今回のテーマはマンションの固定資産税です。固定資産税とは、家や土地などの資産(不動産)に対して課税される税金です。毎年1月1日時点に土地・家屋などの不動産を所有している人に対して課税され、市町村が徴収しています。
固定資産税には、軽減措置がありますが、条件を満たしているにもかかわらず軽減措置を受けていないケースもあるようです。そこで今回は、固定資産税の全体像と、計算方法、軽減措置について詳しく解説します。
※2021年度の与党税制改正大綱(2020年12月10日に与党発表)でも固定資産税に関する改正がありますので、その点も若干触れたいと思います。
固定資産税とは? 1月1日時点の不動産所有者に課税される
固定資産税は、1月1日時点で土地や建物を所有している人に課せられる税金で、地方税(市町村税)です。1月1日時点での土地の価格、建物の価格が算出され、そこに一定の税率が課せられ納税することになります。
なお、不動産の評価の見直しは3年に1回となっています。土地や建物の価格は毎年変動するので、本来は毎年固定資産税が見直されるべきかもしれませんが、課税事務の簡素化、徴税コストを抑えるために3年に1回評価替えが行われています。
(固定資産税額が決まる仕組み)
土地の価格は路線価に基づき、土地の形状や接道状況などによって課税標準額が算出されています。一般に、路線価は実勢価格の80%程度と言われています。詳細は後述しますが、土地に住宅が建築されている場合、課税標準の軽減が適用されます。更地の場合は、税の軽減措置はありません。
建物の価格は「再建築価格」といって、同等の建物をいま建てるとしたらいくらかかるか、という想定で課税標準額が算定されます。よほど華美な住宅でない限り、実勢の40~60%程度の価格になると言われます。
建物自体に課税標準の軽減措置はありませんが、新築の場合に限って、一定の期間、税が半減される仕組みがあります。
(固定資産税の計算式)
土地も建物も、固定資産税の計算式は、以下のとおりです。
課税標準額×税率(1.4%※)=固定資産税額
※ 1.4%は標準税率。市町村によって税率は異なる場合があります
(固定資産税と合わせて課税される「都市計画税」)
都市計画税は、市街化区域内に所在する土地と建物の所有者に課せられる税金です。都市計画税は、市区町村が行う都市計画事業または土地区画整理事業に要する費用に充てられます。固定資産税と同じく、毎年1月1日現在で決まります。
なお、市街化区域とは都市計画区域における区分のひとつで、市街地や公共施設に対し積極的に整備・開発を行っていく区域です。都市計画税の税率は、多くの自治体では0.3%を採用しているようです。
(固定資産税の納付手続)
固定資産税については、申告などの手続きは特に必要ありません。マンションを購入するとその所有権を自治体に登記することになります。
自治体は1月1日時点での登記情報を元に納付金額を計算し、納税義務者であるマンション所有者へ納税通知書を送ります。本人の手元には届くのは、毎年4~6月頃になると思います。
納付は口座振替の自動引落や市税事務所や金融機関での振り込み、近年はコンビニでも可能となります。
クレジットカードでの支払いが可能な自治体も増えおります。
支払いは全4期分を分納するか、一括支払いするかを選ぶことができます。1期から4期でそれぞれ6月、9月、12月、2月頃が納付期限とされていることが多いようです。(納付期限は自治体によって異なります。)
(参考)2021年度与党税制改正大綱
自由民主党と公明党は12月10日、2021年度税制改正大綱を取りまとめ公表。住宅・不動産分野において焦点となっていた住宅ローン減税の延長・拡充や固定資産税負担の軽減措置については、国土交通省や業界団体の要望がほぼ受け入れられた形。
(固定資産税の負担増回避)
土地の固定資産税評価替えに伴う対応については、負担が増大しないよう、既存措置の延長に加え新たな特例も設ける方針。
2021年度は3年に一度の固定資産税評価替えの年であり、その基準となる2020年地価公示(同年1月1日時点)までの地価上昇に伴う負担増を抑える。これにより、新規特例措置終了後の2022年度以降も、2020年地価公示を基にした急激な納税額の上昇は回避される見通し。
・地価が上昇した場合にも、2021年度に限り課税標準額を2020年度から据え置く特例措置を講ずる。
(地価が下落した場合には同措置を適用する必要はなくそのまま納税額減少とする)
・既存の「土地に係る固定資産税の負担調整措置」の適用期限を3年間延長。
※コロナ禍の経済悪化や地価変動を考慮し商業地をはじめ宅地や農地などすべての土地を対象。
固定資産税算出のもとになる「課税標準」 どのように計算される?
