不動産投資で失敗しないために何を学べばいいですか?|不動産投資100問100答(7)

筆者の不動産投資のコンサルタントとしての体験から、よくある質問に簡潔に答えていく「不動産投資100問100答」シリーズ。今回は第七回として、不動産投資で失敗しないために何を学ぶべきかを解説します。

今回の質問は、「不動産投資で失敗しないために何を学べばいいですか?」というものです。不動産投資のやり方については、先輩大家さんの投資経験談が書籍やブログ・動画でたくさん公開されています。その他、業者さんがプロの目線で書いたもの、自分のビジネスに結び付ける目的で作成された書籍などもあります。

ただ、人によってやり方が違うため、何を参考にしたらいいか分からないという声もあり、実際に筆者に相談に来る方も同様の悩みを抱えていました。そこで今回は、不動産投資を検討する際に最低限何を学べばいいか、筆者の見解をお伝えしたいと思います。

ChatGPTのアドバイス 不動産投資で失敗しないために何を学べばいいか?

筆者の見解をお伝えする前に、例の如くChatGPT先生にこの質問について聞いてみました。先生の見解は以下の通りです。かなりまとまった良いアドバイスです。

1. マーケットリサーチ
不動産投資を行う地域の市場を理解することは非常に重要です。以下の点に注目して学びましょう。

・地域の経済状況
・人口動態と将来の人口予測
・地元の雇用市場と主要産業
・インフラの発展状況と計画
・地域の犯罪率や学校の評価

2. ファイナンスとローンの基本
投資資金の調達方法やローンの仕組みを理解することは、資金繰りやリスク管理に直結します。以下を学びましょう。

・不動産投資におけるローンの種類(固定金利、変動金利など)
・金利と返済期間の影響
・頭金の重要性と適正額
・キャッシュフローの計算方法
・財務諸表の読み方と作成方法

3. 物件の評価と選定
良い投資物件を選ぶためのスキルを身につけることが重要です。以下のポイントに注目して学びましょう。

・物件のロケーションとその評価基準
・物件の状態と必要なリフォームの評価
・物件価格と賃料相場の分析
・近隣の競合物件とその比較
・キャッシュフロー計算とROI(投資収益率)の見積もり

4. 法律と税務の知識
不動産投資には多くの法的規制と税務上の考慮が伴います。基本的な法的知識と税務知識を学びましょう。

・不動産取引に関連する法律(賃貸借契約法、不動産登記法など)
・賃貸契約の基本とトラブル対応
・税制優遇措置(減価償却、ローン利息控除など)
・不動産取得税、固定資産税、譲渡所得税などの各種税金
・法律や税務の変更に対応する方法

5. リスク管理と計画策定
リスクを最小限に抑え、計画的に投資を行うためのスキルを習得しましょう。

・リスクアセスメントとリスク管理の方法
・緊急時の資金確保計画
・投資ポートフォリオの多様化と分散投資
・退出戦略の設計(売却時期と方法)
・投資の短期・長期計画の策定とモニタリング

これらの知識を体系的に学ぶことで、不動産投資の成功確率を高め、失敗のリスクを大幅に低減することができます。始める前にしっかりと準備を整えることが重要です。

このアドバイスに多少肉付けしてコメントをまとめれば、それなりのコラム記事になると思います。とはいえ、項目が多すぎて結局どれを学べばいいか返って分からなくなりますね。

理想はこれら全部を習得していることが望ましいですが、実際そんなことは無理です。だから、まずは要所を押さえる必要があります。

本当に大事なのは「キャッシュフロー」と「出口予測」

上記のとおり、ChatGPTのアドバイスは結構たくさんの項目が列挙されていますが、実際に一番大事ものは何でしょうか?筆者の答えは決まっています。

「キャッシュフロー計算」と「出口予測」です。

なぜこの二つが大事なのか?それは以下の理由からです。

1 キャッシュフローが出ていれば、とりあえず破産することはない
2 出口を予測できれば、最終損益を予測できる

ここをクリアすれば不動産投資は7割くらいOKだと思います。ここを理解できれば儲かる物件なのか儲からない物件なのかを判断する「基準」を持てるので、変な物件は買わなくなります。

ちなみにChatGPTが列挙した項目の中では、「3. 物件の評価と選定」の中にあった「キャッシュフロー計算とROI(投資収益率)の見積もり」が一番近いです。

「ROI(投資収益率)」というと少し物々しいですが、一般の個人投資家レベルであれば、将来どのくらいの価格で物件を売却できるか、出口の想定が出来ればそれで十分です。細かい数字の計算よりも、感覚を身に着けてほしいと思います。

●(参考)筆者のクライアントが初心者だった頃のやり取り

筆者が初心者のクライアントを担当する際、最初にやるのがこの「基準」の共有です。クライアントから、良いと思った物件情報をいくつか送ってもらって、筆者が精査し、それにコメントを返す。この作業を5回くらい繰り返せば、大体目線は合ってきます。

キャッシュフローがどのくらい出て、出口(将来の売却)はどのくらいの想定になるのか、最終利益はどのくらいを見込めるのか。模擬試験に近いかもしれませんが、真剣に探して検討した物件の良し悪しを添削してもらえると物件を見る目が養われると思います。

そもそも不動産投資の失敗とは何か?

