なぜ富裕層ほど不動産投資、不労所得に騙されてしまうのか?解説

今回のテーマは富裕層の不労所得。不労所得とは、「自分の労働によらない所得」のことです。通常の所得は、自分の労働の対価として得るものが大半ですが、不労所得は労働することなしに得られる所得です。

しかし「不労所得」は、それをネタにした詐欺が横行し、富裕層も少なくない被害を受けているのが現状です。また、特に不動産投資は不労所得を生み出す手段として注目されますが、動かす金額が大きいほか、物件の取得・運営・税務など幅広い知識を必要とするため、騙されたり失敗したりする話もよく聞こえてきます。そこで今回は、「なぜ富裕層ほど不動産投資、不労所得に騙されてしまうのか?」をテーマに、不労所得・不動産投資と、富裕層が騙される背景について解説していきます。

目次

そもそも不労所得とは?

不労所得とは、一言で言えば、「労働によらない所得」のこと。労働という対価をなくして得られる不労所得は、老若男女を問わずみんなが憧れる収入です。たとえば、以下のようなものがイメージしやすいでしょうか。

(1)投資商品による配当金・金利収入
(2)不動産投資による賃料収入
(3)ブログなどによるアフィリエイト・広告収入
(4)写真、動画、イラストなどの使用料による収入
(5)本・電子書籍の出版による印税収入

しかし不労所得は、あまりにも言葉が独り歩きしすぎて、怪しい詐欺・詐欺まがいや、全く再現性のないノウハウなどが世の中に蔓延し、被害に遭う人も少なくありません。

不労所得というものは、実は何もしないでも収入が得られるものではありません。不労所得を生み出す仕組みを作るために、最初のうちは手間がかかったりお金がかかったりします。不労所得を生み出すには、大きく3つのパターンがあります。

(不労所得を生み出す方法1)保有資産を活用する

まずは、金融資産や不動産などを活用して不労所得を得るものです。まとまった資金が用意でき、さらに株式投資などの知識がある方は、金融資産を活用して投資を行う方法で不労所得を構築することが向いているかもしれません。また、資産として土地・建物などをすでに所有している場合には、不動産投資による不労所得を狙うのもおすすめです。

具体的な不労所得の例ですが、金融商品の場合は、株式投資による配当金、金利収入など。不動産の場合には、不動産投資による家賃収入、駐車場経営による賃料収入などがあげられます。

(不労所得を生み出す方法2)自分のコンテンツを活用する

二つ目は、ブログや動画など自分でコンテンツをつくりだし、それを活用して収入源とするパターンです。文章を書いたり動画・写真を撮影・編集したりするのが得意な方、コンテンツの独自性に自信のある方、表現力に自信がある方、インターネットマーケティングに詳しい方などにおすすめの方法です。作り上げるまでに労力・時間がかかりますが、コンテンツが陳腐化するまでは継続的に不労所得を得ることができます。

ここで得られる不労所得の具体例ですが、コンテンツによる権利収入や、広告収入が該当します。ブログやYouTubeによる広告収入、アフィリエイト収入、本や電子書籍の出版で得られる印税、ライセンスなどの権利収入が挙げられます。

(不労所得を生み出す方法3)自分が働かなくてもいい仕組みを作る

ビジネス感覚が必要な分野ですが、一つのビジネスを立ち上げた後、それを誰にでもできるようにマニュアル化・システム化して実作業を第三者に任せるという方法です。高度なスキルが必要ですが、高いリターンが望める不労所得です。

たとえば、民泊などの宿泊ビジネスを立ち上げた後、顧客対応(お客様メッセージのやり取りなど)を代行業者に任せたり、室内の清掃を清掃業者に任せたりすることがこれに該当します。第三者に任せることで、自分がオペレーションの中に入らず、自分の労働がなくても収益が上がる仕組みが出来上がります。ここから得た収益も不労所得と呼べるものです。

(参考)不動産投資は資産活用と仕組みづくりの両軸

不労所得を生み出す方法として3つの方向性を解説しましたが、それぞれの要素を包含する投資もあります。例えば上場企業オーナー。資産(資金)を活用しながらビジネスを立ち上げて、優秀な人材を集めて自分が働かなくてもいい仕組みを作る。最終的には、創業者が配当から多大な配当収入(不労所得)を得る、というのは非常に夢のあるサクセスストーリーです。

