マンション経営のリスクと不動産投資に必須の対策とは?

不動産投資・マンション経営にリスクはつきものです。
どんなにリスク対策を頑張っても、残念ながら不動産投資・マンション経営のリスクをゼロにすることはできません。

あなたにできることはリスクをコントロールすること!

タワーマンション

ではどうやったら不動産投資・マンション経営のリスクをコントロールすることが出来るのか。
それには、まずどんなリスクがあるのか、不動産投資・マンション経営のリスクを知ることが最初。

次に、そのリスクを軽減させる対策を知っておくこと。この準備をしておくだけでも、マンション経営の安定度は違ってきます。

ほとんどの人にとって、不動産投資・マンション経営の最大のリスクは「儲からないこと」「損をすること」。
それでは、不動産投資・マンション経営において、どんな時に儲からないのか、どういう風に損をするのか。これを知っておけば最低限の対策は打てることになります。

不動産投資 二つの収益とリスク要因とは?

段ボールとカギ

よく株式やFXなどは「ハイリスク・ハイリターン」の金融商品といわれ、不動産投資・マンション経営は「ミドルリスク・ミドルリターン」などと言われることが多いのですが、ハイリスクな不動産投資・マンション経営もあるし、ローリスクな不動産投資・マンション経営もあるので一概には言えません。

不動産投資・マンション経営といえども、やり方によっては「ハイリスク・ローリターン」になってしまうなど、リスクとリターンが見合わないこともあるので注意が必要です。

さて、大半の人にとって不動産投資・マンション経営の目的は収益を上げること。
ですから不動産投資・マンション経営におけるリスクとは、あなたの収益を減少させる可能性と言えるでしょう。

不動産投資・マンション経営の儲け=収益は、インカムゲインとキャピタルゲインの二種類です。
少なくとも、どちらかできっちり儲けないと不動産投資・マンション経営は失敗です。

以下では、インカムゲインとキャピタルゲインに悪影響を及ぼすリスク要因についてまとめてみました。

(インカムゲインのリスク要因)キャッシュフロー悪化

  1. 稼働率悪化 空室発生による収入減少
  2. 家賃滞納 入居者の家賃滞納による収入減少
  3. 賃料下落 賃料下落による収入減少
  4. 修繕費用 老朽化や事故等の修繕費用による支出増加
  5. 金利上昇 金利上昇による支出増加

(キャピタルゲインのリスク要因)資産価値の下落

  1. 築年数の経過 老朽化と残存法定耐用年数
  2. 事件・事故発生 風評被害による価格下落
  3. 融資環境の変動 融資環境の変動による価格下落

次に、それぞれのリスク要因への対策をまとめます。

マンション経営におけるインカムゲインのリスク要因

マンション室内

不動産投資・マンション経営のインカムゲインに悪影響を及ぼす主なリスク要因は以下のものです。「収入減少要因」と「支出増加要因」の2つに分かれます。

これらはマンション経営から得られるはずの毎月のキャッシュフローを悪化させます。
運営手腕や、購入時の調査などである程度対策を打つことは可能です。あなたのマンション経営を安定させるためには、このあたりの対策を講じることが必要となってきます。

「稼働率悪化」

空室が長期化するなど、稼働率が悪化した場合の対策は、「リーシング(新規入居者募集)の強化」と「テナント・リテンション」(長期入居対策)の2つです。これはマンション経営における肝の部分です。

「新規募集の強化」には、内見者数を増やす対策と、内見者の成約率を上げる対策の二つに分かれます。
内見者を増やすには、仲介業者の力を借りて、あなたの物件に内見希望者を連れてきてもらう必要があります。
それは、広告料であったり、謝礼であったり、あるいは営業マンとの信頼関係だったりします。

成約率を上げるには、いかに物件を良く見せるかがポイントです。
古びた使用感が目立つとマイナスです。

壁紙や床、水周りがきれいにされているか、スイッチや電気系統に問題がないかなど、マンション経営者が自分でチェックできるポイントはいくつもあります。
攻めの設備投資をして物件の魅力を高める方法もあります。ただし、この設備投資をする場合に注意が必要なのが費用対効果。

確かに入居者は決まりやすくなりますが、投下資金を回収できなければ本末転倒。
この辺のバランス感覚を身につけられるよう、マンション経営の先達者、先輩大家さんの色々な実践事例の情報収集をしてみることをおススメします。