そもそも不動産投資の失敗とは何か?乱暴に言えば、不動産投資の失敗は以下の二つと言えます。
 ①資金繰りが破綻する
 ②最終的に不動産投資が損失に終わってしまう

逆にいえば、資金繰りが破綻せず、最終的に利益を残せれば不動産投資は成功です。

仮に途中で
 ・大きな修繕が発生しても、
 ・空室が増えたとしても、
 ・入居者トラブルが発生しても、
 ・税金を多くとられても、
 ・家賃が下がったとしても、

資金繰りを破綻させず、最終的に手元に利益が残れる形で物件を処分(売却)できれば不動産投資は成功です。

「キャッシュフロー計算」と「出口予測」はどうやって学ぶ?

キャッシュフロー計算は結構簡単です。インターネットで「不動産投資 キャッシュフロー計算方法」などで検索すれば参考情報が結構出てきます。とりあえずは税引前のキャッシュフローを理解すればよいと思います。

一方、出口予測はちょっと難しいです。将来の売却価格を正確に予想するのは難しいからです。そのため、筆者はいつも今の融資環境が続くことを前提として売却価格を予測します。

売却価格は融資環境に大きく左右されます。特に築古物件は要注意。融資してくれる金融機関が少ないからです。そうすると、買い手の母数が少なくなるので、必然的に売却価格が下がってしまいます。

出口の予測をするには現状の融資環境を把握していることが必要となります。どのエリアの物件で、どのくらいの規模で、どのくらいの属性であれば融資を受けられるのか。築年数はどこまで、自己資金はどのくらい出さなければならないのか、などを計算し、将来的な買い手の具体的イメージを持たねばなりません。

もう10年以上も前の話になりますが、某地銀が急に「築古木造」への融資をやめたのですが、その際は築古木造物件の流通が一気に停滞しました。そのあおりで廃業になった不動産業者さんもいたくらいです。それ以前に築古物件を買った不動産投資からすると、出口の視点で急にハシゴを外されて随分焦ったことと思います。

それでは、出口については、どのように学べばよいのか。以前書いた記事があるので以下にリンクを掲載します。

【参考記事】不動産投資の出口戦略 物件の売却価格を予測するには?

該当する部分を抜粋してお話しますが、不動産投資の融資については次の2段構えで理解しておくとよいと思います。

(1)まずは原則的な融資を覚える

まずは、原則的な融資基準を押さえておきましょう。王道の融資条件と言えます。

・融資期間: 法定耐用年数 - 築年数

築10年の木造の場合、法定耐用年数22年から10年を引いた12年が融資期間

・融資金額: 物件価格の9割

物件価格8割までとする銀行も多いのですが、投資効率を考えるとあまり望ましくありません(あくまでも筆者個人の見解です)。出来る限り9割の融資を実行してくれる銀行を探したほうが良いと思います。

・金利

属性や物件評価にもよりますが、大体以下のような金利水準になると思います。
   都銀の場合 0.7~1%台前半
   地銀の場合 1%台前半~2%
   信金・信組 2.5%以上

(2)不動産投資に積極的な金融機関を探す

次に、少し特殊ですが、不動産投資に積極的な金融機関の情報を集めましょう。不動産投資に積極的な金融機関は、前述(1)の原則的な融資基準のどこかを緩和しています。

具体的な例でいえば、スルガ銀行・オリックス銀行あたりです。この2行は融資期間の原則を緩和して、法定耐用年数を大きく超える融資期間を設定するため、キャッシュフローが出やすくなり、結果、多くの不動産投資家が融資を受けることが出来るようになりました。

この2行以外にも、信金やノンバンク系の金融機関もあり、いずれも少し特殊な条件で不動産に融資してくれます。この手の情報は、インターネットで小一時間探すとあれこれ出てきます。

あとは先輩大家さんのセミナーや勉強会などに参加してみて、実際にどの金融機関でどのくらいの条件で融資を受けられたのか情報を集めてみるとよいでしょう。

総括 不動産投資で失敗しないために何を学べばいいですか?

・不動産投資には覚えたほうがいい知識がたくさんあるが、失敗しないために覚えておくべき事項は「キャッシュフロー計算」と「出口予測」の二つである。

・この二つが大事なのは(1)キャッシュフローが出ていれば、とりあえず破産することはない(2)出口を予測できれば、最終損益を予測できる、この二点が理由である。これを理解できていれば、変な物件を買うリスクは極めて低くなり、不動産投資で失敗しにくくなるからである。

・キャッシュフロー計算を学ぶには、インターネットや書籍で関連情報をいくつも参照すれば理解できる。それほど難しくない。

・出口予測については、前提条件として「融資知識」が必要となる。融資知識を身に着けるには、原則を理解し、そのうえで特殊な銀行(不動産投資に積極的な銀行)の情報を把握することが必要。

・情報を集めるに当たっては、先輩大家さんのセミナーや勉強会などに参加してみて、実際にどの金融機関でどのくらいの条件で融資を受けられたのか情報を集めてみるとよい。

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2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。