不労所得で何かと話題になる不動産投資は、保有資産を活用しながら、仕組みづくりを行うビジネスモデルです。不動産投資の出発点は物件取得。そのためにはある程度の自己資金が必要となります。限られた資金をレバレッジ(ローン)を使いながらいかに効率的に投資効果を得るか、というのはまさに資産活用の観点から不労所得を作り上げるアプローチです。

一方、不動産投資は物件を買ったら終わりというわけではなく、物件の稼働率を維持・向上させることも必要となります。そこには、管理会社や税理士・建設会社(リフォーム会社)をアウトソーシング先として使うことが必要となってきます。

実際、成功している不動産投資家の話を聞くと、やはり頼りになる税理士、リフォーム業者、管理会社を見つけているようです。そのため、不動産投資で成功するためには、自分のチームを作って、自分が直接働かなくてもいい仕組みを作ることも重要と言えます。

このように不動産投資は、資産活用の視点と共に、仕組みづくり(チーム組成・マネジメント)の両軸で取り組む必要がある投資と言えます。これから不動産投資を考えている方は、ぜひこの観点で情報を収集してください。

「不労所得」「不動産投資」に詐欺・詐欺まがいは付き物?

「不労所得」といえば、心配なのが詐欺などの被害に遭うこと。「不労所得を作る方法」「寝てても簡単に儲かる方法」という触れ込みで、詐欺・詐欺まがいが横行しているのも事実です。

ちなみに、「たった〇〇するだけで・・・」は典型的な詐欺・詐欺まがいに多く見られるキャッチコピーです。たとえば以下のようなものがあります。不労所得ネタの詐欺だけではありませんが、消費者庁ウェブサイトから抜粋したものです。

『財産分野の注意喚起(消費者安全法に基づくもの)』(消費者庁ウェブサイトの情報から抜粋)

「超簡単『スマホで錬金術』」、「検索=報酬を実現した画期的なシステム」
「まずは2日で驚くほど簡単に10万円稼いでいただきます」
「ゲーム感覚で毎日3万円稼げる」
「在宅スマホ副業で7日で20万円稼げる人続出中!」
「誰でもたった1分で1万円の現金をラクラクGET!」
「スマホをタップするだけでお金が稼げる」

相手が全く興味のないものを売るのは難しいですが、「不労所得」は多くの人にとって魅力的です。不労所得をネタにすれば、とりあえず話は聞いてもらいやすいので、騙すほうも騙しやすい。その意味で、「不労所得」には、詐欺・詐欺まがいは付き物と言えます。

不労所得の落とし穴 不動産投資も注意が必要

また、「不労所得」を生み出す手段として「不動産投資」もよく話題になりますが、不動産投資も注意が必要です。「不動産投資」は、一般サラリーマンが富裕層にのし上がるための手段として、大変なブームが巻き起こりました。そもそも不動産投資は、家賃収入(インカムゲイン)と売買差益(キャピタルゲイン)の両面で見なければなりませんが、きちんと不動産投資の基礎知識を学ばなければ、物件の収益性を適切に判断できず、簡単に騙されてしまいます。

不動産投資で騙されるケースとしては、買い手(投資家)に知識がないのをいいことに、明らかに瑕疵のある物件をつかまされる場合、儲からない物件を平気で進められる場合などがあります。本当に悪質なケースだと、入居者の偽装工作まで行ってオーナーを騙すような業者も残念ながら存在します。いずれも、「不動産投資 失敗」などのキーワードで検索してみると、一攫千金狙い、不労所得狙いで不動産投資を始めた方々の色々な失敗談を見ることができます。

不動産投資の成否の7~8割は物件の購入段階で決まってしまいます。言い換えれば、物件選定を間違えなければ不動産投資で失敗する確率を低くすることが可能なのです。不動産投資で騙されないためには、物件を買う前に、きちんと不動産投資の知識を身に着けることが必要です。そのためにも、不動産投資経験者から話を聞いたり、きちんとした不動産投資のアドバイザーをつけて相談できる体制を作ることが重要です。

「不労所得」「不動産投資」富裕層が騙されやすい投資商品の特徴とは?

