不動産投資で資産10億円以上「メガ大家」の手取り収入は?

世間では、所有物件の総額が10億円を超えるような大家のことを「メガ大家」と呼ぶようになりました。
不動産投資に興味のある人や既に始めている人なら、一度は耳にしたことがあると思います。

一般人からすると、「資産10億ってすごい」「10億なんて想像もつかない」と驚き、その資産を羨む人が多いかもしれません。

しかし一方で、このメガ大家たちの中には、実は苦悩ばかりであまり儲かっていない人がいるとも言われ始めています。
そこで今回は、実際に資産規模10億のメガ大家さんが、どのくらい不動産投資からの収入を得ているのか検証してみます。

メガ大家さんの資産は借金がほとんど?

高層ビル

今「メガ大家」と呼ばれている不動産投資家は、2009年から2013年の間に始めた人が多いと言われています。
彼らにとって追い風だったのが、金融機関が不動産への融資をかなり積極的に行ったこと。

そして2013年ころから低金利政策と東京五輪開催決定の影響で一般の人が一気に不動産投資になだれ込み、不動産投資ブームの拡大が始まりました。
銀行の融資も受けやすい属性のサラリーマンや、コツコツと小さい物件から始めていた主婦などの投資家が一気に資産規模を膨らませて、メガ大家になる環境が整っていた時期でした。

【参考】健美家ニュース
不動産業向け融資、バブル超えの80兆円も 投資家は地銀改革に備えよ…日銀リポートを読み解く

しかし、ここで一つ注意しなければならないのがメガ大家さんの資産内容。
物件総額が10億円を超えていれば大体「メガ大家さん」の定義には当てはまります。

しかし、ほとんどのメガ大家さんは、融資を受けて不動産投資をしています。
しかも10億円の資産に対して80~90%は借入金、というのがメガ大家のほとんどだと言われています。

ですから、メガ大家さんと言われる人の中でも、借入金の内容、実際に買った物件の質によって、経営状態は大きく変わる、ということに注意しなくてはなりません。

実際のキャッシュフローは1500万前後!?

マンション内装

次に、かなり大雑把な試算ですが、資産10億のメガ大家さんの年間キャッシュフローを計算してみました。

メガ大家さんで多いのが、中古RCを複数棟購入するケースです。
中には、空室の多い地方都市で運用している方も多いと思われるので、下記の試算条件とします。

    投資総額10億円

    借入金は総額の9割(9億円)

    融資期間25年くらい、金利は2.5%

    空室率は10%(稼働率90%)

    運営経費20%(租税公課・管理費・修繕費用等)

    表面利回り8.5%

家賃収入は
10億円×8.5%×稼働率90%=7650万円

そこから運営経費を引いたネット収入は、
7650万円×(1-20%)=6120万円

一方、借入金の返済は、約4800万(融資期間25年、金利2.5%)

そうすると、実際手元に残るキャッシュフローは、
6120万-4800万=1320万

稼働率や、運営経費をもっと良い数字にすれば、おそらくキャッシュフローは1500万くらいにはなると思いますが、どうお感じになるでしょうか。

資産規模10億円のわりに、思ったよりも厳しい、という印象ではないでしょうか。
更に、ここから所得税(法人税)が引かれることになりますので、実際はもっと厳しいかもしれません。

もちろん、これはキャッシュフローの計算なので、資産バランス的な検証はしておりません。

毎年借入金の返済が進むので、純資産は増えていく可能性はあります。
キャッシュリッチではなく資産リッチです。

しかし、元利均等返済だと、はじめの頃の返済額は大部分が利息。
元金の減り方は少ないので、どうしても借入金の比重が重たく、資産バランスもしばらくは悪い状態が続くと思われます。

さらに、収益不動産は築年数が古くなるにしたがって、減価していきます。
資産価値の下落と、残債務の減り具合とのバランスがきちんととれているかどうかも検証が必要です。

資産10億のメガ大家さんも、左うちわ、というわけではなさそうに見えます。

規模の拡大重視ではますます不動産投資のリスクが高くなる

家の内装

資産規模10億まで伸ばせるメガ大家さんは確かにすごいと思いますが、空室リスクや金利上昇リスクなど、不動産投資にまつわる様々な運営リスクを背負っています。
日々のストレスもそれなりにあると思います。

おそらく、10億円も借り入れして税引前の年間キャッシュフローが1500万くらい、というのはあまり本意ではないだろうと思います。
(ここから所得税か法人税が引かれるので、さらに手取りは少なくなります。)

これから不動産投資で規模を拡大していこうと考える場合、少なくとも、上記の試算条件よりもよい条件で不動産を購入するようにすべきでしょう。

【関連記事】
不動産投資の利回りは普通何%?成功投資家の基準はどのくらい?

The following two tabs change content below.

2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。