激安区分マンションを買うのはどうですか?|不動産投資100問100答(11)

筆者の不動産投資のコンサルタントとしての体験から、よくある質問に簡潔に答えていく「不動産投資100問100答」シリーズ。今回は第11回として、激安物件の購入について取り上げます。

今回の質問は「激安区分マンションを買うのはどうですか?」というものです。

実は一時期、筆者のクライアントの一人が「激安」の区分マンション投資を検討したことがありました。今と同じように当時も物件価格が上がっている最中で、良い物件がなかなか出てこなかった時期でした。

恥ずかしながら、筆者はそのような物件(激安区分マンション)をこれまで検討したことが無かったため、一度腰を据えて調べることにしました。

今回はその時に調べたり検証したりした内容をもとに、激安区分マンションを買ってよいか参考情報をお伝えしながら注意点をまとめていきます。

激安で売られている区分マンションはどういうもの?

冒頭にお話しした件ですが、ある日クライアントから「この物件を買ってもいいですか?」と言われて渡されたのが、地方都市にある激安(価格で200万円台)の高利回り区分マンションの情報でした。利回りは14%くらいだったと思います。築は40年を越えていたと記憶しています。

激安区分マンションの情報は投資物件を扱う情報サイトを見れば結構出てきます。筆者が当時に参考としてよく見たのは以下のサイトです。

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ここで「利回り高い順」で並べ替えをすれば、すぐに高利回り物件が出てきます。高利回り物件の多くは、どちらかというと僻地にある古い木造物件か、あるいは築古の区分マンションです。

筆者のクライアントは僻地への投資は考えていなかったので、地方都市(政令指定都市レベル)で利便性の高いエリアの築古区分マンションを候補にしたそうです。

さて、前述の通り筆者には地方築古区分マンション投資の知見が少なかったことから、ネットや書籍で調べることにしました。ちなみに東京だと、築40年の単身用マンションでも1500万~2000万くらいの価格なので、激安投資とは言えません。そうすると、検討対象はどうしても地方中心になります。

まず、地方都市の区分マンション投資はどのくらい成功者がいるのか、その点が気になりました。とりあえずネットで調べてみようと思い、「築古 区分マンション 不動産投資」で検索してみました。

思ったよりも該当する情報が少なくて驚きましたが、そんな中でもいくつかめぼしい情報はありました。その一つが、「楽待」さんの「不動産投資相談室」にあったQ&Aです。この中で「強制脱サラ大家」さんのアンサーコメントが秀逸です。多分これである程度「築古地方区分マンション投資」をどう考えたらいいか結論が出ると思います。

(参考)楽待 不動産投資相談室~「築古区分への投資についてアドバイスをお願いします」

それから書籍も探してみたのですが、こちらもあまりヒットしませんでした。意外と「築古・地方・区分マンション」はニッチ市場だと痛感しました。そんな中でも参考になると思ったのが以下の書籍です。

(参考)『ずるい不動産投資: 手間暇かけずに毎月50万円の家賃が入ってくる築古区分マンション投資入門』坂本 慎太郎 (著)

2023年出版なので割と最近の本ですが、「利回り10%以下ならREITを買う」「リフーォムは生活できるレベルで十分!」など、共感できるところも多かったので、築古区分マンション投資に興味があれば買って読んでみたらよいと思います。

ChatGPTのアドバイス 激安の区分マンションを買うのはどうですか?

さて、いつものようにChatGPT先生にこの問題を聞いてみました。アドバイスをもらうに当たって「地方」「激安(300万円以下)」「築古」を条件として付けました。先生の見解は以下の通りです。

地方にある築古の激安区分マンションを不動産投資として検討する際には、以下のような具体的な注意点を考慮する必要があります。価格が300万円以下のワンルーム物件を想定した際のポイントを詳しく説明します。