実は、富裕層が騙されやすい投資商品には特徴があります。不労所得や不動産投資に限りませんが、総じて言えるのが、素人では情報収集が難しい投資商品。これは失敗の確率が非常に高くなります。きちんとしたアドバイザーを見つけることができれば、失敗の確率を抑えることができますので、もし投資を検討するのであれば、慎重に専門家を探しましょう。

(富裕層が騙されやすい投資商品1)目新しい投資商品

まず注意すべきは、世に出回っていない目新しい商品。この手の商品は、素人目には非日常的で斬新に映るため、面白半分で話に乗る方も多いのですが、近くにきちんとした知識や情報を持っている人がいない限り、情報ソースは話を持ち掛けた人間(営業マン)だけ。都合の良い情報しか開示しないでしょうから、簡単に騙されてしまうことになります。

例えば、数年前に仮想通貨が流行った時期を思い出していただきたいのですが、本当に儲かるものもありましたが、それと同じか、それ以上に詐欺が流行りました。これも、真っ当な情報ソースがしっかりあれば被害はもっと少なかったでしょうが、まだ仮想通貨という新しい仕組みが理解・定着される前だったことが背景にあると思います。

(富裕層が騙されやすい投資商品2)他人が運営する事業への投資

ビジネス経験のない投資家や、手っ取り早い儲け話が好きな投資家がよく騙されるのが、いわゆる出資金詐欺。ポンジ・スキームとも呼ばれます。

魅力的に見えるビジネスモデルを語って言葉巧みに出資金を集めつつ、「自転車操業」的な分配を行って投資の実績を装い、多くの投資家の出資金を詐取する悪質な詐欺スキームです。

本来ならば、集めた出資金を運用し、出た利益を配当金として支払うべきですが、ポンジ・スキームの場合、そもそも事業の実態は存在せず、新規入会者から新しく得た出資金の一部を以前からの投資家への配当金に充当します(配当の偽装)。

それを繰り返していくと、いずれ配当金が工面できなくなり破綻しますが、その結果、後から参加した出資者ほど配当金を受け取る機会が少なりなり、損害は大きくなります。一般的に、最後の頃の出資者のほうが、人数としては割合が多くなります。日本でも、安愚楽牧場事件など、社会問題としてニュースに取り上げられることもあります。

また、類似の形態として、「海外積立投資」の形をとることもあります。例えば、100万円投資して、毎月5%の利回りで、毎月5万円利益が出る、というものです。毎月分配型の投資信託のように見せてきます。

いわゆるポンジ・スキームの手口と同様、投資家から集めた資金は、実際には運用はしておらず、各出資者から集めたお金を分配に充てているだけで、いかにも利益が出ているかのように見せかけます。最初のうちは分配金が支払われているので、「ハイリターンの不労所得だ!」と喜ぶ方も多いのですが、1年くらい経つとお金が支払われなくなります。

(富裕層が騙されやすい投資商品3)内容の理解が難しい商品

内容の理解が難しい商品は、騙されやすい投資商品の代表格。例えば、複雑な仕組みのデリバティブ、最終的な収支計算に高度な知識を必要とする不動産投資、節税効果のある保険・太陽光発電設備など、注意が必要なものは多々あります。

例えば、上場株式の短期売買であれば、投資の成否を判断するのは簡単です。買った時よりも高く売れば、投資は成功と言えます。

一方、不動産投資の場合、キャピタルゲイン(不動産自体の値上がり・値下がりだけでなく)のほか、インカムゲイン(保有期間中に発生した家賃収入、運営経費)、節税効果(減価償却費による所得税の節税効果)を総合して判断することになります。そうすると、不動産運営に関する知見に加えて、税務に関する知見も必要となります。

不動産投資など、一見すると物件を買ってから一定額の不労所得が毎月入ってくるように見えますが、不動産の価格変動、税務的なメリット(デメリット)まで総合してみると、不労所得どころか、損失を生む不良物件だった、なんてこともあります。

このように、一見して投資の成否が分からないものは、営業マンが投資家を煙に巻きやすく、騙しやすい商品なので、アドバイザーをきちんとつけるか、腰を据えて知識の習得を目指すことが必要です。

「不労所得×不動産投資」なぜ富裕層ほど騙されてしまうのか?

