2020年・東京オリンピックまで残すところ、あとわずか。
過熱した不動産相場においては、バブルではないのかと、様々な憶測が飛び交っています。
2019年以降の相場動向については、不動産専門家の間でも話題になることが多くなりました。
「東京の不動産価格はそろそろピークか?」
「バブルまだピークには達していない?」
安倍政権による経済対策(アベノミクス)とともに始まった好景気からバブルの流れは、今後どうなるのか?日銀の量的金融緩和政策の先行き不透明を反映して、専門家の間でも議論が分かれています。
今回はアベノミクスから始まったバブルの背景を振り返りながら、バブル崩壊の影響について今後の展望を検証します。
こうして土地・建物は高上がりした!
すでに都心不動産バブルはかなり膨れ上がっているのは否定できないところです。
「2020年・東京オリンピックの前後に、土地・建物の価格がピークを打った後、バブルがはじけ、ひたすら下落していく」という見方に立つ専門家が多いのが現状です。
バブル景気といえば、1986年(昭和61年)12月から1991年(平成3年)2月までの51か月間に起こった好景気が代表的ですが、今回はそれをしのぐ規模になりつつあります。
たとえば、銀座5丁目中央通りの鳩居堂前の坪当たり路線価は、前のバブルのピークだった1992年には1億2000万円。ところが、2017年は1億3300万円に達しており、すでにバブル期を上回る地価がついています。
今回、国内の不動産相場が高騰し、バブル化しているのには次のような要因があります。
要因1.インバウンド・マネーの流入
一つ目は、インバウンド・マネーの流入。
もともと、今の日本国内の不動産価格を上昇させている要因のひとつにインバウンド・マネーがあります。
そしてインバウンド・マネーは、東京五輪開催が決定した2013年頃からこれまでよりも積極的に日本に上陸するようになりました。
特に都心の物件は、東京オリンピック開催が決まってから急激に価格が高騰しました。
インバウンド・マネーの流入が激化したのは、次の要因が複合的に影響していると専門家は分析します。
①割安感
たとえばシンガポールなど、土地が狭い国の不動産は価格が高く、運用益(インカムゲイン)を狙えるような物件は少ないそうです。
それと比較すると、リーマンショックで一度下落した日本の不動産は、投資利回りが上がり(つまり価格が安くなり)、台湾や香港、上海などの不動産よりも相対的に「割安」に映ったようです。
アジアの富裕層が、割安感のある日本の不動産をこぞって買いに来ていた時期があったようです。
②キャピタルゲイン期待
実は、キャピタルゲイン狙いで土地・建物を買っていた外国人投資家も多いようです。
東京オリンピック開始が決定して、値上がりによる将来的にキャピタルゲインを狙える可能性が高いと判断されたこともインバウンド・マネーが流入した一因です。
特に都心(外国人にとってわかりやすいエリア、六本木、銀座など)が好まれたようです。
これらのエリアは土地も高いうえに、建築費も高くなっているので、運用益はそれほど望めません。
正直なところ割高感はありますが、それでも都心物件が売れたのは、値上がりによるキャピタルゲインが期待できたからに他なりません。
要因2.金融緩和による低金利政策
二つ目は、大規模な金融緩和。
日銀のいわゆる異次元金融緩和により、金利は驚くほどの低水準となりました。
まず影響が出てくるのが住宅ローン。
住宅ローン金利は既に過去最低水準。
そうすると、住宅ローンで家を買う人が多くなります。
前述のようにインバウンド・マネーが集まってくるのに加えて、日本人同士でも物件、新築マンションの奪い合いが始まります。
人気エリアの分譲マンションの競争率はかなり高かったのではないでしょうか。
価格もかなり高騰したはずです。
次に影響が出たのが、不動産への事業性融資の拡大。
金融緩和政策によって、銀行は資金を寝かしておくことが難しくなり、何とか貸出先を模索するようになります。
しかし、今の日本では法人の資金需要が減退しています。
「貸出先がない」と嘆く銀行営業マンが溢れかえっている状況です。
その受け皿になったのが、個人投資家の資金需要。
投資用不動産を購入したい個人投資家と、資金を貸し出したい銀行のニーズが合致して、これまでにないくらいの金額の不動産融資が行われることになりました。
資金が出るから不動産を買える。
不動産を買える人が多くなるから、物件が高くなる。
このスパイラルで、どんどん不動産価格が高騰していったのです。
もはや時間の問題!?バブルはこうやって崩壊する?
