現地を見に行った時の注意点を教えてください|不動産投資100問100答(8)

筆者の不動産投資のコンサルタントとしての体験から、よくある質問に簡潔に答えていく「不動産投資100問100答」シリーズ。今回は第八回として、物件の現地確認について解説します。

今回の質問は、「現地を見に行った時の注意点を教えてください。」というものです。現地確認については、専門家の方がマニュアルやチェックリストを公開したり、動画で教えたりするコンテンツもありますが、実際に素人が完璧にチェックするのは難しいと思います。

今回は、クライアントから相談を受けた際に、筆者が現地確認する際に気を付けていることをお話します。

ChatGPTのアドバイス 現地を見に行った時の注意点は?

筆者の見解をお伝えする前に、例の如くChatGPT先生にこの質問について聞いてみました。先生の見解は以下の通りです。かなりまとまった良いアドバイスです。

初心者が物件の現地確認を行う際に注意すべきポイントを以下にまとめました。これらの点を確認することで、物件の適正評価が可能になり、投資のリスクを軽減することができます。

1. ロケーションの確認

・周辺環境: 物件の周りの環境を確認します。近くに商業施設や公共交通機関、学校、病院などの生活に便利な施設があるかを確認しましょう。
・治安: 地域の治安状況を確認します。昼間と夜間で雰囲気が変わることがあるので、複数回訪れることをおすすめします。
・将来の発展性: 近隣での開発計画やインフラ整備の予定を確認し、将来的な価値上昇の可能性を評価します。

2. 建物の状態

・外観: 建物の外壁や屋根、基礎部分の状態を確認します。ひび割れや腐食、塗装の剥がれなどがないかをチェックします。
・内装: 室内の状態を詳しく確認します。壁や床、天井にダメージがないか、カビや異臭がしないかを確認しましょう。
・設備: 電気、水道、ガス、暖房などのインフラ設備が正常に機能しているかを確認します。また、エアコンや給湯器などの設備が古くなっていないかもチェックしましょう。

3. 構造と安全性

・耐震性: 建物の耐震基準や地震対策が施されているかを確認します。特に古い建物の場合、耐震補強が必要かもしれません。
・火災対策: 消防設備(消火器、火災報知機など)が適切に設置されているかを確認します。
・害虫対策: シロアリやその他の害虫被害がないかを確認します。専門の業者による検査も検討すると良いでしょう。

4. 法的チェック

・建築確認申請: 物件が合法的に建築されているか、建築確認申請書類を確認します。
・用途地域: 物件の所在地の用途地域を確認し、その地域での利用可能な用途や制限事項を把握します。
・境界線: 物件の土地の境界線が明確かを確認し、隣接地とのトラブルを防ぐために境界標があるかをチェックします。

5. 近隣住民の情報収集

・隣人関係: 近隣住民との関係性や過去のトラブルの有無を確認します。住民から直接聞くことも有効です。
・騒音: 物件周辺の騒音状況を確認します。近くに工場や交通量の多い道路がないかをチェックします。

6. 現地訪問のタイミング

・異なる時間帯での訪問: 物件を訪れる時間帯によって周辺環境や交通状況が異なるため、昼と夜、平日と週末に訪れて確認することをおすすめします。
・天候の違い: 晴れの日だけでなく、雨の日にも訪れて、雨漏りや排水の状況を確認します。

7. プロフェッショナルの活用

・ホームインスペクター: プロのホームインスペクターに依頼して、建物の状態を詳しく調査してもらうことも有効です。
・不動産エージェント: 信頼できる不動産エージェントと一緒に現地を訪問し、専門的な視点からアドバイスを受けることも重要です。

これらのポイントを念頭に置いて物件の現地確認を行うことで、物件選びの失敗を防ぎ、より良い投資判断ができるようになります。

いつものように、素晴らしいアドバイスです。ただ、これもいつも通りですが、項目が多すぎて全部を網羅するのはおそらく無理だと思います。

特に、中古物件のオーナーチェンジだと既に入居者がいるため室内を確認することが出来ません。また、取引前なので、敷地の中に入って境界確認なども難しいことがあると思います。

投資物件の現地確認 どこに着目したらよいか?

隣地との境界確定の有無、法的書類の有無など、細かい情報は実際には重要事項説明書を渡されて初めてわかることも多いので、事前の現地確認では、すべてを確認することは出来ないと思います。

とりあえず検討段階での現地調査ですが、筆者は概ね次のようなことを見ています。

①最寄り駅の「駅力」

車社会の地域はこの限りではありませんが、電車通勤がメインのエリアでは、最寄り駅の発展度合い(にぎわい、商業施設の充実)が入居者募集にとても大きな影響を及ぼします。よく「駅力」と言われることもあります。特に初めて訪れる駅については駅周辺を丹念に見て歩くようにしています。駅近くの商業施設の充実度や、乗降者の様子(雰囲気)などは検討材料の一つにしています。

②商業施設の有無

上記①と重複することもありますが、商業施設の充実度もかなり重要視します。物件の近くにコンビニ、スーパー、ドラッグストアが揃っているかは必ず確認します。駅から物件までの途中にあれば理想的ですが、とりあえず徒歩圏にこれらの施設があると安心します。