前述のとおり、「不労所得」「不動産投資」には、詐欺など騙されるリスクが多分に存在するものですが、なぜか富裕層ほど騙されてしまう現状があります。なぜ富裕層ほど「不労所得」や「不動産投資」で騙されてしまうのでしょうか。

(富裕層が騙されやすい背景1)「富裕層」は美味しいターゲット

お金持ちや地主と聞けば、多くの人が「警戒心のかたまり」「人間嫌い」などのイメージを持つ人は少なくありません。にもかかわらず、富裕層が騙されたという話をよく耳にするのは、営業マンからのアプローチ件数の違いと、一回当たりの被害額が大きいことが背景にあります。

身も蓋もない言い方ですが、「富裕層」は騙す側から見ると実入りが大きい、いわば美味しいターゲットです。これは、富裕層が騙されやすい(騙される件数・被害額が大きい)ことの根本的な要因となります。

一般人なら数十万円くらいを巻き上げるのがせいぜいですが、手元資金が豊富な富裕層は数百万円単位でお金を軽く引き出せます。しかも、警戒を解いて懐に入ってしまえば、大掛かりな投資話だと数千万円、数億円にも及ぶ投資話にこぎつけることも可能。

これだけ実入りが多ければ騙す側も必死です。同じ騙すなら、実入りが多い方がやりがいもあるでしょうし、だから、あれこれ知恵を使って全力で騙しにかかります。

営業はある意味で確率論。セールスされる頻度は、騙されてしまう確率の高さに比例します。たとえセールスの成功率が0.01%であっても、1万回のセールスを受けると1回はセールスが成功してしまうことになります。

残念ながら、世の中には富裕層のリストが売買され営業会社などに出回っています。そのため、営業マンは富裕層を特定して、電話、DM、直接訪問など、あらゆる手段でコンタクトを取ってきます。

そして彼らは海千山千のセールス猛者。人情に訴える人もいるでしょうし、理路整然とプレゼンする営業マンもいるでしょう。どれがあなたの心の琴線に触れるか分かりません。厳しく警戒している富裕層も多いのでしょうが、やはりお金を持っているが故に、狙われやすいのも富裕層の宿命といえます。

(富裕層が騙されやすい背景2)富裕層は心のスキを突かれやすい

富裕層には、いくつか特有の「心のスキ」というものがあります。交渉慣れしていない富裕層では、このあたりのスキを営業マンにうまく突かれると、コロッと騙されることがあります。たとえば、次のようなケースには注意が必要です。

(1)成り上がり系富裕層(ついつい気が大きくなる)

もともと慎重だった人でも、手元にお金があると気が大きくなってしまいます。特に、株やFXなどの投資で急激に財を成したような富裕層は、この傾向が見られます。資産に余裕があるが故に気が大きくなり、警戒心が薄れ、面白そうなもの、目新しいもの、興味が出たものに飛びつきがちです。

また、気が大きくなってくると、謙虚さを失うことも多く、失敗にルーズになりがちです。そもそも数千万~数億円ものお金がある富裕層にとっては、100万円程度は失っても致命的なダメージにはなりません。しかし、失敗にルーズな方は、一回の失敗では反省せず、同じような失敗を何度も繰り返す可能性が高いものです。騙すほうからすると、何度も騙されてくれる美味しいお客様です。

(2)相続リッチ系富裕層(野心・功名心に付け込まれる)

親の財産を引き継いだ相続リッチ系の富裕層の方の中には、「自分の代で資産をもっと大きくしたい」「功績を上げたい」という功名心をお持ちの方もいらっしゃるようです。そして、そこを突かれると、ついつい要らない投資をしてしまいがちです。

この手の富裕層は見栄を大事にするので、投資するものにも耳ざわりの言いものが受けます。革新的なビジネスモデルをネタにした出資話、目新しい投資商品(実はリスク高い)が効果的。なまじ資産を持っているからこそ、すぐに投資できるのが逆に厄介なところです。熟練営業マンのトークは巧妙です。心のスキに付け込まれないよう、注意していく必要があります。

実は騙されやすい?「不動産投資×不労所得」の注意点とは?

