不動産投資100問100答(2)自分はどのくらいの物件を買えるでしょうか?

筆者の不動産投資のコンサルタントとしての体験から、よくある質問に簡潔に答えていく「不動産投資100問100答」シリーズ。今回は第二回として、物件購入に焦点を当てます。

今回の質問は、「自分はどのくらいの物件を買えるでしょうか」というもの。この質問も不動産投資をこれから始めようと思っている方、始めるかどうか悩んでいる方から頻繁にいただく質問です。

もし、自分が取れるリスクを最大限取ったとして、最大でどのくらいまで規模を拡大できるのか、皆さん知りたいと思います。

個別具体的な事情に左右されることは百も承知ですが、筆者の体験上、妥当と思うところをお伝えします。

とりあえず年収10倍基準?

とても大雑把で乱暴な話ですが、あなたの年収が700万円以上で、物件価格の2割くらいの自己資金を持っていれば、年収の10倍くらいの物件を買うことができると思います。たとえば、年収700万円であれば、最大7000万円くらいまでの物件を買える、ということです。

よく住宅ローンでも似たようなことが言われます。年収の6倍か7倍くらいが最大値だと思います。投資用不動産でも、同じような感覚で、年収の●倍、という基準で融資をしてくれる金融機関があります。かつて投資用不動産に積極的に融資をしていたスルガ銀行では年収の20倍を基準にしていたと言われています。

不正融資問題や、書類偽装などの不祥事が明らかになってから、不動産投資に対する金融機関の姿勢は厳しくなったため、いまでは融資額をもっと厳しく見ると思いますので、とりあえず一般の方であれば10倍くらいまでは融資が出そうだ、という認識でよいと思います。

規模を大きくしたい人はどこまで行ける?

筆者のクライアントの直近の実例だと、世帯年収(夫婦の収入合算)で1800万円くらいのご家庭で、資産規模を4億円くらいまで融資を受けています。およそ20倍超ですね。

ただ、いきなり4億円ではありません。1棟目で2億円くらい、2棟目でさらに1億円超、返済が進んできたので3棟目でさらに1億円超、という感じです。7~8年くらい時間をかけてここまで規模を大きくしています。

このご夫妻はコツコツ資金を貯めて、住宅ローンも早めに完済している堅実派です。使える自己資金も5000万円くらいは貯めていたので、それほど無理はありませんでした。ちなみに、使える自己資金は5000万円くらいまででしたが、お子様の教育資金・積立型保険などすぐには使えない資産も含めると、金融資産の合計で7000万円くらいの水準でした。

この方以外にも実例はたくさんありますが、大体は年収1500万円~2000万円で、少し時間をかけて資産規模を4億~5億円くらいまで大きくする方が多いです。

普通の感覚の方であれば、おそらくここまで規模を膨らませれば結構お腹いっぱいになるはずです。物件が増えると、管理・経営の煩雑さも増えてくるので、運用面での面倒ごとも多くなります。

少なくとも一般の方であれば4億くらいまで。個人的には2億か3億くらいまでで十分かなと思います。それ以上は、よっぽどの事情のある方、もしくは野心のある方の世界です。

もっとガツガツしている人は?

もはや業者、セミプロと言っていいレベルになりますが、その方々になると、総借入で20億円くらいまで規模を大きくしています。

やや専門的になりますが、ひと昔前であれば、購入時にかかった消費税の還付を受けて自己資金を温存しつつ、複数の法人を設立して複数の金融機関から融資を受けて、数年のうちに一気に資産規模を拡大させていくやり方で資産を拡大させていました。

一時、書籍やセミナーなどでも派手に喧伝していた投資法ですが、うまく時流に乗れた方々はそのくらいの規模まで達しました。

このような方々は投資の出口(物件の売却)にも積極的で、よく資産の組み換えをしています。高値で売れる市況で物件を売却して利益を確定し再投資します。次第にそれが実績となって、さらに融資を受けられるようになると、良いサイクルが出来上がります。

ただ、はじめの頃は相当に大変だったはずで、複数の金融機関から融資を受けるだけの年収と資産背景があったので出来たことだと思います。

年収の低い人は不動産投資は無理? いや、自宅があります。

年収が低い人場合でも、絶対に無理とは言いません。ただ、正直向いていないと思います。

あくまでも筆者個人の見解ですが、そこまで年収が高くない人は、不動産投資の観点で自宅を買うことをおススメします。不動産投資の観点とは、どういうことか?それは、値崩れしにくい物件を割安な価格で買うことです。株式投資と同じです。

それから、インカムゲインの視点でもメリットがあります。不動産投資と違って、自宅購入は家賃収入は入ってきませんが、賃貸住まいと違って家賃の支払いが発生しません。収入増ではなく、支出減で勝負することになります。

もちろん、自宅購入後はローン返済があるので現金は出ていきますが、借金の返済をしているだけなので、次第に含み資産が大きくなります。これがあなたのリターンになってくれます。

不動産を保有すると諸経費(固定資産税等)はかかりますが、せいぜい年間10万~15万程度と言われています。一般的な家賃負担よりは大幅に低いはずです。

余談ですが、もし固定資産税などの諸経費よりも家賃負担の方が低いような物件・エリア(家賃が激安なエリア)であれば、そんなところでは物件を買わずに借りた方が絶対に賢い選択です。

そもそも、自宅の購入は社会的に優遇されています。住宅ローンは金利も低くて長期間の融資が可能です。しかも税制上も優遇されています。うまくいけば、買った時よりも高く売れることもあります。そうなれば、立派な不動産投資です。

実際に「自宅転がし」で一財産を築いた人もいらっしゃいます。広い意味では、自宅購入も不動産投資です。いま年収がそれほど高くない方は、焦って投資に走るよりも、自宅購入という観点での不動産投資を検討するとよいと思います。

時間が経っても値崩れしない物件を見極めるため、不動産相場をリサーチしてみることをおススメします。

総括 自分はどのくらいの物件を買えるでしょうか?

個人が不動産投資をする場合、買える物件の上限は、およそ年収の10倍くらいで考えるとよいでしょう。それ以上は結構リスクがありますし、属性(年収・資産背景など)によって取れる選択肢は大きく分かれます。

大まかに年収700万円以上が目安かと思いますが、それよりも年収が低い方は、自宅の購入を意識する方が健全です。自宅購入で資産構築する方法も十分にありますので、相場やトレンドなどを研究してみるとよいと思います。

まったくの余談ですが、筆者のクライアントで新型コロナ蔓延前に自宅(都内マンション)を買った方が、いま2000万円の資産含み益を得ています。ご参考まで。

The following two tabs change content below.

2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。