパート・マンション経営を始めるためには、下記のような初期費用を想定しておく必要があります。
金額のイメージをざっくり言うと、初期費用は物件価格の7%くらいです。
たとえば、五千万円の投資用マンションの場合、350万円程度が初期費用の目安になります。
- 仲介手数料
不動産を仲介取引で購入した場合に支払う初期費用です。
不動産の価格によって仲介手数料は変わるのですが、ほとんどの方は、400万超になるので、「3%+6万円」と覚えておけばよいと思います。<仲介手数料の金額一覧>
200万円以下:5%
200万円超400万円未満:5%2万円
400万円超:3%+6万円 - 登録免許税
登録免許税は不動産の登記を設定する際に課税される税金です。
所有権の移転登記、抵当権の設定登記にかかります。
(所有権移転登記)投資用不動産の所有権を前所有者からあなたに移すための登記
固定資産税評価額(土地・建物)の2%(平成31年3月31日まで土地は1.5%)(抵当権設定登記)金融機関が担保として不動産を利用するための登記
債権金額の0.4%。 - 司法書士手数料
不動産登記費用は登記手続きを行う司法書士に支払う初期費用です。
およそ10~15万円くらいです。 - ローン事務手数料
銀行や信金・信組など、金融機関によって名目が異なる場合があります。
ローン事務手数料は、ローンを利用して投資用不動産を購入する場合に、金融機関に支払う初期費用です。
10万円程度の場合もありますし、金融機関によっては融資金額の数%の事務手数料が必要なケースもあります。 - 火災保険料
火災や地震に備えるための保険料も購入時に支払うことになります。(目安となる金額:ワンルームマンションの場合、契約期間が10年でおよそ1万円~2万円程度。)
- 固定資産税の日割り分
年の途中で売買した場合、前所有者に対して所有権が移転した以降の期間にかかる固定資産税額を、日割り分として支払います。 - 印紙税
不動産投資・マンション経営においては売買契約書やローンを利用する際の金銭消費貸借契約書などに貼付する印紙代です。
なお、不動産売買契約に関しては、軽減措置があります。1.土地建物売買契約書などの不動産の譲渡に関する契約書のうち、契約書に記載された契約金額が10万円を超えるもの
(例)建物の譲渡(4千万円)と定期借地権の譲渡(2千万円)に関する事項が記載されている契約書の場合、その契約金額は6千万円(建物4千万円+定期借地権2千万円)ですから、印紙税額は3万円となります。2.建物建築工事請負契約書などの建設工事の請負に関する契約書のうち、契約書に記載された契約金額が100万円を超えるもの
建物建設工事の請負(5千万円)と建物設計の請負(5百万円)に関する事項が記載されている契約書の場合、その契約金額は5千5百万円(建物建設工事5千万円+設計5百万円)ですから、印紙税額は3万円となります。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
- 不動産取得税
不動産の取得に伴って課税される税金です。
不動産購入後、およそ半年から1年以内に納税通知書が手元に届きます。土地・建物の税額は、固定資産税評価額の4%。
ただし、特例により標準税率が軽減されます。
土地及び住宅3%(平成33年3月31日まで)
※重複する解説もありますが、こちらの記事も参考までにご覧ください。
【参考記事】不動産投資を始めるにはいくらかかる?購入時の諸費用・初期費用を解説
初期費用の具体例(中古物件)
それでは、具体例で初期費用を見ていきましょう
5千万円(固定資産税評価額2千万と仮定)の中古アパートを、6月30日に、銀行でローンを利用(便宜上、融資金額五千万のフルローン)して購入した場合です。
以下、細かな計算方法と金額です。
- 仲介手数料 約168万(5千万円×3%+6万円+消費税)
- ①登録免許税(移転登記)約40万円(2千万×2%)
②登録免許税(抵当権設定)約20万円(5千万×0.4%) - 司法書士費用 約15万円
- ローン事務手数料 約10万円
- 火災保険料 約50万円
- 固定資産税の日割り分 約17万円(2千万×1.7%×184日/365日)
- ①印紙税(売買契約)1万円
②印紙税(金消契約)2万円 - 不動産取得税 60万円(2千万×3%)
合計383万円(購入価格5千万の7.6%)
※あくまで概算値になります。
上記は火災保険料を年払いにすれば初期費用としてはもっと下がります。
それで大体6%~7.5%の間くらいになると思います。
土地から仕入れて新築する場合の初期費用
新築の場合は中古よりも状況が複雑です。
土地の売買が関係したり、建築請負契約が関係したりするなど、変数が多くて案件によって初期費用は大きく変わるからです。
区分や一棟アパートの取得との違いは主に以下の点です。
- 建物表示登記費用
不動産登記の表題部にされる登記。
建物を新築した場合など、新たに不動産が生まれた時に必要となる手続きです。
土地家屋調査士が担当します。
