不動産投資を始めるにはいくらかかる?購入時の諸費用・初期費用を解説

今回は不動産投資で物件を買うときにかかる諸費用・初期費用について解説します。

不動産投資を始めるにあたっては、物件本体の購入費用に加え、物件取得に関係する諸手続きに必要な実費、手続きを依頼する司法書士への報酬、各種税金、保険料など、さまざまな費用がかかります。そして、物件自体の購入代金以外にかかる費用のことを、一般的に「諸費用(初期費用)」といいます。

不動産投資の初期費用は、少なければ少ないほど、再投資へのスピードが速くなりますので、なるべく節約したいというのが不動産投資家の願望だと思います。不動産投資を始める際の諸費用・初期費用は、どんな費目があるのか、どのくらいの金額になるのか。細かい点になりますが、不動産投資をこれから始める人には重要な情報なので、詳しく解説していきます。

不動産投資にかかる諸費用(初期費用)とは?

不動産投資で主な諸費用(初期費用)は、次の通りです。(新築不動産投資の場合は諸費用の項目に違いが出てきます)

1 仲介手数料
2 登録免許税
3 司法書士報酬
4 不動産取得税
5 印紙税
6 清算金(固定資産税・都市計画税など)
7 ローン事務手数料
8 ローン保証料
9 団体信用生命保険料
10 火災保険料(地震保険料)

上記のうち、仲介手数料は、取引に不動産仲介業者が入ったときに発生するものなので、売主と直接取引する場合には発生しません。また、ローン事務手数料、ローン保証料も金融機関によって異なるので、詳細はご自身で確かめてください。

ちなみに概算ですが、購入時の諸費用(初期費用)は、物件価格のおよそ8%前後と考えておくとよいでしょう(不動産仲介手数料を含む場合)。大きくは外れないと思います。

不動産投資の諸費用(初期費用)1 仲介手数料

仲介手数料は、不動産の売買契約が成立したときに、売主との間を仲介した業者に対して成功報酬として支払います。なお、不動産会社が不動産投資物件を自ら売主として販売してする場合には、仲介手数料はかかりません。

不動産の売買価格(税抜) 仲介手数料の上限
(1)200万円以下 取引額の5% + 消費税
(2)200万円超400万円以下 取引額の4%+2万円 + 消費税
(3)400万円超 取引額の3%+6万円 + 消費税

例えば、3,000万円の物件を購入しようとした場合の仲介手数料ですが、
3,000万円の物件で計算してみると、上表(3)に当てはまります。

(3,000万 × 3% + 6万)× 1.1 = 105万6,000円

不動産投資の諸費用(初期費用)2 登録免許税

登録免許税とは、登録免許税法に基づき、登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定及び技能証明について課せられる税金です。新たに不動産を所有する際は、所有者移転の事実を明らかにするために所有権の「登記」手続きをしますので、登記手続きに伴って登録免許税が発生します。

不動産投資で物件を取得する場合は、①所有権移転登記 と ②抵当権設定登記 の二つが関係してきます。

参考: No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

不動産投資の登記手続き① 所有権移転登記

売主から買主に所有権が移転する際にする登記は、所有権移転登記を行います。所有権移転の税率は下記の通りです。

課税標準 税率
土地 固定資産税評価額 1.5%(令和5年3月31日まで軽減税率)
建物 固定資産税評価額 2.0%

(参考)未登記建物の所有権保存登記

取得した不動産の建物のが「未登記」の場合には、所有権移転登記ではなく所有権保存登記が必要となります。所有権保存登記は、土地家屋調査士へ依頼し、取得不動産の「表題部」に関する登記(表示に関する登記)を行います。

不動産投資の登記手続き② 抵当権設定登記

不動産投資ローンで物件を購入する場合には、金融機関が当該不動産に抵当権を設定します。抵当権とは、ローンの返済が万が一滞った場合、当該不動産を処分して、融資を行った金融機関が優先的に弁済を行うことができる権利です。

