マンション経営と経費【富裕層のための不動産投資を詳しく解説】

マンション経営・アパート経営をする人にとって、経費の使い方はとても興味があるトピックだと思います。
マンション経営を始めると「なるべく払う税金は少なくしたい!」と言って、何でもかんでも経費計上してしまう方がいるようです。

しかし、節税はルールに則って適切に行わなければ「脱税」になってしまいます。
税務調査が入った後、追徴課税が課せられてしまう可能性もあります。

事業規模と比較して、あまりにも経費が過大に見える場合には、借入・ローンを申し込んだ際にも、担当者から経費の使い途を聞かれることがありますので注意が必要です。

今回は、マンション経営・アパート経営における経費の考え方、基本原則とよく相談のある経費についてまとめてみます。

マンション経営では、どこまでが経費になるのか?

虫眼鏡と電卓

税務上のルールとしては、マンション経営・アパート経営で経費として認められるのは「不動産賃貸収入を得るために支出した金額」とされています。
具体的には以下のものが挙げられます。

  1. 不動産に課税される固定資産税や金利
  2. 水道光熱費などの直接費用
  3. 管理費などの一般管理費
  4. マンション経営の勉強のためのセミナー参加費
  5. マンション経営の書籍購入費用
  6. 物件視察のための交通費

あくまでも、マンション経営・アパート経営を通じて不動産収入を得るための支出に限られるのが原則です。この原則を破ると、税務調査が入ったときには、当然に指摘の対象となります。

不必要な経費を野放図に計上しすぎると、要らぬ税務調査を招く可能性もありますので、くれぐれも注意してください。

たとえば、友人と飲み食いをした経費を「接待交際費」で計上してもいいかどうか、私的な名目で使った交通費を「旅費交通費」で計上していいかどうかなどですが、税法上の観点から考えると、マンション経営・アパート経営のための支出でなければ、これらは経費にすることはできません。

税務調査で指摘されやすい経費

電卓と紙幣

マンション経営・アパート経営に限りませんが、税務調査で指摘が多いのが、私的な費用と必要経費との混同です。
マンション経営・アパート経営と関係ない支出、つまり家族で外食したり、旅行に行ったりした費用がターゲットになります。
適切に節税するのであれば、記録をきちんとつけておくことが必要です。

たとえば、不動産の物件視察では、旅費交通費という勘定科目を活用することが多いのですが、物件視察に行って、現地をきちんと見て来たという記録を残せば、仮に税務調査が入ったとしてもマンション経営・アパート経営に関する経費として認められます。
ただし限度はあるもので、その経費が100万円を超えていたら税務署から質問が来る可能性が高いと言われています。

あとは家族で飲食したもの、家族旅行をしたものを交際費で落とそうとする方も多いのですが、原則としてNGです。仮にマンション経営・アパート経営に関わりがあるケース、たとえば業者・管理会社の接待であれば交際費として認められますが、そうでなければ経費とは認められません。

なお、家族旅行を福利厚生費で経費計上することもできません。
役員や従業員が家族の場合は、福利厚生費は法人でも認められません。

税務調査の格好の的になりますので注意しましょう。

車に関する経費

ベンツの運転席

次に、車の減価償却費や維持費用についてのまとめです。
自家用車にかかる費用をマンション経営・アパート経営の経費で落とそうとする場合にも注意が必要です。

そもそも車をマンション経営・アパート経営で100%使っているというのは稀で、実質は自家用車として使っている方が多いのですが、税務申告する場合には、何割をマンション経営・アパート経営のために使って、残りの何割を私用で使った、という按分をしなければなりません。
仮に税務調査が入った場合などには、何割を不動産投資に使ったかということを客観的に証明しなければなりません。

ドライブレコーダーのようなものを車内に設置して走行記録をつけて測定する方法もありますが、面倒なので5割を経費にする、などで簡易的に計算している人が多いです。
ただし、マンション経営8割、自家用2割など、あまりに偏った按分をしてしまうとかえって税務調査などで指摘されやすいのでご注意ください。

