あなたは「馬主になりたい!」と思ったことはないでしょうか。
競馬好きの方でしたら、「馬のオーナーになって自分の馬をG1で走らせてみたい!!」そんな憧れを抱いたことがあるかもしれません。
けれど、いったいどうすればいいのか条件がよくわからない、という人は少なくないはずです。
自分はその条件を満たしているのか。
どのくらいの費用や時間がかかるのか。
そしてサラブレッドを所有するには、どんな方法があるのか、などなど。
世間一般のイメージからすると、富裕層のみに許されたステータスで、厳格な条件や資格が設けられている印象があります。
でも実際に条件や資格の詳細をご存知の方は少ないようです。
そこで今回は、馬主の種類や条件についてまとめてみました。
これを読めば、あなたが資格・条件を満たしているかどうか、オーナーになれるかどうかが分かります。
ぜひご覧ください。
「馬主」のステータスとは?
「馬主」というと、中東の大富豪、有名企業のオーナー、芸能人など、錚々たる顔ぶれが揃っているセレブな世界です。
世間的なお金持ち、富豪のイメージでも、高級車、高級住宅街、高級ワインなどと並んでステータスとして認められます。
後述しますが、馬を持つためには、条件・資格が厳格で、正真正銘お金持ちでなければなりません。
逆に言えば、あなたが「馬主」と名乗ると、厳格な条件・資格を満たしたということで、周りからそれ相応のステータスに見えるのは間違いありません。
「でも馬主ってどうやったらなれるの?条件は?」「馬を持つにはどのくらいのお金がいるの?」などの疑問について、今回はJRA(日本中央競馬会)の基準(登録条件)をもとに解説します。
馬主の種類と条件
そもそも、馬主の登録には3つの形態があります。
それぞれに登録条件が違うのでご自身が希望される形態の条件を確認してみてください。
- 個人馬主
個人を馬主として登録するものであり、全体の約85%を占める最も一般的な登録形態です。
現在ほとんどの馬主の方が、個人馬主から馬主ライフをスタートしています。- 組合馬主
3名以上10名以下の組合員がそれぞれ出資し、共同で馬主活動を行うものです。
個人馬主と比較して、組合員各々に必要な所得要件が低いというメリットがあり、仲間内で馬主活動をされたい方に最適の形態です。- 法人馬主
競馬事業を目的とする法人を馬主登録するものです。
その代表者が個人馬主としての登録要件を満たす必要があるとともに、法人の財務内容等も審査の対象となります。
また、法人馬主の代表者は、個人馬主として一定の活動経験を積んだ方でなければなりません。(出典JRA)
馬主登録の要件・条件
馬主登録する要件・条件ですが、年収や資産に絞って挙げると、
- 個人馬主になる条件
所得:過去2ヵ年で1,700万円以上
資産:7,500万円以上(預貯金・不動産・有価証券など) - 組合馬主になる条件
所得:各組合員について過去2ヵ年900万円以上
資産:組合財産として1,000万円以上 - 法人馬主になる条件
個人馬主の要件に加えて、資本金または出資の額が1,000万円以上であること。
条件をもっと細かく見ると以下の通りです。
個人馬主登録の要件(条件)
- 日本中央競馬会競馬施行規程第7条第1号~第13号に定める事項のいずれにも該当しないこと。
- 今後も継続的に得られる見込みのある所得金額(収入金額ではありません)が、過去2か年いずれも1,700万円以上あること。
注釈:
所得金額には、一時的な所得および競馬に関する所得(地方競馬賞金等)は含みません。
継続的に保有する資産の額が7,500万円以上あること。注釈:
資産に含まれるのは、ご本人名義の不動産、預貯金、有価証券(投資信託、債券等を含む)です。なお、保険証券、ゴルフ会員権、海外に所在する不動産、書画骨董等は資産に含みませんのでご注意ください。
また、負債がある場合は資産額からその分を差し引いて評価します。組合馬主登録の要件(条件)
- 組合員数が3名以上10名以下であること。
- 組合員全員が施行規程第7条第16号に定める事項に該当しないこと。
- 組合員全員について、今後も継続的に得られる見込みのある所得金額(収入金額ではありません)が、過去2か年いずれも900万円以上あること。
注釈1:
組合員が軽種馬生産者と認められる場合の所得金額(収入金額ではありません)は650万円以上となります。注釈2:
所得金額には、一時的な所得および競馬に関する所得(地方競馬賞金等)は含みません。
組合財産として1,000万円以上の預貯金があること。注釈:
預貯金は組合名義(代表者名併記)のものが必要です。
また、組合財産に対する各組合員の出資比率は、10%以上50%未満でなければなりません。- 組合員のうちに、個人馬主・法人馬主の代表者又は他の組合馬主の組合員が含まれていないこと。
- 代表者1名が特定されていること。