この権利を明らかにするために行うのが、抵当権設定登記です。税率は0.4%。課税標準は、金融機関からの借入金(債権額)となります。また、ローンを完済した時には「抵当権の抹消の登記」が必要となります。

不動産投資の諸費用(初期費用)3 司法書士報酬

登記手続きや登録免許税の納付などを司法書士に代行してもらう場合、不動産登記の申請時までに納付が必要な登録免許税のほか、司法書士へ支払う報酬が発生します。

ちなみに、不動産の登記申請は自ら法務局へ申請することもできますが、登記手続きは複雑なため、司法書士に依頼するのが一般的です。

司法書士報酬額は、不動産会社の仲介手数料のように法律で決まってはいないので、司法書士事務所、司法書士によって報酬が異なります。

司法書士報酬の目安は、取得する物件により幅がありますが、小さい規模の物件であれば1回あたり10万~20万円くらいでしょうか。インターネットで調べてみると、登記の種類別に金額が確認できる司法書士事務所サイトなどをみつけることができると思います。

不動産投資の諸費用(初期費用)4 不動産取得税

不動産取得税とは、新しく不動産(土地と、住宅や店舗などの家屋)を購入・贈与・家屋の建築など、不動産を取得したときに一度だけ課税される税金で、その不動産の所在する都道府県が課す税金となります。

無償や等価交換による不動産の取得でも課税となりますし、登記の有無にかかわらず課税となります。なお、不動産取得税は、物件購入時には発生せず、購入後数ヶ月〜半年後くらいに各都道府県から「納税通知書」が届いてから納めることになります。

(不動産取得税の計算方法)
取得した不動産の価格(課税標準額)* × 税率

* 令和6年3月31日までに宅地等(宅地及び宅地評価された土地)を取得した場合、当該土地の課税標準額は価格の1/2となります。なお、上記の課税標準額とは購入時の金額ではなく、取得した不動産の固定資産税評価額となります。

(不動産取得税の税率)

取得日 土地/家屋(住宅) 家屋(非住宅)
平成20年4月1日~令和6年3月31日まで 3.0% 4.0%

(参考)東京都主税局 不動産取得税 

不動産投資の諸費用(初期費用)5 印紙税

印紙税は、日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書(領収書)など特定の文書に課税される税金です。

不動産投資で必要となるのは、売買契約書と金銭消費貸借契約書を締結するときです。契約書記載の金額により、印紙代の費用が異なってきます。諸費用(初期費用)としては少額な部類ですが、下記の通り軽減措置もあるので、しっかり確認しましょう。

(参考):印紙税|国税庁 不動産の譲渡・消費貸借等に関する契約書

(印紙税の軽減措置)

不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書には、軽減措置が適用されます。不動産売買契約書の印紙税については、こちらが適用されます。

(参考)印紙税|国税庁 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

[令和3年4月1日現在法令等] 平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成される、次の2種類の契約書について印紙税の税額が軽減されます。

 1 土地建物売買契約書などの不動産の譲渡に関する契約書のうち、契約書に記載された契約金額が10万円を超えるもの(第1号の1文書)

 2 建物建築工事請負契約書などの建設工事の請負に関する契約書のうち、契約書に記載された契約金額が100万円を超えるもの(第2号文書)

不動産投資の諸費用(初期費用)6 清算金(固定資産税・都市計画税など)

諸費用(初期費用)としては少額ではありますが、清算金についても触れておきます。物件の所有権が移転する際、売主・買主間で清算が必要な諸費用があります。年に一回課税される固定資産税・都市計画税や、区分マンションの管理費・修繕積立金などです。

固定資産税は、都市計画税も同様に1月1日時点で固定資産を保有している人に納税義務のある税です。仮に6月30日に引き渡しがあった場合、1月1日から6月30日までは売主側の負担、7月31日から12月31日までが買主側の負担となります。

しかし、固定資産税・都市計画税は毎年1月1日時点に固定資産を保有している人に納税義務のある税なので、売主側に納税義務が発生してしまいます。そうすると、7月1日以降の税負担を売主側だけが負ってしまうので、これを清算するのが不動産売買の通例です。