前述のような要因により、国内外から資金が流入し、不動産の取り合いが始まり、結果として不動産価格はどんどん高騰していきました。
しかし、後述するように、マンションを中心に、都内でもマンション価格は頭打ち状態になってきているようです。
果たして、バブルの崩壊は近いのか?バブル崩壊に結び付く不安要素をいくつか挙げてみます。
シェアハウス・スルガ銀行問題の影響
まずは日本国内のマネーの動きです。
前述のとおり、うまく銀行と個人投資家の要望が合致した不動産向け融資。
大きく貸出残高が積み上がり、不動産相場を活況に導きましたが、スルガ銀行の不正融資問題がクローズアップされ、不動産融資への目線が厳しくなりました。
購入意欲が旺盛だった個人投資家への貸し出しがかなり難しくなっている状況です。
この影響よって、国内投資家の買いニーズが少なくなり、土地・建物の需給バランスが崩れて、不動産価格が下落する可能性は十分あると思われます。
追い打ちをかける「インバウンド・マネーの撤退」
次に懸念されるのがインバウンド・マネーの撤退。
これも需給のバランスを一気に崩壊させます。
専門家は、東京五輪が近づくにつれて、これまでニッポンを買ってきた外国人投資家はそろそろ「売り」にシフトチェンジすると見ています。
そして、それは東京の不動産の「高値売り抜け」が始まる最初の年が二〇一九年であると予想する専門家もいます。
「なぜ二〇一九年なのか」「なぜ東京五輪までに売却を考えるのか」のかというと、それには3つの理由があります。
①価格の頭打ち感
理由の一つ目が、価格上昇が止まること。
特に湾岸のマンションなどは価格が頭打ち状態になってきつつあるようです。
価格の上昇が止まってしまうと、これ以上のキャピタルゲインは望めないことになります。
そして、キャピタルゲインが期待できなくなると、これ以上のマネーは流入してきません。
そうすると、投資家が物件を一斉に手放す可能性も高いことから、不動産価格は暴落に向かう恐れが出てくるのです。
②減税措置の適用
そして、理由の二つ目が税制上の問題です。
日本の税制では、土地や建物を売る場合、5年以内の短期譲渡所得の場合は売却益の35%に課税されますが、5年超の長期譲渡所得の場合は、売却益21%に税金が減額されます。
そうすると、おそらく2013年頃、都内の新築・中古のマンションを爆買いしていた海外投資家が、5年間の所有期間が過ぎて売却益への課税が減額される頃から、所有している物件を一斉に売りに出すことが予想されるのです。
③五輪一年前の「高値売り抜け」戦略
理由の三つ目が、五輪の一年前というタイミング。
「一年前」というのに確固たる根拠はありませんが、前例があります。
湾岸エリアのタワーマンションを大量に買い込んでいる中国人富裕層は、実は2008年の北京オリンピックのずっと前に北京の土地・建物を買い漁り、北京五輪の1年前にすべてを高値で売り抜けて資産を築いた中国人たちだったようです。
おそらく、今回の東京五輪においても、同様のことが行われるのではないかというのが衆目の一致するところです。
どこまで下がる?バブル崩壊の影響とは?
それでは、バブルが崩壊すると、どのくらいのインパクトがあるのか、これはわかりませんが、過去の実例を見ていきましょう。
バブル崩壊で「3分の1」になった銀座・鳩居堂本店前の地価
前述のとおり日本の不動産バブルのバロメーターは、東京銀座5丁目の銀座・鳩居堂本店前の地価の推移です。
2016年7月、鳩居堂本店前の地価は、1平米当たり前年比18.7%増の3200万円まで上昇しました。
平成初期のバブル時のピークは1992年の3650万円でしたから、3200万円からでは過去最高値まで、まだゆとりがあるように見えました。
しかし、2017年7月3日の国税庁の発表によって、1平米当たり4032万円の過去最高の高値を付けたことが明らかとなりました。
(出典)LIFULL HOME’S PRESS
路線価全国平均は2年連続上昇。銀座ではバブル期超え過去最高額も~国税庁2017年分路線価
1年も経たないうちにバブル時代の最高値を抜いてしまったのです。
これはすごい高騰ぶりですね。
さて、それでは、バブルが崩壊すると、地価はどのように変動するのか。
過去のデータを振り返ります。
バブル時のピーク、1992年の3650万円を付けた銀座・鳩居堂本店前の地価は、バブル崩壊後5年あまりで、1136万円まで暴落しました。
なんと、およそ3分の1以下の水準に下がってしまったのです。
もちろん、その土地を売る気がない人にとっては、固定資産税が下がるのでありがたいことかもしれませんが、一般的には資産価値が大きく毀損したことになります。
もし投機を狙って土地を購入している人であれば、相当な損失を被ることになりますので、十分注意していただきたいところです。
よくある質問 二〇一九年バブル崩壊の可能性
Q. 今回のバブルの構図と、これから起こるかもしれない懸念点については、大筋で理解できました。
この状況を踏まえると、これから不動産を購入するのはとてもリスクが高いと思いました。
当面の購入はあきらめた方がよいでしょうか。
A. たしかに、これからの不動産市況は悲観的な意見が多いと思われます。
人口減少、少子高齢化、過疎化が進み、世帯数も二〇一九年から減少傾向に転じるという統計もあります。
賃貸アパートなどの収益不動産はもちろん経営が厳しくなる可能性がありますし、自己居住用の戸建て・分譲マンションも供給過多が祟って空き家が増えていると聞きます。
新築分譲マンションも値下がり傾向に進む可能性が高いかもしれません。
それでは、もう国内で不動産を買ってはいけないのかと言えば、そうも言いきれないところです。
これは極論ですが、NYやロンドン、シンガポールなどと比較すれば、東京はまだまだ割安、などという投資家も一定数いらっしゃいます。
既に日本は、不動産を買えれば必ず勝てる市場ではなくなったのでしょうが、一つ言えるのは、日本国内全体が落ち込むのではなく、人口の一極集中が進み、二極化が鮮明になるということです。
その環境の中で、投資に値するエリアを、良い条件で購入することが出来れば、勝負できる可能性がありそうです。
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