- 組合契約(組合の意思決定・出資その他の経費負担・組合財産の管理・損益の分配等について定めたもの)が、農林水産省および日本中央競馬会の定める基準に適合していること。
注釈:
別途「組合契約」を提出していただきます。法人馬主登録の要件(条件)
- 法人について
1)資本金または出資の額が1,000万円以上であること。注釈:
法人の財務内容(過去2か年の決算等)も審査の対象となります。- 代表者について
1)施行規程第7条第1号~第13号に定める事項のいずれにも該当しないこと。
2)申請法人の代表権を持つ役員であること。
3)申請法人の資本金または出資の額の50%以上を出資していること。
4)今後も継続的に得られる見込みのある所得金額(収入金額ではありません)が、過去2か年いずれも1,700万円以上あること。
5)継続的に保有する資産の額が7,500万円以上あること。注釈:
所得・資産についての要件は、個人馬主登録の場合と同様です。6)すでに中央競馬の個人馬主であること。
注釈:
法人馬主登録後、個人馬主登録は抹消となります。- 代表者以外の役員について
1)施行規程第7条第14号に定める事項に該当しないこと。参考:
施行規程第7条第1号~第13号に定める事項成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得てない者
禁錮以上の刑に処せられた者[3]
競馬法、日本競馬会法、自動車競技法、小型自動車競走法、モーターボート競走法の規定に違反して罰金の刑に処せられた者
競馬関与禁止者、競馬関与停止者
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則第1条各号に掲げるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
日本中央競馬会の役員・職員
日本中央競馬会経営委員会の委員
調教師、騎手、調教助手、騎手候補者、厩務員
馬主登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
調教師に競走馬を継続的に預託することが困難であると認められる者
競馬の公正を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由のある者
住民基本台帳に記録されていない者
外国人である場合には、外国人登録法に規定する登録原票に登録のない者(本邦外居住者。2009年秋より条件付で認可)(出典JRA)
馬主への道のり・条件 オーナーになるには?
- 馬主登録申請
まずは中央競馬の馬主になるためにオーナー登録の申請。写真や住民票、戸籍謄本、所得や資産について条件を満たしていることを証明する書類を揃えて申請を行います。
申請書類はJRA本部、全国のJRA競馬場のほか美浦・栗東のトレーニング・センターでも受け付けています。申請から登録までには4~5ヵ月程度かかります。
- 競走馬の購入
条件審査に通り馬主となったら次は競走馬の購入です。
牧場で直接馬を購入する「庭先取引」のほか、当歳(0歳)~1歳馬を扱うセール、2歳馬を実際に目の前で走らせて購入する「トレーニングセール」など「セリ市」でも購入できます。
購入する方法は色々ありますが、主なものとしては、公設のセリ市場で売買される市場取引と、売主である生産者と買主であるオーナーとの交渉で値段を決めて売買される庭先取引とがあります。
セリ市場については、例年4月中旬から10月頃にかけて、北海道・青森・千葉・九州で開催されています。 - 馬名登録、競走馬登録、服色登録
レースに出走するためには、競走馬として登録を受ける必要があります。
競走馬登録は、預託先の調教師を経由して美浦もしくは栗東トレーニング・センターに登録料5,000円を添えて申請書を提出して行います。
また、申請の際には、ジャパン・スタッドブック・インターナショナル発行の馬名登録通知書のほか、所有権を確認するために、馬所有念書・印鑑登録証明書・馬匹売買契約書の写し・血統登録証明書等を添付することになっています。
なお、一度競走馬登録された馬名を変更したい場合は、中央・地方・外国のいずれの競走にも未出走である場合に、1回に限り変更が認められます。
[競馬施行規定第3章参照]
この点については、「馬主視点のライフサイクル」として日本馬主協会連合会が可愛いイラスト付きで分かりやすくまとめてくれています。
馬主のメリット(特権)
馬のオーナーとなるメリットをまとめます。
- レース優勝賞金 80%が収入
賞金の配分は、馬主・80%、調教師・10%、騎手・5%、厩務員・5%となっています。例えば有馬記念の賞金(3億円)の場合、
オーナー→1億5000万円
調教師→3000万円
騎手→1500万円
厩務員→1500万円という分配になりますので、1億5000万円の賞金を馬主がもらえます!