次が「テナント・リテンション」。
そもそも退去を未然に防ぐのが「テナント・リテンション」。
これは入居者満足度がカギです。

転勤など仕事以外の理由で入居者が退去するのは、ほとんどが今の住まいに対する不満が原因です。
逆に入居者満足度が高ければ、入居者は積極的に転居しようとは思いません。

それでは、入居者はどんな時に今の住まいに不満を持つのか。マンション経営者は、ここをしっかり理解しないといけません。

  1. 家賃が高い
  2. 近隣トラブル(騒音など)
  3. 管理状態が悪い(ゴミ置き場などが汚い、など)
  4. 管理会社の対応に不満がある(連絡が取れない、きちんと対応してくれない)
  5. 設備が不便・老朽化している
  6. 部屋が狭い

どが代表的な不満ですね。

これらを全部つぶすのは難しいですし、部屋の広さなど、どうしようもない要因もありますが、近隣トラブル、管理状態、管理会社の対応、などはマンション経営者である大家さん側の努力で改善は可能なものです。
入居者にとって「今の部屋は家賃に見合っているかどうか」という判断になりますので、是非「今後も住み続けたい」と思ってもらえる物件作りをしていただきたいところです。

また、最近では「更新料」の扱いが重要です。「更新料」の問題はマンション経営者にとっては少し悩ましい問題です。
というのも、「更新料」は貴重なマンション経営者の収入源になる一方で、転居のきっかけになりうるからです。

最近では更新料をゼロとする物件が増えてきました。
マンション経営者にとって、更新料の収入が無くなるのは痛いところですが、空室になるよりはマシ、という大家さんが増えているのが現状です。

「家賃滞納」

「家賃滞納」への対策としては、「予防」と「入居者とのコミュニケーション」の2つ。

マンション経営者にとって、まず重要なのは予防。
「入居者の事前審査」と「滞納保証」の活用が大切です。

「事前審査」では最低限、年収や勤務先を確認することで、毎月家賃を支払い続けてくれるかどうかは分かると思います。
また、なぜ今回引越しをしたのか、出来ればその理由を把握しておくほうがよいでしょう。
前の物件でトラブルを起こして転居する場合もあります。

また「滞納保証会社」を使って滞納リスクをヘッジすることも出来ます。
万が一、入居者が家賃を滞納するようになった場合には、滞納保証会社が家賃を立て替えてくれます。
以前は連帯保証人を契約条件にするのが一般的でしたが、いざ滞納が始まってしまうと連帯保証人も連絡が取れないなど、困った事態に陥ることも多々ありました。

この点、滞納保証会社を使うと、滞納家賃を保証してくれるほか、滞納分の回収まで代行します。
マンション経営者としては実務的にも心理的にも楽になるので、利用する方が増え、実際のマンション経営の現場でも一般的になっています。
ただし、2008年に大手滞納保証会社リプラスが倒産したケースもありますので、保証会社の信用性も考慮しましょう。

「入居者とのコミュニケーション」も大切です。
自主管理しているマンション経営者・大家さんの中には、常に入居者との会話を通じて、「大家さんに迷惑はかけられない」という意識を持たせることに成功している人もいます。

また、もし滞納したら、すぐに連絡して督促すること。
数か月溜まってしまうと回収が難しくなってしまいます。
いつでも連絡を取れるように日頃からコミュニケーションをとっているとよいですね。

「賃料下落」

「賃料下落」に対する最強の対策は、何といっても「リーシングの強化」です。これはマンション経営にとって、永遠の課題でもあります。

賃料が下がるのは主に入退去のタイミング。
つまり「入居者の入れ替え」の時。

逆に言えば、入れ替えがあっても入居募集に強い物件であれば、元の家賃のままでもスムーズに入居付けが決まります。
そうすれば、家賃を下げなくても済みますね。

ですから、マンション経営を成功させるためにも、入居募集に強くなることが重要。
そのためにも優秀な仲介営業マンを捕まえること、そして「お部屋のメンテナンスをきちんとすることです。
具体的な対策については、前述の「空室対策」と一緒ですので、再度ご確認ください。

余談ですが、マンション経営を始める前、物件を買う前の「収支予測」を、もう一段厳しいものにすると確実です。
物件のレントロールを見た時に、これを「潜在賃料」に引き直して、きちんと収益が出ることを確認してから購入を検討するのが重要です。