③忌避施設の有無

忌避施設の有無にも注意します。忌避施設とは、嫌悪感を周囲に与える施設の総称です。あくまでも例ですが、下水処理場・火葬場・刑務所・騒音・大気汚染・悪臭の原因となる施設が該当します。近隣に忌避施設がある場合、入居希望者が内見時に嫌がり検討見送りとなることも大いにあり得ます。忌避施設周辺の物件は安価で購入できる場合があるのですが、どうしても客付け(入居者募集)に不安が生じてしまいます。

④建物の清潔感

中古物件の購入を検討する場合ですが、共用部分の清潔感は結構チェックしています。ことさらにキレイである必要はないのですが、「汚らしくないこと」は重要です。共用部分が荒れている物件は、入居希望者(内見者)から嫌われます。エントランス付近、ごみ集積所、廊下など、共用部分に異変がないか確認するようにしています。

⑤隣地との高低差

隣地との間で高低差がある物件はちょっと怖いです。横浜など坂が多いエリアでは仕方がないのですが、よほど魅力のある物件でない限り筆者は敬遠します。特に隣地と高低差があると、擁壁を作ることになるのですが、擁壁の保守管理・権利関係が面倒になる可能性があります。将来的に擁壁の補修・建替えが必要な際にもめそうだからです。

⑦接道

これも重要です。前面道路の状態によって、最終的な出口(物件の売却)に影響が出る可能性があります。公道であれば問題ありません。私道の場合には、私道の権利関係がどうなっているか、必ず確認します。特に、物件が割安で手に入れられる場合、接道に何かしらのネックが存在することが多々ありました。自分の土地に水道管やガス管などのライフラインを引き込むために、他者が所有している私道の掘削が必要となることがあります。もし前面が私道で、当該私道についての持ち分が無ければ、前面道路の通行・掘削(上下水道やガスの地中埋設管の設置等)に影響が出る可能性があります。

(参考)民法改正と私道の通行掘削について

2023年4月1日、ライフラインを引き込むための私道掘削に関する規程の整備などを盛り込んだ「民法等の一部を改正する法律」が施行されました。これまではライフライン引き込みに関する規定がなく、私道所有者に設備の設置や使用に応じてもらえないときや掘削したい私道の所有者が所在不明であるときなどに、対応が困難となっていた現状がありました。

しかし、今回の改正で設備設置権や設備使用権が明文化されたことから、今後このようなトラブルの解決が図りやすくなります。

法務省民事局 民法改正と「共有私道ガイドライン」の改訂について

※上記の資料によると、通知の相手方が不特定又は所在不明である場合にも例外なく通知が必要(簡易裁判所の公示による意思表示(民法98)を活用)とのことなのでご注意ください。

最終判断は「30年後の自分にとってその土地が魅力的か?」

これはクライアントの皆さんには結構言っていることですが、どうしようか迷っているときに、最終的に30年後、借金を返し終わった後にその土地が手元に残ってうれしいかどうかを考えてもらいます。仮に将来、収益が悪化して賃貸住宅としての経営環境が悪化したとしても、借金を返し終えれば最終的に無借金の状態で土地と建物が残ります。保有期間中の儲けがほとんどない状態だったとしても、30年かけてその土地が手元に残ってうれしいと思えるかどうか、これを最終判断のよりどころにしています。

究極的には、そこに自分が住んでもいいと思えるかどうか。その状況に満足が行くようであれば、たとえ利回りが低くても筆者は購入に反対しません。

これは土地に対する愛着と言ってもいいと思いますが、その人のこれまでの生き方や価値観が関わってきます。自分の実家の近くだったり、住み慣れた街だったり、憧れの町だったり。理由や背景は様々ですが、もしその立地にこだわりがあるようであればそれは不動産投資の対象となり得るものです。

たとえ保有期間中に家賃が下がってキャッシュフローが薄くなっても、「他人のお金(家賃収入)」で借金を返し続けて、最終的に「ほしい土地(物件)」を手に入れたのですから不動産投資としては成功と言えます。そもそも長期投資で考えれば、不動産投資はそれほど負けない投資です。

総括 現地を見に行った時の注意点を教えてください。

・隣地との境界確定の有無、法的書類の有無など、細かい情報は実際には重要事項説明書を渡されて初めてわかることも多いので、事前の現地確認では、すべてを確認することは出来ないと思います。とりあえず検討段階での現地調査ですが、筆者は概ね次のようなことを見ています。

 ①最寄り駅の「駅力」
 ②商業施設の有無
 ③忌避施設の有無
 ④建物の清潔感
 ⑤隣地との高低差
 ⑦接道

・どうしようか迷っているときに、最終的に30年後、借金を返し終わった後にその土地が残って、うれしいかどうかを想像してもらいます。究極的には、そこに自分が住んでもいいと思えるかどうか。その視点で現地を見てほしい。

【参考記事】不動産投資は物件選びが重要!ダメ物件をつかまない選び方【3つのポイント】

The following two tabs change content below.

2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。