新築物件を買う時の注意点って何かありますか?|不動産投資100問100答(9)

筆者の不動産投資のコンサルタントとしての体験から、よくある質問に簡潔に答えていく「不動産投資100問100答」シリーズ。今回は第九回として、新築物件の購入について解説していきます。

今回の質問は「新築物件を買う時の注意点って何かありますか?」というものです。中古物件を買う時と違って、新築物件を買う時にはいくつか注意点があります。中古物件は既に存在している不動産を買うだけですが、新築物件への投資は、未だ存在していない不動産を購入する取引になります。

目に見えないものを買う、というのは恐らく皆さんが想像しているよりも、結構リスクの高い行為です。実際、筆者のクライアントは結構新築物件を買っていますが、やはり注意しないと危ないなという場面は何回もありました。

そこで今回は、新築物件を買う時の注意点をいくつかお話したいと思います。

新築物件「建て売り」「売り建て」の違いと開発リスク

実は一口に「新築物件」と言っても二つに分類されます。「建て売り」と「売り建て」です。

「建て売り」は、予め土地を確保して建物の建設をある程度進めている案件で、多くは建物が完成する前に買い手を見つけて完成とともに所有権を買い手に譲渡する契約になります。一方「売り建て」は、先に候補地を買い手に買ってもらい、それから買い手の責任において建物を建築していきます。

両者の最大の違いは「開発リスク」です。開発段階の物件については、計画通りの建物が建築できるのか、予定通りのテナントが入居するのかといったリスクを有しています。既に建物が完成してテナントも入居している稼働中の物件と比べると、先行きが不透明なため、より大きなリスクを有しています。

開発段階のリスクは、開発準備中のリスクと建設開始後のリスクとに分かれます。

開発準備中のリスク 

・開発許可や建築確認の取得不備
・近隣住民からの反対運動等による事業遅延及び計画変更
・経済環境激変に伴う事業中止

建設開始後のリスク

・事故や自然災害の発生
・土壌汚染の発覚
・埋蔵文化財の出土等による工事遅延及びコスト増加
・人件費や建築資材高騰等によるコスト増加
・施工会社の倒産
・景気変動や需給の変化に伴い計画通りのテナントが決まらないリーシングリスク等。

「売り建て」物件の方が開発リスクがある分、価格は安くなります。昨今、新築物件で資産形成を進めた投資家さんの多くが「売り建て」で儲かっています。

しかし、「開発リスク」が顕在化して、結構なトラブルになったことも多くありますので、「売り建て」案件を取得する場合には、一定の覚悟が必要かと思います。

ChatGPTのアドバイス 新築物件を買う時の注意点って何かありますか?

筆者の見解をお伝えする前に、例の如くChatGPT先生にこの質問について聞いてみました。先生の見解は以下の通りです。

不動産投資で新築物件を購入する際の注意点を以下にまとめました。新築物件には多くの利点がありますが、注意すべき点を理解し、慎重に検討することが重要です。

1. 開発業者の信頼性

実績と評判: 開発業者の過去のプロジェクトを調査し、実績や評判を確認します。インターネットのレビューや口コミ、業界内の評判などを参考にしましょう。

財務状況: 開発業者の財務状況を確認し、プロジェクトの完成に必要な資金が確保されているかをチェックします。財務が健全でない業者は、プロジェクトが中断するリスクがあります。