固定資産税を計算する上で重要なのが「課税標準」。そもそも課税標準額が分からなければ、固定資産税は計算できません。そこで、以下で「課税標準」について解説します。
(土地の課税標準の求め方)
まずは土地についてですが、一般的な宅地であれば、まずは課税標準の大もととなる「路線価」が算定基準となります。路線価は地価公示価格や鑑定評価、売買事例などを元に、主要な道路ごとに定められているものです。
この路線価に基づき、宅地の状況(奥行、間口、形状など)に応じて固定資産税の課税標準が算出されます。路線価はインターネットでも公開されているので、自分の不動産の路線価を一度チェックしてみるといいでしょう。
(建物の課税標準の求め方)
建物の課税標準額の算出はもっと複雑です。「再建築価格」が原則となりますが、それを算出するための基準として、総務大臣が定めた「固定資産評価基準」が存在します。基本的には全国一律で評価ポイントが決まっています。
「固定資産評価基準」には、建物の構造、設備仕様、内装材などかなり詳細に区分されたチェックポイントがあり、それぞれに評価額が設定されています。地域性や物価水準などによって係数調整されることもありますが、その積算結果によって課税標準額が決定されます。
新築の建物の場合は、市区町村から家屋調査の依頼が来ます。市区町村の税務課調査員の訪問を受け、建物の外周、内部を調査されます。事前に設計図書一式、仕様書一式で調査員は確認しているので、現地調査では図面では分かりにくいところ、図面との相違がないか、といった点を中心に確認します。
家屋の規模や構造により異なりますが、平均的な面積(約40坪)の住宅であれば概ね1時間程度で終了するようです。
多くの場合、標準的な構造、設備、仕様であれば、実際かかった建築費の40%~60%程度ですが、内装材で大理石を仕上げで使っているなど、高価な仕上げや設備を採用していると評価が高くなるようです。
知らなきゃ損する? 固定資産税の軽減措置の内容
固定資産税に対する減税措置は、大きく分けて2つあります。1つは土地のための減税措置、もう1つは建物のための減税措置です。
固定資産税はさきほどの計算式で計算されますが、住宅取得を促進するといった住宅政策に資する見地等から、税負担を大幅に軽減する特例措置が設けられています。
(住宅用地の特例)
所有する土地が建物を建てるための土地であり、いわゆるマイホームの敷地であれば、減税措置を受けることができます。この特例措置を適用した額(本則課税標準額)は以下のように算出されます。
住宅用地の区分 | 課税標準の特例の内容 |
小規模住宅用地(住宅用地で住宅1戸当たりの面積が200㎡以下の部分) | 課税標準を1/6に圧縮 |
一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地) | 課税標準を1/3に圧縮 |
出典:東京都主税局 【土地】2 住宅用地及びその特例措置について
200平方メートルまでは評価額が1/6として計算され、残りは1/3で計算されます。これはたとえどんなボロボロの家であろうと適応されるため、空き家が後を絶たない理由でもあります。
なお、マンションの場合は200平方メートル以下の物件がほとんどなので、この1/6の減税措置が適応されることが多いのです。
(新築住宅の特例)
土地と違って築年数や建物の構造に従い、減税措置の制限があります。2020年3月31日までに新築された住宅は、課税床面積が120㎡以下の部分につき、3年間または5年間の間、固定資産税が1/2となります。また、2020年3月31日までに新築された認定長期優良住宅は、5年間固定資産税が1/2となります(マンションは7年間)。
住宅の区分 | 条件 | 課税標準の特例の内容 |
認定長期優良住宅 | 新築後7年間 | 課税標準を1/2に圧縮 |
3階建て以上の耐火・準耐火構造の住宅 | 新築後5年間 | 課税標準を1/2に圧縮 |
上記以外の住宅 | 新築後3年間 | 課税標準を1/2に圧縮 |
(中古住宅の特例措置はあるの?)