- 表彰式(口取り)の参加
愛馬が出走したレースで優勝した場合には、表彰式での口取りに参加することができます。また、騎手がレース中に着用する勝負服のデザインを自分で決めることもできます。
- 馬の命名権
名付け方に一定のルール・制限はありますが、可愛い愛馬の名付け親になれます参考:
日本における馬名登録実施基準
アルファベットなら18字以内、カタカナなら9字以内、かつ最低2文字以上
※国内ですでに登録中の馬名は禁止
※海外の優秀な成績をおさめた馬の名前は禁止
※公序良俗に反する名前は禁止
※商品名やブランド名などは禁止
(名前が連呼されると宣伝になる為) - レースで愛馬に乗る騎手の指名権
オーナーが愛馬に乗る騎手を指名することもできます。とはいえ調教師の判断・人間関係である程度、依頼する騎手というのが決まっており、それも踏まえた上で馬主は競走馬を委託する調教師を決めています。
つまり大抵の場合は馬の事は調教師が決定していると考えて良いといえます。
- 競馬場の馬主席への入場権
競馬場には、オーナー専用の喫煙ルーム・売店・投票所などが設置されています。ここには一般人は入れない、オーナー専用のエリアです。
愛馬の出走するパドックには馬主とその関係者しか入れないので、これもオーナー特権です。
- トレセン入場権(美浦や栗東など)
愛馬がレースに備えて日々鍛錬を行っている、美浦と栗東のトレーニングセンターに入れます。鍛錬を終えてひと息ついている愛馬に会って激励できるのもオーナーならではの特権です。
- 競走馬に関わる人やオーナー同士の人脈
馬主ライフは、さまざまな人々との出会いで構成されます。こうした数多くの人々との連携が、競走馬の活躍を支えていくわけです。
また、こうした人脈を増やしていくことは、馬主ライフにおいて、お金以上の価値を生み出してくれるに違いありません。
- 社会的な地位確立
競馬は古来より高貴な者の嗜み。馬主資格がある=社会的地位が高い証。
日本の競馬のあゆみとともに確立された馬主資格の厳正な審査基準・条件をクリアしたということは、それだけで地位と名誉を約束されたということになるのです。
- 企業広告効果と馬購入代や移動費が経費に
企業名義で馬主になると、まずそれだけでその企業のやっている事業の宣伝になります。また、馬の購入資金や維持費等も広告宣伝費等で経費として落とせます。
さらに、JRA所属なら競馬場が北海道から九州まであるので馬主として交通費や宿泊費を経費で落とせます。
というように、企業名義でオーナーになると節税と広告を兼ねたメリットがあります。
また、個人名でオーナーになったとしても、いまはインターネットで名前検索するとその人がどういう人物か調べられますので、結局は企業の広告宣伝になります。
- 愛馬が種牡馬になった際の種付け料
愛馬がG1勝ちなどの実績のある牡馬の場合、引退後に種牡馬として第二の人生を歩む事があります。この種牡馬入りした場合の稼ぐ金額は、現役時代のレース獲得賞金とは比べ物にならない金額に膨れ上がります!
ディープインパクトの場合、2018年の種付け料は4000万円!年間交配数が100頭だったとすると40億円。
もちろんランニングコストもかかるのですが、それでも大きな収入です。※ちなみにディープインパクトの種付け料は2018年時点で世界最高額です。
優秀な種牡馬でも、500万~1000万くらいが相場。
コストはどのくらいかかるの?