ここまで富裕層が騙される背景、騙されやすい投資商品の特徴をお伝えしましたが、ここで不動産投資についてもう少し詳しく解説します。不動産投資は、実際に成功して大きな資産を積み上げている方もいらっしゃいますが、他方で不動産投資は、騙された、失敗した、という人も少なくありません。

実は不動産投資には、素人の投資家が騙されやすい理由があります。それは、キチンとした知識を持たないと、結局「儲かったのか、儲かっていないのかよくわからない」という事態になってしまうことが背景にあります。一体なぜそんなことになってしまうのでしょうか。以下では、その点について少し詳しく解説します。

(「不動産投資×不労所得」で騙されやすい理由1)十分な知識を持つ投資家が少ない

不動産投資で騙されやすい理由の一つ目、それは投資家に十分な知識がないことです。ほど、「内容の理解が難しい商品」は詐欺に遭いやすいとお伝えしましたが、不動産投資はまさにこの典型。不動産投資は収益の構造が、キャピタルゲインだけでなく、インカムゲイン、さらには節税効果なども加わる投資商品です。このため、最終的に得したのか、損したのかを判断するには、高度な知識が必要となります。

しかし、不動産投資を始めた人、これから始めようとした人のうち、きちんと「儲かる・儲からない」を判断できる知識を持った人はごく少数です。ここに騙す側の付け入るスキがあります。騙されないためにも、実際に不動産を買う前にいくつか把握しておかなければならないことがあります。

(1)不動産投資×不労所得で失敗しないポイント 潜在コストの把握

まずは潜在的なコストを把握すること。相場よりも利回りが高い物件を買ったつもりが、蓋を開けてみると多額の修繕費が発生したり、空室期間が長期化してしまったり、賃料下落が大きかったりすることがあります。コンマ5%程度の利回りの違いは一気に吹き飛びます。

(2)不動産投資×不労所得で失敗しないポイント 資産価値変動の予測

次は資産価値の変動への注意。物件を高値掴みしてしまうと、物件売却時に買ったときよりも大幅に価格が下落していることもあります。一見、家賃収入が入り、収益がきちんと出ているように見える物件でも、資産価値の下落が顕著であれば、キャピタルロスがインカムゲインを上回り、最終的には損失になってしまうので要注意です。

(3)不動産投資×不労所得で失敗しないポイント 節税効果の試算

あとは節税効果の見通しをしっかりすること。不動産はよく「節税目的」で取引されることがあります。節税効果を期待して不動産投資をする場合、損益計算はさらに複雑で、不動産保有前後の所得税率を比較することや、将来的な不動産の売却計画(売却の時期や、想定売却価格の検証など)、売却時の譲渡所得に対する課税まで考える必要があります。

このように、不動産投資が儲かるかどうかを適切に予測するためには、不動産運営、不動産相場、税金の知識が必要となります。しかし、知識の幅も広く、それなりに経験も必要なため、習得するのは一朝一夕にはいきません。そのため、不十分な知識しかもっていない人が大半と言えます。これが、不動産投資が騙されやすい背景です。

以上のようなことは、不動産投資を実践している先輩投資家や、不動産投資を専門とする税理士などから正しい情報を得ていくことで予防することができます。有象無象の即席コンサルタントから誤った情報を得て、そのまま実践すると、とても痛い目に遭いますので、十分注意してください。

(不動産投資×不労所得で騙されやすい理由2)不動産投資は損得がすぐにわからない

不動産投資で騙されやすい理由の二つ目は、不動産投資は損得がすぐに分からないことです。不動産投資は、投資の成否が確定までに長い時間がかかります。具体的には、物件を売却するまでは、不動産投資の最終損益は確定しません。当然、数年、あるいは数十年単位の時間がかかります。

そのため、ろくでもない物件を高値掴みさせられても、詐欺・詐欺まがいと気づくのに時間がかかってしまいます。仮に10年後に「おかしな物件を買わされた」と気が付いても、その頃には、おそらくそれを売りつけた人間はどこかに行っているでしょう。責任追及は難しいはずです。いわゆる「売り逃げ」というやつです。

しかも、誤った情報を故意に流して契約に誘導したり、逆に故意に情報を隠したりした場合など、明らかな売り手あるいは仲介会社に詐害行為があれば別ですが、不動産売買契約自体が有効に成立している以上は、仮にろくでもない物件を買ってしまったとしても、それは投資家の自己責任。物件の引き渡しを済ませているのであれば責任追及は困難です。