契約内容: 契約書の内容を細かく確認し、不利な条項がないかを確認します。特に完成遅延や品質に関する保証について詳しくチェックしましょう。

2. 物件の立地と周辺環境

将来の発展性: 物件の立地が将来どのように発展するかを見極めます。近隣の開発計画やインフラ整備計画を調査し、将来の価値上昇の可能性を判断します。

利便性: 公共交通機関へのアクセス、商業施設、学校、病院などの生活に必要な施設が近くにあるかを確認します。

周辺環境の安全性: 地域の治安状況や災害リスク(洪水、地震など)を確認します。安全で安心して住める環境であることが重要です。

3. 物件の品質と保証

施工品質: 使用されている建材や施工方法について確認し、品質が高いかどうかをチェックします。建築基準法を満たしているかも確認しましょう。

アフターサービスと保証: 新築物件には通常、アフターサービスや保証がついています。保証期間やカバー範囲を確認し、万が一の問題に備えます。

設備と仕様: 設備の仕様や設計図を確認し、計画通りに建築されているかをチェックします。竣工後にモデルルームや実際の部屋を確認することも重要です。

4. 費用の透明性と資金計画

総費用の把握: 購入価格だけでなく、その他の費用(税金、管理費、修繕積立金、仲介手数料など)も含めた総費用を把握します。

資金計画: 自己資金とローンをどのように組み合わせるかを慎重に計画します。頭金の額や毎月の返済額が無理のない範囲であるかを確認します。

キャッシュフロー計算: 賃料収入と支出を予測し、キャッシュフローの計算を行います。予想収益が投資目標を達成できるかを確認します。

5. 法的確認と手続き

建築確認申請: 物件が建築確認申請を受けているか、またその内容が適切かを確認します。違法建築物でないことが重要です。

登記手続き: 所有権移転登記や抵当権設定登記など、必要な登記手続きを正確に行うことが求められます。

契約内容の理解: 売買契約書や重要事項説明書の内容を十分に理解し、不明点があれば専門家(不動産コンサルタントや弁護士)に相談します。

6. リスク管理

空室リスク: 新築物件であっても空室リスクは存在します。周辺の賃貸需要を調査し、適切な賃料設定ができるかを確認します。

出口戦略: 将来、売却する際の市場動向や再販価値についても考慮しておきます。売却時の手数料や税金も考慮に入れておきましょう。

保険加入: 火災保険や地震保険など、適切な保険に加入し、災害リスクに備えます。

これらの注意点を踏まえて新築物件を購入することで、リスクを最小限に抑え、安心して不動産投資を行うことができます。

いつものように、素晴らしいアドバイスです。新築物件の開発を一通り経験した投資家さんであれば、実体験を思い起こしながら大きく頷いてしまうことが記載されています。

ただ、おそらく経験が無い方はピンと来ないと思います。コメントの一つ一つに重要なポイントが隠れているのですが、それを理解するには自分が失敗するか自分の周りの人が失敗するなど、痛みを伴わないと本当に理解することができないものです。

どういう風にお伝えしたらいいか筆者も悩んだのですが、悩んだ結果、実際に起こったトラブル事例をお伝えするのが分かりやすいと判断しました。

そこで、以下ではトラブル事例からの教訓という形で、新築物件投資の注意点を解説していきます。

新築物件の注意点(1)建設会社の倒産

新築物件の注意点といえば、まずは建設会社です。ChatGPT先生の指摘事項で一番目に挙げられたことですが、開発業者及び建設会社の信頼性はとても重要、かつ致命的です。

実は、この数年で業界では有名だった建設会社や小規模なデベロッパーが倒産・廃業しています。特にローコストで鉄筋コンクリート(RC)の物件を供給していた建設会社の破綻が有名です。

不動産業者とタイアップして数多くの投資家にロープライスかつ高利回りの物件を供給してきました。しかし、建築資材の高騰や無理な受注も重なり、資金的にも管理的にも現場が回らなくなり、建設現場が止まるようになりました。

業界内でそれらしい噂が広まると、さらに抱えている案件が停滞。二桁に及ぶ建設現場が、工事途中でストップになったそうです。その後、建設会社は敢え無く倒産し、その建設会社に発注していた施主の皆さんは大変な思いをしています。

ちなみに現場が止まっているなどの情報は、ある程度業者間で広まっていることがあります。実際筆者のクライアントも、そこの建設会社が絡んだ開発案件を勧められたことがあるのですが、事前に情報を聞いていたので見送ったそうです。

破綻が発覚したのが半年後だったので、事前情報を知らなければ危なかったと苦笑いしていたのが印象的でした。

筆者のクライアントの事例

ここでお話した建設会社ではありませんが、筆者のクライアントで同様のトラブルに遭った方がいらっしゃいます。

クライアントが自分で見つけてきた建設会社に発注したケースですが、建築途中で建設会社が倒産し、現場がストップしてしまいました。その後、建設を引き継いでくれる建設会社を探すのにものすごい苦労しました。2億円くらいの現場でしたが、余計にかかった費用は三千万円です。

それでも元の収益性が高い事業だったので、一般的な投資物件よりは利回りが高い物件に仕上がったのですが、混乱の当時はものすごいストレスだったそうです。

新築物件の注意点(2)前面道路(私道)所有者とのトラブル

次の注意点が前面道路です。接道が「公道」であればそれほど問題ありません。「私道」の場合に問題になります。特に、土地を安値で手に入れようとすると接道に問題がある場合が少なくありません。

具体的に言えば、前面が「私道」で、かつ私道の持ち分を所有していない場合が問題になります。建物を建築する際、敷地内に上下水道やガスなどの埋設管を引き込む必要があるのですが、前面が私道の場合は私道所有者から「通行掘削の承諾」を得なければなりません。

しかし、共同住宅の建築は意外と私道所有者から難色を示されることがあります。これを無視して開発を続けると、私道所有者との間でトラブルとなり、工事車両の進入や、重機の運搬などで支障が出ることがあります。

最悪なのは、そのことを知らずに土地を買って、後で私道所有者と「通行掘削」に関してもめ事が起こると、現場がストップしてしまいます。

実際、筆者のクライアントでも現場がまさにスタートするところで、私道所有者とのもめ事が勃発し、数か月にわたって現場が止まったことがあります。

本当にこじれてしまうと、私道部分に障害物を置かれて、物理的に進入できなくされてしまったケースがあると聞いています。

(参考)民法改正と私道の通行掘削について

2023年4月1日、ライフラインを引き込むための私道掘削に関する規程の整備などを盛り込んだ「民法等の一部を改正する法律」が施行されました。

これまではライフライン引き込みに関する規定がなく、私道所有者に設備の設置や使用に応じてもらえないときや掘削したい私道の所有者が所在不明であるときなどに、対応が困難となっていた現状がありました。