土地付きの中古住宅を購入した場合ですが、新築ではないため住宅の軽減措置は利用できませんが、土地の課税標準額を1/6に圧縮する住宅用地の特例は利用できることとなります。
新築マンションの固定資産税 知っておくべきポイント
(新築マンションの固定資産税評価額の確認)
新築マンションの場合、多くの物件は未完成の段階で売買契約を結ぶため、実は購入時には固定資産税評価額がまだ分かりません。完成次第、前述のような家屋調査が行われます。
正確な額を知りたい場合は、完成後に確認する必要がありますが、不動産会社ではあらかじめ、使った材料や設備など、マンションのグレードと標準的な建築価格をもとに固定資産税評価額の概算をしています。
新築マンションを買う場合には、事前に内覧会で案内係に確認する、担当してくれる不動産会社のスタッフに確認することで課税額の試算を確認することができます。
(新築マンションの固定資産税の相場とは?)
新築マンションの場合、どのくらいの固定資産税がかかるのでしょうか。エリアや建物のグレードによって、評価額も変わることから、固定資産税の相場を出すのはとても難しいのが事実です。
ただ平均的な価格の新築マンションの場合、相場としては10万円程と言われています。ここに都市計画税が加わると、およそ12万円ほどです。(※ 地価の高い東京の一等地に建っている、マンションに特別な価値があるなど、特段の事情がある場合は、この限りではありません。)
これは新築時の減税措置がかかる4年目までの相場です。4年後には建物の固定資産税がおよそ倍になりますが、同時に建物の評価額が築年数とともに下がるため、10万円前後に落ち着くようです。
(固定資産税の納税通知が届いたら、軽減措置の適用がされているかをチェック)
固定資産税の納税通知が届いたら、自分の固定資産税額が誤っていないかをチェックすることがとても重要です。住宅であれば土地に軽減措置の特例が適用されているか、建物の課税標準は正しく軽減されているかどうかがポイントです。4月に納税通知が届いたら、その部分をチェックするようにしましょう。
確認するのは納付書に同封されている「課税明細」という書類。書式は市区町村ごとに違いがありますが、基本的には、本則で計算された土地、建物の課税標準額が記載され、本来の税額が書かれています。
もしも、納税額に疑問をもった場合は、市区町村役場に問い合わせましょう。固定資産税の課税標準は、「固定資産課税台帳」に記載されており、誰でも申請すれば縦覧することができます。
ただし、縦覧期間は4月1日から4月20日まで(市区町村によって異なる場合もある)となっているので、疑問を感じたら、すぐに動くこと。そこで修正されず、何らかの不服があれば、納税通知を受け取った日の翌日から60日以内に、審査の申し出をすることができます。
固定資産税の評価額は、不動産取得税、登録免許税の算出にも関係してきます。さらに固定資産税は、土地、建物を所有している限り、毎年課税されるものなので、早いうちに問題を解決するようにしましょう。
以上、今回はマンションの固定資産税について解説しました。これからマンションを買う方、最近マンションを買った方は、是非ご自身のマンションの固定資産税がいくらになるか、軽減措置はきちんと受けられているか、などを確認してみてください。(※コロナ禍で軽減措置に関する追加情報が出ております。行政のHPから最新情報を集めることを推奨します。)
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