騙す側からすると、気づかれるのに数年の時間がかかり、なおかつ買い手に知識もないようならば言いくるめるのも簡単。法律的にも詐欺罪などには当たらない、しかも仕組みが複雑で、損したのか得したのか、投資家も営業マンもよくわからない。こんなカオスな状況なので、売主も仲介業者もやりたい放題。だからこそ、不動産投資を始める際には、自己防衛のためにきちんと知識や理論を身に着ける必要があるのです。

「不労所得」「不動産投資」まとめ 富裕層が騙されないために

さて、不労所得や不動産投資にまつわる詐欺・詐欺まがいに関する手法や背景の情報をお伝えしました。以下で少しおさらいすると、

・不労所得とは、「労働によらない所得」のこと。労働という対価をなくして得られる不労所得は、老若男女を問わずみんなが憧れる収入形態といえる。

・不労所得を生み出すには、大きく3つのパターンがある。保有資産を活用すること、自分のコンテンツを活用すること、自分が働かなくてもいい仕組みを作ること。

・他方、「不労所得」は多くの人にとって魅力的に映るため、不労所得をネタにした詐欺などが多いのも事実。その意味で「不労所得」には、詐欺・詐欺まがいは付き物と言える。

・「富裕層」は営業マンからターゲットにされやすいので詐欺の件数も多くなる。また、富裕層特有の心のスキをうまく突かれると騙されやすい。気が大きくなりがちな「成り上がり系富裕層」と功名心が強い「相続リッチ富裕層」は騙されないように要注意。

・富裕層が騙されやすい投資商品は、「目新しい投資商品」「他人が運営する事業への投資」「内容の理解が難しい商品」。いずれも、各投資の内容を理解するのが難しかったり、情報収集が難しかったりする。騙されないためにも、適切なアドバイザーが必要。

・不動産投資は、収益構造が複雑で損益の計算が難しいほか、投資の成否を判断するのに数年単位の時間がかかるため、悪質な不動産業者が売り逃げしやすい。適切な知識を持たない投資家は、往々にして儲からない物件を買わされて泣き寝入りすることも少なくない

以上、今回は「なぜ富裕層ほど不動産投資、不労所得に騙されてしまうのか?」をテーマに解説してみました。典型的な詐欺・詐欺まがいに引っ掛からないように、十分注意して長期的な資産形成を実現してください。

不労所得 よくあるご質問

Q. まだ富裕層ではないのですが、

これから不労所得を増やしていって、最終的には収益を生み出す資産を積み上げて富裕層になりたいと思っています。ただ、騙されたり失敗するリスクもあると思っています。実際、どんな手法で不労所得を騙った詐欺が横行しているのでしょうか。

A. 不労所得の構築は、

本文中でも解説しましたが、仕組みづくりのために一定の努力が必要となります。ただ、一定の努力を「面倒くさい」「もっと簡単な方法があるのでは」などと自分の都合のいいように考えて、安易に手っ取り早く見える方法に飛びついてしまうのが、「不労所得」で騙される投資家さんの典型例です。以下、一見「手っ取り早く」見える不労所得ネタの注意事例を紹介します。

(よくある不労所得ネタ)投資商品の自動売買システム

一時流行した、「株式投資」「FX」や「バイナリー」に関する投資システムの販売。組み込まれたプログラムに基づいて、システムが自動で売り・買いを注文してくれるので、投資家が何もしなくても、自動的に売買の利益を得られる仕組みです。収入の質としてはキャピタルゲインなので、不労所得と言いにくいところもあるのですが、一切人の手を介さずシステムで全自動で売買決済されれば、自分の労働は伴わないので不労所得と言えなくもないでしょう。

そして、一般的な不労所得(不動産投資や株式の配当収入)に比べて、一見すると儲けの金額が大きくリターンが非常に大きく見えるのがポイント。コンセプトが分かりやすいし、投資家が何か手間を取られるわけではないので、火が付けば飛ぶように売れます。投資商品も、昔は株式だけでしたが、FX、バイナリーと投資商品も増えていくにしたがって、さまざまなシステムが手を変え品を変え登場します。

しかし、そううまい話しばかりではありません。うたい文句通りのパフォーマンスを上げてくれれば非常にありがたい存在なのですが、毎日コツコツ積み上げても、突然の相場の乱高下で、ある日突然大きな損失を抱えてしまった投資家さんも少なくありません。特にレバレッジ(信用取引)を使った場合、これまでの稼いだ利益だけでなく、借金を背負うことになり、これまで積み上げた資産を一度で失ってしまうこともあります。中には本当に優秀なシステムがあるのかもしれませんが、数十年にわたって、常にパフォーマンスを上げてきたようなシステムはおそらく稀でしょう。