前述の通り、実際に物件へ清掃状況を身に行った記録などを残しておくなどの方法が必要です。
繰り返しになりますが、節税のエビデンスとしては実態が重要、ということです。

物件視察費用と事業的規模

ドアのかぎ

物件の視察費用も注意が必要です。
これはマンション経営・アパート経営が「事業的規模」であるかどうかで結論が変わってきます。
それは、経費の考え方が、事業と非事業で異なるからです。

所得税法

(必要経費)
第三十七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

これによると、必要経費とは、当該所得を得るための特定の経済活動と直接の関連を有し、それを行うために、客観的にみて必要な支出をいいます。

国税当局は、マンション経営・アパート経営が「事業的規模」でない場合はそもそも事業ではないため、買わなかった物件の費用に関しては「その所得を得るために使った費用」ではないので、これは経費計上できない、という見解になります。

にもかかわらず、初心者がやってしまう失敗が、不動産所得がゼロであるにも関わらず、多額の物件視察費用(100万円など)を経費計上してしまうようなケースです。
赤字申告をして還付しようという考えなのでしょうが、これは認められません。
不動産所得が事業になっていないからです。

しかし、これが「事業的規模」になると結論が変わります。
事業的規模になると、その事業のために必要となった費用は経費として認められるようになります。

そうすると購入していなくても、不動産事業として物件を見に行くだけで経費として認められる、という結論になります。

家賃や光熱費の家事関連費の按分計上

電卓と家

家賃を事務所経費として計上することについても相談は多いです。

ここで理解が必要なのが家事関連費の概念。
ごく簡単に言うと、家事関連費とは「仕事(業務用)とプライベート(私用)とが混じった費用」のことです。
具体的には、自宅兼賃貸にかかる修繕費、租税公課、損害保険料等、事業・家事共用の電気代、ガス代、水道光熱費等が挙げられます。

そして家事関連費は、原則として必要経費に算入できませんが、家事関連費のうち業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができる場合には、その必要である部分に相当する金額を必要経費に算入できる、というのが大原則です。

ですから、自宅の一部を事業用の事務所として使用している場合は、その部屋の面積で測って、事業と居住の割合を厳格に詳しく分ける必要があります。
実際はそこまで厳格に区分せず、一定の割合を経費にする方が多いと思いようです。

ただ、一般論として、基本的に自宅の半分以上を事業用として使っているとは考えられないので、半分以上を経費計上するのはリスキーかと思います。

また、青色申告と白色申告の違いでも扱いが変わります。
そもそも家事関連費は白色申告について経費計上はできませんので、その点は注意が必要です。

なお、法人名義の場合は社宅の扱いで家賃を経費計上することが出来ます。
ただし、色々細かい要件があるので、詳しいところは税理士にご確認ください。

ゴルフの費用

カップインぎりぎりのボール

ゴルフにかかる費用もよく相談や質問があるものです。
これは「誰と行ったか」が重要なポイントです。

たとえば、ゴルフの相手が顧問税理士や顧問弁護士、管理会社、不動産業者だとかマンション経営・アパート経営と関連しているのであれば問題はありません。
ただ行ったという事は何かしら証明できた方がいいので、プレー履歴などの書類を保管していただいて、今日は「仲間内の遊び」ではなくて「マンション経営に関すると接待」だということを客観的に証明する必要があります。

一方、投資家仲間と一緒にゴルフに行って不動産の話をしたということであれば、投資家仲間とゴルフに行って親睦を深めただけだと判断され、接待経費として認められるのは難しいでしょう。
もし投資家仲間とゴルフに行って経費にしたいのであれば、ゴルフのプレーだけではなくて、そこでローン情報の共有化、土地活用セミナー、土地売買事例の共有化、会議など、マンション経営との関連性を相応に証明できるような議事録を作っておくことが重要です。

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2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。