1. 立地と賃貸需要の確認

地域の経済状況: 地方の経済状況や人口動態を確認します。過疎化が進んでいる地域や経済が衰退している地域では賃貸需要が低く、空室リスクが高まります。

賃貸需要の調査: 近隣の賃貸物件の空室率や賃料相場を調べます。特に、大学や工業団地が近い場合は学生や単身赴任者の需要があるかを確認します。

交通アクセス: 駅やバス停からの距離、主要道路へのアクセスを確認します。公共交通機関の利便性が低いと、賃貸需要が減少します。

2. 建物の状態と維持費用

建物の劣化状況: 専門家による建物診断を依頼し、構造上の問題や修繕が必要な箇所を特定します。築年数が古い場合、特に配管や電気系統の劣化に注意が必要です。

修繕履歴と計画: 過去の修繕履歴や今後の修繕計画を確認します。特に共用部分の修繕積立金が適切に積み立てられているかをチェックします。

維持管理費用: 管理費や修繕積立金の額を確認し、将来的に大規模修繕が必要になる場合の費用負担を考慮します。

3. 法的規制と権利関係

法的規制の確認: 物件が違法建築でないか、再建築不可物件でないかを確認します。法令に違反している物件は将来的なトラブルの原因になります。

権利関係のチェック: 物件の所有権や抵当権などの権利関係を確認し、トラブルがないかを調査します。登記簿を確認し、所有権が明確かを確かめます。

4. 収益性と資金計画

収支シミュレーション: 購入価格、管理費、修繕積立金、固定資産税などの経費を含めた収支シミュレーションを行います。家賃収入が経費を上回るか、キャッシュフローがプラスになるかを確認します。

融資条件の確認: 融資を利用する場合、金融機関の融資条件(金利、返済期間など)を確認し、無理のない返済計画を立てます。築古物件は融資が厳しい場合があるため、事前に金融機関と相談します。

5. 管理体制と入居者サービス

管理会社の選定: 信頼できる管理会社を選定し、物件の管理を委託します。管理会社の評判や実績を調べ、適切な管理が行われるかを確認します。

入居者サービスの充実: 入居者の満足度を高めるために、迅速な対応や適切なメンテナンスを行います。入居者が長く住み続けるような環境作りを心掛けます。

6. リスク管理

空室リスク: 空室期間が長くなる可能性があるため、複数の物件に分散投資するなどしてリスクを分散します。また、賃貸保証会社を利用することで家賃滞納リスクを軽減します。

保険の加入: 火災保険や地震保険に加入し、災害リスクに備えます。また、賃貸経営におけるトラブル(滞納、損害賠償など)に対応するための保険も検討します。

7. 再販価値の検討

将来的な売却計画: 将来的に売却を考える場合、物件の再販価値を検討します。需要が低い地域では売却が難しくなる可能性があるため、長期保有を前提に考える必要があります。

改装やリノベーションの検討: 再販価値を高めるために、物件の改装やリノベーションを検
討します。購入後に手を加えることで、賃貸需要や再販価値を高めることができます。

結論

地方にある築古の激安区分マンションへの投資は、初期投資が低い一方で、多くのリスクが伴います。物件の詳細な調査、専門家の意見を参考にした慎重な判断が必要です。リスクを理解し、適切な管理と運営を行うことで、収益を上げることが可能ですが、物件選びや資金計画に十分な注意を払い、リスクを最小限に抑えることが成功の鍵となります。

いつものように、良くまとまっており素晴らしいアドバイスです。

気になるところは「7. 再販価値の検討」のところで、改装・リノベーションについて触れている点です。後述しますが、激安区分マンションは融資が極端につきにくいものです。

仮に専有面積が住宅ローンの対象となるくらいの面積数であればいいのですが、そうでなければ融資付けはほぼ困難です。出口が見込めない以上、物件のバリューアップを目指しても無駄になる可能性が高いと思います。

そのような点も踏まえて、筆者が思うところを以下にまとめていきます。

地方の激安区分マンション とりあえず素人は止めた方がいいです。

あくまでも筆者の個人意見ですが、地方の激安の区分マンションは、とりあえず素人は手を出さない方が無難です。前述のように地方築古・激安区分マンションの情報を集めて検証した筆者の結論です。止めた方がいい理由は以下の通り。

1「融資が付かない」

地方築古の激安区分マンションは、二つの理由で融資がつきません。一つ目は築古のため、融資期間を長くすることができないことです。二つ目は、物件が小さすぎることです。規模が小さすぎる融資は銀行などから相手にされないことが多いです。