このほかの清算項目としては、区分マンションの管理費・修繕積立金が挙げられます。費用とは言えませんが、引き渡し時の清算項目として、預かり敷金の清算もよく行われますので覚えておくとよいでしょう。

清算額は、不動産仲介業者が直近の課税額などを調べて、日割りで案分してくれます。売買代金の残金と一緒に清算されるのが通例ですので、金額はよくチェックしてください。

不動産投資の諸費用(初期費用)7 ローン事務手数料

ローン事務手数料とは、不動産投資ローンなどで、金融機関から融資を受ける際に支払う事務手数料です。ローン事務手数料は金額が決まっている銀行と、借入金額の1%〜3%で設定されていることが多いようです。金融機関によって異なるので、融資を受ける前に確認しておきましょう。

(オリックス銀行)取扱事務手数料
借入金額の2.20%(消費税込み)以内の取扱事務手数料がかかります。

(スルガ銀行)取扱手数料
融資金額×0.55%(税込)

(要注意)個別対応が必要となる手数料

なお、近年では手数料収入を増やす目的があるのか、不動産融資で「コベナンツ手数料」などの名目で融資額の1%程度を融資実行時に支払うことがあります。見落とすと諸費用の総額に大きな差が出てしまいます。融資実行直前になって発覚することもあるので、融資担当者にきちんと確認しましょう。

※コベナンツとは、融資の契約を締結する際に、契約書に記載することのできる一定の特約事項のこと。

不動産投資の諸費用(初期費用)8 ローン保証料

ローン保証料は保証会社を立てるための費用です。不動産投資ローンでは、借り手が返済できなくなった場合の損失に備えるため、金融機関は保証会社を立てることがよくあります。

ローン保証料の金額や支払方法は金融機関によって異なり、中には不要な金融機関もあります。ローン保証料は、借入時に一括で支払う場合と借入金利に上乗せする場合があります。不動産投資ローンを利用する場合は、ローン保証料の金額や支払方法について事前に確認しておきましょう。

不動産投資の諸費用(初期費用)9 団体信用生命保険料

団体信用生命保険とは、不動産投資ローンの借り手が死亡、または高度障害により返済が困難になった場合に、残っているローン返済を肩代わりしてくれる保険のことです。保険料は金融機関によって異なりますが、借入金利に0.2%程度上乗せされるケースが多いと思います。

また、団体信用生命保険を利用せず、収入保障保険などで代用することも可能ですので、保険料を比較して、保険料負担が少ない方法を選ぶとよいでしょう。

不動産投資の諸費用(初期費用)10 火災保険料(地震保険料)

不動産投資で融資を受ける際には、建物に火災保険を付けるのが条件となるのが通例です。建物の構造・保険金額によって保険料は変わります。また、地震保険を付保する場合は、物件の所在地によっても料率が変わりますので、まずは見積もりを依頼してみるとよいでしょう。

火災保険の加入を検討する場合は、是非とも以下の記事を参考にしてみて下さい。
不動産投資・アパート経営と火災保険・物件購入時の特約とは?

不動産投資の諸費用(初期費用)まとめ

今回は不動産投資の諸費用(初期費用)について解説しました。投資用物件を購入するときは、さまざまな諸費用がかかります。先に述べたように、概ね物件価格の8%程度が妥当なラインですが、不動産自体が高額なので、諸費用もまとまった金額が必要です。不動産投資を始める前に、しっかり自己資金を貯めていつでも物件を買える準備をしておきましょう。

【主な諸費用(初期費用)】
 (諸費用1) 仲介手数料
 (諸費用2) 登録免許税
 (諸費用3) 司法書士報酬
 (諸費用4) 不動産取得税
 (諸費用5) 印紙税
 (諸費用6) 清算金(固定資産税・都市計画税など)
 (諸費用7) ローン事務手数料
 (諸費用8) ローン保証料
 (諸費用9) 団体信用生命保険料
 (諸費用10) 火災保険料(地震保険料)

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2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。