きちんとリスクを理解したうえで、適切なロスカットをして運用する分には問題ないかもしれませんが、リターンだけに目がくらみ、やみくもにレバレッジを利かせて投資をするのはリスキーです。不労所得を期待してシステムに投資する場合は、この投資の本質が「キャピタルゲイン」であることを理解して、元本が大きく毀損するリスクを内包していることを認識しておくことが重要です。

(よくある不労所得ネタ)自動で儲かるネット物販

自動で儲かるネット物販、というのも流行りました。売れる商品をシステムがリサーチしてくれる、検品・梱包・発送まで自動で行われる仕組みを使えば、一切手間がかかることなく物販ビジネスが成功する、など。ただ、不労所得のように誤認されますが、実際には自分で手を動かさなくてはいけなかったり、リサーチの精度が悪くて売上が伸び悩んだり、など問題は少なくないようです。もちろん、本文中で解説した通り、不労所得を生み出す方法の一環として、自分が働かなくてもいいように、ビジネスと組織を自分で構築して、人に任せられる体制を作れれば問題ないです。ただ、そこまでの仕組みを構築するのは並大抵のことではありません。不労所得の構築は、やはりそれ相応の努力が必要となります。

ほかにも、物販ビジネスへの出資話などもあります。自分は一切手間がかからず、その道の専門家が実務を担当し、投資はその配当を不労所得として得る。非常に魅力的に見えます。ただ、これは本文中で解説した「出資金詐欺」の可能性も多分にあります。うたい文句としては、システムを活用してECショッピングサイト間での価格差をリサーチして、大掛かりに「せどり」「転売」を行っており多額の利益を上げている。もっと売上・利益を上げたいが、仕入の資金が必要、という話です。これも、きちんと出資者に利益分配してくれればいいのですが、少なくないケースで途中から利益分配が滞ったり、連絡が取れなくてトラブルになったりしているようです。

(よくある不労所得ネタ)ネットワークビジネス

特にベースとなる資産を持たない方が、不労所得をネタに誘われるのがネットワークビジネス。ネットワークビジネスとは、口コミによって商品を広げていく「マルチ・レベル・マーケティング」という仕組みを用いたビジネスのことです。購入者を販売員として勧誘し、販売員になるとさらに別の人を販売員として勧誘していくビジネスモデルで、ピラミッドのような構造になっています。販売員は、自分が構築した販売網から、一定のロイヤルティを得ることによって、不労所得を得ることができます。学歴・資格・人種などを問わず、万人が不労所得を得られる可能性がある、ということで注目されるビジネスの一つです。

しかし、実は、この販売員を勧誘していく仕組み、ピラミッドのような構造であるが故に、詐欺・詐欺まがいが横行してしまうことがあります。もちろん、ネットワークビジネスのすべてが悪いわけではありません。真っ当な仕組みで、世の中に素晴らしい貢献をしているビジネスが存在していることは事実です。しかしながら、中には新規参入者を食い物にする悪質ネットワークビジネス、いわばネズミ講、本文中のポンジ・スキームのような手法を取るビジネスが多いのも事実です。

見分けるポイントの一つは、先行者利益。勧誘の際に「早く始めたほうが有利」などと決断を急がせるようなビジネスは、出資金詐欺と同じように、後発組が食い物にされるスキーム。仮にそこから収入があったとしても、不労所得とは程遠いものです。早晩そのビジネスは崩壊し、せっかくの不労所得も消えてしまいます。真っ当なネットワークビジネスの場合、本当に不労所得を得るには、自分で販売・流通網を作っていく必要があります。これも並大抵の努力ではないはずです。

手っ取り早い不労所得ネタには注意が必要!

以上、注意すべき不労所得ネタの詐欺・詐欺まがい事例を上げましたが、一見手っ取り早く見えますが、どこかに「他人任せ」「システム任せ」のところがあります。「他人任せ」の不労所得は、いつか突然無くなることがよくあります。一見、よさそうに見える投資話も、自分がどこまでコントロールできるか、最悪騙されても問題ない範囲か、などリスクコントロールを適切に行うようにして下さい。

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2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。