不動産投資・マンション経営と節税【重要なのは「損益通算」と「減価償却」】

不動産投資・マンション経営と節税【重要なのは「損益通算」と「減価償却」】

マンション経営、不動産投資は節税になる、というのは昔からよく言われていることですが、本当にマンション経営が節税になるのか?
また、どのような仕組みで節税になるのか、についてまとめてみました。

※マンション経営・不動産投資の節税は、(1)給与所得から源泉徴収される「所得税」や「住民税」の節税を指す場合と、(2)「相続税」の節税を指す場合がありますが、ここでは前者「所得税」「住民税」の節税をテーマとします。

重要なのは「損益通算」と「減価償却」

カギと家のキーホルダ

そもそも、マンション経営における節税には3つのパターンがあります。

1.経費を増やす

修繕や接待、セミナー代などマンション経営に関する経費を増やして、不動産所得を減らすことで節税します。

2.控除を増やす

個人であれば、配偶者控除、医療費控除、生命保険料控除、などが典型的な控除項目ですが、マンション経営を事業として営んでいるのであれば、青色申告特別控除を使うのも有効。特にマンション経営の規模が事業的規模であれば、65万の控除を受けられます。

3.税率を下げる

配偶者へ所得を分散したり、法人化するなど、マンション経営からの所得分散することで税率を低くすることで節税します。

このうち、1点目の「経費を増やす」のは、手っ取り早いのですが、利益が残らないので本末転倒な結果になることも多いようです。

しかし、不動産投資・マンション経営の税務においては、「減価償却費」というユニークな経費があるため、確定申告を通じた「損益通算」によって大きな節税を図ることが可能になります。

損益通算と減価償却

電卓と税金

損益通算と減価償却費は、マンション経営・不動産投資における節税で大きな役割を果たします。

損益通算

損益通算とは、確定申告を通じて一定期間内の利益と損失を相殺することです。
損益通算によって、「不動産所得」で生じた赤字を「給与所得」から差し引くことが今回のテーマです。
極論すると、マンション経営による不動産所得の赤字が大きければ大きいほど、節税につながる、ということです。

減価償却

「減価償却」は税務上、購入した資産を決められた耐用年数に分割して費用化すること。
不動産のうち「土地」は減ることはありませんので減価償却はありません。

一方、建物は構造毎に「耐用年数」が決まっており、償却期間が残存する限り、その年の不動産所得から決められた額を「費用」として差し引くことができます。
これを「減価償却費」と言います。

この「減価償却費」は、実際にお金を動かすことなく費用計上するため、税金を安くするメリットが大きいと言われる要因となっています。

以上、整理すると、節税目的のマンション経営・不動産投資とは、マンション経営を通じて「不動産所得」で赤字を作り、損益通算で「給与所得」を減らし「所得税」「住民税」を安くするするスキームです。

そして、「不動産所得」を赤字にするために大きく役立つのが「減価償却費」。
実際にお金を動かさず、帳簿上のみで経費計上できてしまう、「見かけの経費」、魔法のような経費だからです。

実際にお金を使わずマンション経営を始めるだけで不動産所得を赤字にできる。
そして、損益通算で不動産所得の赤字を給与所得から差し引いて、「所得税」「住民税」を圧縮することが出来る。
これが不動産投資、マンション経営を通じた節税の仕組みです。

手元のお金を少しでも多く残すのが節税の目的

電卓とペンとクリップ

ただし、税負担の軽減対策として不動産投資を行うには注意が必要です。
そもそも、税金を節約する目的は「手元のお金を少しでも多く残すこと」です。

にもかかわらず、節税目的の不動産投資・マンション経営を始めると、かえってお金が残らなくなってしまうことがよく起きています。
なぜお金が残らなくなるのか。大事な点をまとめます。

一点目、見かけの「経費」である減価償却費は有限だということ。

減価償却費がなくなってしまえば、税金を節約するメリットはほとんど無くなってしまいます。
不動産所得において、減価償却費以外の経費は、全て実際の支出を伴うものだからです。

二点目、不動産経営自体の収支が悪化しやすいということ。

節税目的の物件は、収益性が悪いことが多いのですが、そういう物件はそもそもキャッシュアウトしてしまいます。

それでもキャッシュアウトした金額よりも税金を安く出来る金額の方が大きければよいのですが、前述の通り、年々税金が安くなる効果は薄れていきます。
そして家賃は築年数が古くなるにつれて下がっていくので、収支は悪化しやすい環境になります。

特に、新築区分マンションを節税目的で購入する場合には注意が必要です。
そもそもキャッシュフロー上の収支が赤字になりやすい物件であるにも関わらず、売る側も買う側も、将来的な家賃下落、空室リスクなどが考慮されていないことが多いからです。

「節税」は儲かった不動産所得を圧縮するために行うのが本義です。
築の古い木造物件を使って積極的に「減価償却」を狙う投資法もありますが、それは出口(物件の売却)もセットになって、きちんと投資の始まりから終りまでを見通せることが前提です。

節税目的で不動産を購入する場合は、本末転倒な結果にならないように気をつけましょう。

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2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。