例外は不動産業者(売主)が銀行とタイアップして提携ローンの仕組みを作っている場合です。ただ、提携ローンを用意しているのはどちらかと言えば首都圏などそれなりに高値の物件を扱っているエリアが多く、しかも築古だとそれすらも難しいと思います。

2「実質利回りが低い」

激安区分マンションは「実質利回り」が低くなるのが泣き所です。仮に表面利回り12%とか13%くらいの高利回り物件であっても、実質利回り(※)は6%くらいになってしまいます。これは、区分所有のマンションの「管理費」「修繕積立金」が収入に対して割高であることが原因です。

(※)実質利回りとは、年間の家賃収入から経費(固定資産税、都市計画税、火災保険料、賃貸管理費、建物管理費、修繕積立金)や引いた純収益を投資金額(物件価格)で割った指標です。

具体例を挙げてみますと、地方都市で250万円くらいで売っている築47年の地方築古区分マンションがあります。家賃2万5000円に対して、管理費約4800円、修繕積立金5400円がかかるそうです。通常は収入の2割程度が運営経費なのですが、激安区分マンションの場合、収入の4割がコストになってしまいます。

このように利益が薄い状態が続くと、入居者の入替えが発生した時点で一遍に利益が吹き飛びます。ちなみに築古物件の場合、退去後の修繕費用と再募集時の広告料で少なくとも15~20万くらいのコストが発生すると想定したほうが無難です。

3「稼働年数が少ない」

元々築古物件なので、稼働できる残存期間は結構短くなります。仮に築60年くらいまで稼働できるとしても、築古区分マンションは20年くらいが限度です。このころには、さらに老朽化が進んでいて、室内の修繕費だけでなく、建物共用部の修繕もお金がかかる状況が予想されます。

4「配管や電気系統の劣化が進んでいる」

築古なので当たり前ですが、建物の見えない部分、配管や電気系統も老朽化しています。これらの修繕にもお金がかかります。これまでマメに修繕を繰り返してきたマンションであればいいのですが、おそらく激安で売られている物件のほとんどは、そうではありません。

買った途端に配管から水漏れ、電気系統の不具合が起こっても全く不思議ではありません。せめて収益性が高ければいいのですが、前述の通り経費を差し引いた実質収入はかなり薄いので、このあたりの修繕が発生すると一気にお金がなくなります。

5「出口がほぼない」

そもそも、自分が買う時にも融資が付かないので、自分が売却するときも融資付けは無理です。買ってくれる人がいないので、捨て値で安売りしないと投資を終えることが出来ません。激安区分マンションはまさにこの状態なので、だれか買ってくれる人がいたら喜んで売ってくれるでしょう。

ちなみに、この出口が見えないことが、筆者が築古区分をお勧めしない一番の理由です。仮に、家賃が激安で、入居者入れ替え時の修繕費や広告費、さらには大規模修繕が発生して、金喰い虫の物件になったとしても、あなたは物件を捨てることすらできません。売れなければ、赤字でも持ち続けなければなりません。これが非常に怖い。解体するにもお金がかかります。

この築古区分所有マンションは日本各地で社会問題化しているので、急ピッチで法整備が進められています。ただ、まだまだ先行きは不透明です。建替えがスムーズに進むケースもありますが、おそらくまだ少数派です。ボロボロになってスラム化するマンションも出てきています。

一般人は無理に手を出さず、無難な投資を検討する方がマシ

実入りの薄い投資で、出口にこれだけの不安を抱えるのならば、他の証券投資などを考えた方が賢明かと筆者は思います。

どっちにしろ融資が付かないので現金を多く使うことになるのですが、それならば現金でREITを買った方がマシだと思います。相談してきたクライアントさんにも検討中止するよう忠告し、無事に断念してくれました。

余談ですが、買ってもいい例外は長期的視野を持った開発業者さんです。この方々であれば、良い立地の築古マンションを買い集めて、最終的に建替え・再販売までの長期的視野を持っているので、大丈夫だと思います。

ただし、開発リスクがあったり、他の区分所有者とのトラブルが起こる可能性もかなり高かったりするので、相当な資金力と築古物件の運用ノウハウ、建替えまでの行政手続きなどもノウハウが求められます。どちらにしても素人は手を出さない方が無難です。

【参考記事】築古物件って本当に買っていいの?|不動産投資100問100答(3)

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2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。