「潜在賃料」とは「相場でいくらで貸せるか」です。
この潜在賃料と「実際の賃料」との間に乖離が大きいとマンション経営のリスクは高いと言えるでしょう。

入居者の入れ替えがあったときに、急激な家賃の下落が予想されるからです。
特に新築時の家賃は相場よりも1割程度高く設定されます。マンション経営を始めたばかりの頃は、高値家賃で貸せて浮かれてしまう人もいらっしゃるようですが、要注意です。

このプレミアムは5年程度で完全に剥げ落ちてしまうからです。
このときの下落幅が激しいので、予め収支計画に織り込んでおく必要があります。

ちなみに、潜在賃料は賃貸住宅の情報誌や総合情報サイトで簡単に確認することが出来ます。
同じような物件がどのくらいで募集されているか、すぐに分かるはずです。
そして、その相場感をもってあなたが買おうとする物件のレントロールを確認してください。

相場から突出して高い部屋はないでしょうか。
もしそのような部屋があれば、早晩、賃料は大幅に下落するでしょう。
マンション経営のリスクはかなり高いということです。

我々も収益不動産のコンサルティングをするときには、まずこの潜在賃料でレントロールを作り直し、そこからマンション経営の収支計画をつくり投資診断をしてします。

「修繕費用」

「修繕費用」への対策は「良いリフォーム業者を見つけること」と「損害保険によるリスクヘッジ」が大事です。

物件を所有すると、どうしても「定期的な修繕」が発生します。
マンション経営を出来るだけストレスフリーにするためには、安価で仕事が丁寧なリフォーム業者を見つけておくことが大切です。

良いリフォーム業者さんを見つけておけば、入居者の入れ替え時などに修繕が必要になっても、迅速かつ比較的ロープライスで修繕をお願いできるようになります。
さらには、購入前の物件内覧時に同席してもらって、精度の高い修繕見通しを立てることが出来ます。
是非リフォームのパートナー探しをしてみてください。どうやって探したらいいか、とよく質問をいただきますが、いきなり良いパートナーは見つからないものです。マンション経営の先達者、先輩大家さんから紹介してもらうのが手っ取り早いと思います。

次に「損害保険によるリスクヘッジ」ですが、マンション経営をしていると、火災や風災、水災など、思わぬ損害が発生するときがあります。
そういった損害をカバーしてくれる損害保険に加入しておくことによって、うまくリスクヘッジすることが可能になります。

もちろんすべてを保険でカバーすることはできませんが、役立つ特約などもありますので、是非情報収集してみてください。
ちなみに損害保険の知識は非常に重要です。
特にマンション経営に関する損害保険の専門家がいれば是非パートナーとしてチームに組み入れることをお勧めします。

「金利上昇」

金利上昇リスクについては、残念ながら決定的な解決策はありません。
というのも、ひとたび市況が動き、金利が変動すれば一個人では対応できないからです。

対策として、平時からできるだけ金利を下げる努力をすることです。
「金利上昇」への対策は「出来るだけ金利の低い金融機関から借りること」と「自分の属性をよく見せる努力をすること」の二つです。

一点目ですが、そもそも融資を受ける段階で、出来るだけ金利の低い、条件の良い金融機関を選ぶことです。

大事なのは一棟目の買い方。
マンション経営に対して積極的に融資をしてくれる金融機関もありますが、総じて金利が高いのは否めません。初めにイケイケの金利が高い銀行から借りてしまうと、次に他行から融資を受けるのが難しくなる可能性が高いです。
金利が高い銀行で借りてしまうと、他行から見て、あなたの属性が悪く見えてしまうようです。

ですから銀行選びはとても大切です。
融資付けを検討する際に不動産業者からの紹介を受けることもあるのですが、少なからず「借りやすい銀行」「審査の早い(甘い)銀行」に流れているようです。
マンション経営者が借りやすい金融機関は金利が高いことが多いのが現状です。
きちんとした融資知識を持っていれば、入り口の段階から金利を下げることが出来るので妥協しないでいただきたいところです。

二点目、「自分の属性をよく見せる」とどんな良いことがあるか。
それは、マンション経営者であるあなたが金融機関にとって「お金を貸したい相手」「継続的に取引したい相手」になれる、ということ。
多くの場合、不動産投資家・マンション経営者に対する金利は「属性」によって左右されます。