費用は大体10万から15万くらい。 - 工事期間中利息
工事期間中利息(期中金利)とは、工事期間中(期中)に借りたローンにかかる金利(利息)のことです。
通常、請負代金は、着手金、中間金、最終金など、何回かに分割して支払うことが多いものです。
この場合、建物が稼働する前に借り入れをすることになりますが、その間、元金を据え置いてもらい、利息のみを支払うケースがほとんどです。
例えば、アパート建築計画で5000万の融資を受けるとします。
着工時に融資を受けて2,000万円を支払う場合、2,000万円分に相当する金利(利息)が発生しますが「期中金利」です。 - 設計費用・確認申請費用
規模や構造など、案件によって大きく変わります。
投資目的の木造集合住宅の場合、過大な設計料を払うのは難しいので、建築費の5%前後くらいになるかと思います。
物件の代金に含まれていることもありますが、別に請求されることもあります。 - 建築付帯費用
具体的には、水道負担金・地盤改良費・地盤調査費・外構工事、など建物本体の建築工事に付帯して生じる費用です。
これも、建物の代金に含まれていることがありますが、別になっているケースの方が多いと思います。
自治体や地盤の状態など、案件によって大きく異なりますので、建設会社に確認が必要です。
このように、新築の場合は建築費用にどこまでの費用が含まれているのか、をしっかり確認する必要があります。
きちんと把握していないと資金繰りが極端に厳しくなってしまう可能性がありますので注意してください。
以上、アパート・マンション経営の初期費用について解説いたしました。
アパート・マンション経営の初期費用【よくある質問】
Q. 売主と直接取引の場合、初期費用は変わりますか?
A. はい、間に不動産仲介が入らず、売主と直接売買する場合は、「仲介手数料」がかからないため、初期費用は安くなります。
注意点は契約書上の漏れがないようにすることです。
仲介会社が間に入る場合は、全日本不動産協会や、全日本不動産協会など、所属する協会の契約書式を使うことも多いですが、このような書式は、長い歴史の中でトラブルを未然に防ぐための条項が盛り込まれています。
直接取引する場合は、協会書式などを入手して後々トラブルがないように気を付けてください。
Q. マンション経営の初期費用をローンで借りることは可能でしょうか。
A. 一般的には初期費用をローンで借りるのは難しいかもしれません。
不動産融資の現場では、よくフルローン、オーバーローン、などという言葉が使われることがあります。
フルローンとは、物件価格の全額を融資でまかなうこと。
物件価格が3000万円の場合、3000万円の融資を受けることです。
この場合は、物件購入に係る初期費用(諸費用:おそらく7%前後くらい)を自己資金で用意する必要があります。
これに対し、オーバーローンは、初期費用さえも融資でまかなうことを指します。
ただし、オーバーローンは基本的には金融機関も積極的でありません。
担保の保全などを考慮すると、初期費用(諸費用)まで融資するのはリスクが高いように見えるからです。
一般的には、賃貸経営を始める人には、頭金1~2割+初期費用分をご用意ください、と言われることが多いように思います。
賃貸経営に使う自己資金は少ないほうがいい?
さて、今回のテーマである賃貸経営の初期費用ですが、これに関連する話題でよく議論に上がるのが、レバレッジと資金効率の問題。
最初に使う自己資金(頭金と初期費用の合計)は少なければ少ないほうがいいという意見と、しっかり自己資金を入れないとリスクが高いという意見が対立しています。
巷のマンション経営「成功ノウハウ」では、よくフルローンやオーバーローンなど、レバレッジを効かせた投資スタイルがもてはやされます。
これは、ひとえに「資金効率」の観点からレバレッジを効かせた方が有利だから、です。
他方で、多額の借入を伴う「ハイレバ投資」は危険極まりない、と断言する不動産投資家もいらっしゃいます。
突発的な修繕費がかかったり、金利が上がったり、空室率が上がったら、すぐにキャッシュフローがマイナスになってしまう、という主張です。
それぞれに正しいので、どちらが正解、とも言いにくいですが、例えば利回りが高いなど、賃貸経営がきちんと収益が出る状態であれば、借入金を多く、レバレッジを効かせたほうが資金効率が良くなります。
投下した自己資金を回収するまでの期間も短縮されるので有利と言えるでしょう。
逆に、賃貸経営自体の収益性が高くない場合には、キャッシュアウトする危険性が高くなりますので、ある程度の自己資金(頭金と初期費用)を入れて、借入金額を抑えてキャッシュフローを安定させたほうが安全性の高いマンション経営と言えるでしょう。
どんな物件を買って、収益性がどのくらいになるのか、によって取れるリスクも変わると思いますので、経営者各自の志向性(収益最大化を求めるか、安全性を求めるか)によって、正解が異なると言えるのかもしれません。
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