ざっくり言うと、馬を持つためには「馬代+維持費」が必要となります。
- 馬の購入
馬代は勿論、ピンキリですが、高い馬だと何億もする馬もいます。
ここでは、サラブレッドの約30%が取引されるセリのデータのうち、最も多く取引される1歳市場のデータをご紹介します。【平成29年度 サラブレッド1歳市場成績(出典JRA)】
平均価格1,043万円
中間価格453万円
最高価格 2億9,160万円備考1: 価格は税込、取引頭数1,896頭
備考2: 中間価格とは、全取引価格を最低額から最高額まで並べたとき中央にある価格血統を重視するかどうかで値段はかなり変わりますが、平均すると1000万ぐらいが目安と言えます。
- 預託料
そして、もう一つ必要な経費は維持費です。馬の飼養管理にかかる費用は、飼料代、飼育・調教費用等。
馬主に話を聞くと「オーナーになってからが大変だ」といいます。
JRA施設内(美浦、栗東トレーニング・センター)の預託契約は馬主と調教師の直接契約となり、預託料は厩舎によって異なります(1頭1か月60~70万円程度)。
一般的に、購入する競走馬は0~1歳でデビューは2~3歳。
購入した後、デビューまでの2年間は牧場に預けることになるのですが、その間にかかる預託料が一頭当たり毎月10~30万円ほど。
デビューを控えてトレーニングセンターに入厩すると、調教管理預託料が同60~70万円ほどかかるので、競走馬を購入した後も年間数百万円~一千万円ほどの経費が必要となる計算です。
以上、馬主の種類や条件、メリットなどについてまとめました。
よくある質問 馬主と条件について
Q. 馬主になる条件など、よく理解できましたが、やはりそれなりの年収や資産がないと難しいですね。
興味や憧れはあるのですが、私にはちょっと難しいと思います。
一方で「一口馬主」というシステムを耳にしたことがあります。
どのようなもので、どのような条件で参加できるのでしょうか。
A. 一口馬主とは、競走馬に対し小口に分割された持分を通じて出資をする者のことです。
金融商品取引法によって規制を受ける「匿名組合契約」が利用されており、「クラブ馬主」「一口クラブ」ともいいます。
馬主登録されていない者が競走馬に投資することで間接的に馬主となるシステムです。
実際にオーナーになるのと違って、資産背景や年収などの条件は問われず、一般の方でも馬主気分を味わえるので、競馬ファンに人気があるようです。
(一口馬主のメリット)
メリットとしては、厳しい条件・資格をクリアしなくてもオーナー気分を味わえる、それほどお金がかからない、勝ちレースでは口取り記念撮影に参加できる、出資馬見学ツアーや会員限定パーティに参加できる、などの特典があるようです。
本来の馬主のように条件がなく、ハードルが低いので、競馬や馬が好きで、馬のオーナーになりたい、馬の成長を見守りたい、という人には良いシステムかもしれません。
(一口馬主のデメリット)
デメリットとしては、デビューまでが長い、良血馬は一口価格が高い、海外遠征費を会員に請求される、などがあるようです。
Q. 地方競馬の馬主は、JRAとは条件・要件が違うようですが、実際どのような条件・要件が課せられるものでしょうか。
A. 地方競馬の馬主になる条件は以下の通りです。
(とりあえず経済的な条件を抜粋)
1.馬主登録の経済的要件
以下の要件を満たしたうえで、競走馬を所有し継続的に預託することが可能であると総合的に認められるかどうかが審査のポイントとなります。(1)個人
原則として、直近年における所得金額が500万円以上であること。(収入ではなく所得となります)(2)法人
①払込済資本金又は履行済出資の総額が300万円以上であること。
②直近2か年の決算が連続して赤字となっていないこと。
③直近の決算において債務超過となっていないこと。
④法人の代表者の年間の所得金額が、(1)個人の経済的要件を満たしていること。(3)組合
①組合名義(代表者氏名を併記したもの)で300万円以上の定期預金があること。
②原則として、組合員各々の直近年における所得金額が300万円以上であること。(収入ではなく所得となります)
注:一時的に得たものと認められる所得(不動産や株式の売却益、競走用馬ファンドの配当金や中央競馬の賞金など)は算入しませんのでご注意ください。(出典:地方競馬情報サイト)
JRAの条件と比べると、かなり条件が緩和されていると思います。
もし、JRAの基準・条件では審査が通らない、どうしても馬主になりたい、という方は、上記の条件を確認してみてください。
ひょっとしたら地方競馬でオーナーデビューできるかもしれません。
(上位は経済的条件のみ抜粋しています。ほかにも条件がありますのでご注意ください)。
【関連記事】
ゴルフ会員権を買うメリット
2K-online事務局
最新記事 by 2K-online事務局 (全て見る)
- 台風被害が不安です。不動産を持っても大丈夫でしょうか|不動産投資100問100答(16) - 2024年7月29日
- フルローンを出すにはどうしたらいいですか?|不動産投資100問100答(15) - 2024年7月29日
- 当サイト記事の引用、SNSでの紹介、大歓迎です - 2024年6月25日