同じ銀行から不動産の購入資金を借りているのに、片方は1.5%、もう片方は0.8%、なんていう話はざらにあります。
それは金融機関が借り手の属性によって、金利の優遇幅を決めているからです。

ということは、あなたが優遇金利を受けられる属性になっていれば、金利が多少上昇したとしても、賃貸経営への影響は少なくなります。

さらに、マンション経営者たるあなたの属性が良い状態であれば、場合によってはライバル金融機関から借り換え提案などが来るかもしれません。
そうすると、逆に金利を下げる交渉がスタートすることもあります。
金利交渉するタイミングは、固定期間満了時の金利見直しや、他行から借り換えの提案があったとき、などです。

マンション経営におけるキャピタルゲインのリスク要因

マンションリビング

マンション経営において、キャピタルゲインに悪影響を及ぼす主なリスク要因は以下のものです。
いずれも資産価値を下落させてしまうものです。

これらの要因が作用して物件価格が下がってしまうと、売却時に損をしてしまうこともあります。
ただし、どれもマンション経営者が自分ひとりでは解決できない要因が多く、インカムゲインの時のように事前の対策を講じることは難しいものばかりです。

築年数の経過(老朽化と残存法定耐用年数)

建物の築が古くなると二つの面で不利になります。

一つ目はハード面。
建物自体が物理的に劣化すること。
通常以上に建物・設備の劣化・老朽化が進んでいれば、買い手に指値の理由を与えることになります。

もちろん、その時の受給のバランス、融資動向によって左右されますが、ぼろい物件の方が価格が低くなるのは理解できると思います。
うまくメンテナンスしていれば、そこまで損傷がひどくならずに、そこそこの状態をキープできる可能性がありますので、良いリフォーム業者さんを見つけておいてください。

二つ目が融資上の理由、残存法定耐用年数です。
一般に古い物件ほど融資期間が短くなります。

【参考】国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表

不動産の融資期間は原則として「法定耐用年数」の範囲内に収めるのが一般的だからです。
例えば木造の法定耐用年数は22年。
築10年たってしまうと、残存法定耐用年数は12年。
そうすると融資期間は最長で12年になります。

ちなみに融資期間が短いと、毎月の返済金額が大きくなるため、マンション経営のキャッシュフローが圧迫されます。
返済比率も高くなるので、融資の審査も通りにくくなります。
だから、買い手は大きな指値をして、出来る限り安く買いたたこうとするのです。

また、古い物件の審査では、修繕費も結構大きく見られるので、自己資金を多く持っている投資家でなければ融資を受けるのが難しくなる傾向があります。
そうすると、買い手の絶対数がぐっと減り、いわゆる「買い手市場」になるため、物件価格(資産価値)は低くなってしまうのです。

事件・事故・災害

事故・事件リスク(風評被害)。ひとたび事故・事件(殺人等)が起こると、その物件は買い手が敬遠してしまうため、物件価格が下落します。
一般的には予防のための対策を講ずることは難しいですが、一部の保険会社(少額短期保険会社)では、入居者の自殺や孤独死を理由とした建物復旧期間中の家賃収入の損失に対して保険金をお支払いするところもあります。

融資環境の変動

一般的に、収益不動産への融資が緩い時期は不動産の価格は上がります。
逆に融資が厳しくなると不動産の価格は下がります。

ちょっと前までは、金融機関がかなり積極的に融資していたので、不動産価格はみるみる上昇していましたが、引き締めが入った途端、上昇トレンドはぱったり止んでしまいました。
次の買い手が見つかりにくくなってしまったからです。

この融資環境の変動はどうにも対策を打ちにくいものです。
あえて言えば、出口を取りやすい物件を買えば、ある程度リスクヘッジできます。

例えば、新築や築浅の鉄筋コンクリート造の物件などです。
鉄筋コンクリート造は法定耐用年数が長いため、次の買い手も比較的見つけやすいというメリットがあります。
ただし、価格が高く、利回りが低い傾向があるため、保有期間中のキャッシュフローは少なくなる点は注意が必要です。

以上、今回は不動産投資・マンション経営の収益性に悪影響を与えるリスク要因と対策をまとめました。

【関連記事】
オーナーチェンジ物件で失敗しないために!物件購入前の注意点と対策
【失敗するマンション経営】借金するのは本当に危険?

The following two tabs change content below.

2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。