しかし、今回の改正で設備設置権や設備使用権が明文化されたことから、今後このようなトラブルの解決が図りやすくなります。前述のように私道所有者ともめるリスクは低減したと言えます。

法務省民事局 民法改正と「共有私道ガイドライン」の改訂について

ただし、私道所有者に何も言わずに掘削してよいわけではなく、きちんと相手方に通知する必要があります。近隣の方々とは建物完成後も長い付き合いになりますので、なるべく穏便に済ませましょう。

新築物件の注意点(3)諸費用の抜け・モレ

三点目は、諸費用の抜け・モレです。新築物件の紹介を受けた時に、業者さんから物件概要と共に収支計画を渡されることが多いと思います。しかし、意外と諸費用あるいは建築費に計上されていない支出が発生することがあります。

例えば、次のような費用は注意が必要です。建設会社によって、建物工事に含めるか、諸費用に含めるか、もしくは何も説明しないか、スタンスが分かれるからです。

もし、収支計画にこれらの費用が載っていない場合、念のため建設会社に確認してください。

 ・設計料
 ・水道引込工事費用
 ・外構工事費用
 ・地盤改良費用
 ・オートロック設置費用
 ・コンサルティング料
 (不動産業者からの紹介案件の場合、別途発生することがあります)

新築物件の注意点(4)建築プラン変更

四つ目の注意点がプラン変更です。これはある意味で防ぎようがないところなので仕方ない面もあるのですが、トラブルになりやすいのであえて記載します。

当初提示された建築プランが、建築確認申請時に行政から認められず、やむを得ずプラン変更に迫られることがあります。この場合、ほとんどのケースで事業収益上、マイナスになる変更となります。具体的には戸数が減る変更となります。

例えばアパートの新築計画で、当初14室の1Kを建築する想定だったものの、実際に設計がスタートして、自治体の建築指導課とやり取りして建築確認を申請した段階で「待った」がかかり、12室のプランに計画変更を迫られるケースが該当します。

これはボリュームプラン(※)を作成した設計士(建築士)さんのスキルが不十分だったり、その物件が所在する自治体の条例に関する認識が不十分だったりしたときに起こります。

(※)ボリュームプランとは、その敷地内にどれだけ規模の建物が建てられるかを検討する簡易設計図です。設計士(建築士)は建築基準法、行政による条例や指導要項、敷地形状や高低差などを読み解き、その土地に最大ボリュームの建物を計画します。

同じ敷地面積の中で、一般的に戸数が多ければ多いほど収益性は高くなります。そのため、建築士さん達は一生懸命配置を工夫して、プランを詰め込もうとします。しかし、渾身のプランが行政に認められないことがあります。

その場合、物件の収益性が下がるので、施主(事業主)と建設会社・不動産業者との間でトラブルになります。実際、土地を買ってしまった後に発覚することが多いので、施主としては騙された気持ちになると思います。

ただ、これは開発リスクとして起こり得える事態です。予防するには、プランを持ち込んだ業者が過去に同様のミスを犯していないか、先輩大家さんから評判を聞くくらいかと思います。おそらく、プランの細かいところを素人が気が付いて指摘することは難しいでしょう。

筆者のクライアントでも複数の方がこれに悩まされました。最終的には変更後のプランで納得するしかないのですが、損失を紹介業者に補填してもらえるかどうかは事案によります。

総括 新築物件を買う時の注意点って何かありますか?

一口に「新築物件」と言っても二つに分類されます。「建て売り」と「売り建て」です。「売り建て」案件を取得する場合には、一定の開発リスクを負う覚悟が必要。

新築物件を検討するときに筆者が特に注意するのは、建設会社の倒産、前面道路(私道)所有者とのトラブル、諸費用の抜け・モレ、建築プラン変更、の四点。

建設会社の倒産に関しては、事前情報として建設現場が止まったり、資金繰りの不安が広まったりすることもあるので、業者間情報、あるいは金融機関から情報を集めておきたいところ。

前面道路(私道)所有者とのトラブルについては、民法改正である程度のリスク回避は可能だが、事前通知は必須であるため、なるべく穏便に、良好な関係を築いておくことが望ましい。

諸費用の抜け・モレは、項目がある程度決まっているので、パターン化して覚えておくことが必要。打診する融資額にも影響するので、銀行に相談する前にきちんと建設会社に確認しておくこと。

建築プランの変更については、できればプランを持ってきた業者(あるいは建築士)の評判を聞いておきたいところ。悪評が立っている業者(建築士)もいるので、そのような相手に引っ掛からないように留意すること。

【参考記事】失敗しない不動産投資 新築アパート投資の基本から注意点までを解説

The following two tabs change content below.

2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。