不動産投資×民泊は儲かる? 収益化のポイントと運営上の注意点

2020年に東京オリンピック・パラリンピックが決定し、Airbnbなどでも話題となった「民泊」。
2018/6/15には住宅宿泊事業法(通称・民泊新法)も施行されました。

そんな民泊物件への投資は本当に儲かるのでしょうか。実は民泊事業をきちんと収益化するには、いくつかポイントがあります。
一部地域では既に飽和状態となっているほか、住宅宿泊事業法・旅館業法の改正による影響も大きなものがあります。

そこで今回は、これらの外部環境の変化を踏まえて、民泊事業の注意点、収益化させる際のポイントを解説します。

2016年に訪日外国人が2000万人突破

日本政府観光局(JINTO)の調査では、2016年の訪日外国人客数(推計値)は、前年比21.8%増の2403万9000人。
2015年の1974万人を上回って過去最高を更新しました。
国や地域別では、中国からの訪日客が637万3000人、韓国は509万300人、台湾が416万7400人と東アジア地域で訪日外国人の6割以上を占めています。

こうした動きを受けて、日本政府は東京オリンピックが開催される2020年には訪日外国人を現在の約2倍となる4000万人、2030年には6000万人と目標を引き上げました。

今後、日本の観光業を成長戦略の柱に据え、訪日客増加を目指し、観光業の育成を目指しています。
政府がイメージしているのは、年間8000万人の観光客を受け入れているフランス。
訪日外国人を倍にするという目標は、観光立国としてまさに肝煎りの政策なのです。

さらに、訪日外国客の消費額をオリンピック開催の2020年には2015年の倍の7兆円、2030年の目標は約12兆円の自動車輸出額を超える15兆円に設定しています。

【2021年追記】
コロナ禍の影響を受け、2020年は訪日外国人客数は大きく減退してしまいました。国策であるが観光立国が足止めを食らった形になりましたが、今後の巻き返しに期待したいところです。
 2016年 24,039,700人
 2017年 28,691,073人
 2018年 31,191,856人
 2019年 31,882,049人
 2020年 4,115,828人

出典:ビジット・ジャパン事業開始以降の訪日客数の推移(2003年~2020年)

外国人観光客の宿泊施設問題

このような目標を掲げた背景には、観光業を基幹産業にまで成長させたいという政府の思惑があります。
特に直近の課題としては、訪日外国人の宿泊施設の受け入れ態勢が問題となっています。

例えば、羽田空港のある大田区では、宿泊施設の稼働率が2014年には年間平均で91%。
蒲田駅周辺では平日でも外国人観光客の宿泊需要でビジネスホテルはほぼ満室。

カプセルホテルすら泊まれないという事態も発生しています。
そういった事態も受けて注目され出したのが民泊です。

民泊とは、その名の通り民家に宿泊することで、一戸建てやアパート・マンションなどの民家を宿泊施設として提供します。
外国ではバケーションレンタルとも呼ばれ、一般的な宿泊形態として広く普及しています。
海外の大手仲介サイトでは、数多くの施設が紹介されていますが、旅館業法に抵触するような違法営業を行うヤミ民泊物件も多いのが現状です。

そこで、2017年6月9日に新たに成立した「住宅宿泊事業法」にて、年間営業日数は180日以内とすること、オーナーは都道府県への届け出が必要になり、フロントの設置、安全管理、衛生管理、施設案内、保健所の立ち入りなどが義務付けられ、民泊仲介業者は観光庁への登録が必要になりました。

訪日外国人が増加しているのに、宿泊施設が不足している状況に対し、国は2013年に特区民泊を設けて規制緩和の実施を決定しました。
具体的には、全国で初めて開始した東京都大田区を始め、大阪府34市町村、大阪市、北九州市に特区が設けられています。

民泊投資には所有と転貸の2種類がある

民泊で不動産投資を行う場合、大きく分けて2つのタイプがあります。特に「収益化」という点では非常に重要な違いがあります。

一つは、所有タイプ。

すでに不動産を所有している人が、外国人の宿泊客に対して宿泊施設を提供するスタイルです。

もう一つは、転貸(てんたい)タイプ。
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不動産を所有していない人が、所有者から物件を借りて、外国人の宿泊客に向けて施設を提供するスタイルです。

ところが、所有タイプも転貸タイプも近隣住民に説明もなければ、ゴミの処理も不適切で、宿泊施設の利用期間も曖昧なヤミ民泊が多いのが現状です。
そのため、様々なトラブルが起きており、民泊を副業で考え、参入したサラリーマンの多くが投資に失敗しているケースも少なくありません。

民泊運営のリスクについて

民泊運営で儲けるためには、リスクを事前に把握することも必要です。
民泊運営の大きなリスクは、主に下記の2つ。

  • 近隣住民とのトブラル
  • 法令による規制

それぞれ見ていきましょう。

1.近隣住民とのトブラル

民泊は一般住宅で運営することが一般的なため、一般住宅ならではのリスクが存在します。
具体例でいうと、ゲストが宿泊中に大騒ぎしたことで騒音問題になり近隣住民とトラブルに発展するケースや、ゴミの分別をせずゴミを無断廃棄したことで近隣住民とトラブルになることもあります。

トラブル対策ができていないと、最悪の場合では管理人や不動産オーナーから民泊の運営を中止させられる可能性もあります。
近隣住民とのトラブルは、民泊物件に備え付けるハウスマニュアルに禁止事項を明記することで事前に解決がすることが可能です。

2.法令による規制

今後、民泊の法律規制が厳しくなり、地域によっては民泊運営自体ができなくなるリスクです。
その結果、初期費用の回収ができない可能性があります。

自治体の条例では、地域の考え方を盛り込むことができるため、宿泊施設として運営できる日数を制限したり、運営自体を禁止にすることが可能です。
具体例でいうと、長野県軽井沢町は条例で民泊運営自体を認めない方針を表明していたり、浅草寺がある東京都台東区では1Kや1Rの狭い部屋での民泊運営はできない状況です。

突然民泊事業が継続できなくなった、
ということがないように、自治体ごとの条例を事前に確認しましょう。

「民泊×不動産投資」で障害となる旅館業法の問題

外国人の宿泊期間が1ヶ月未満の場合、旅館業法に則って宿泊施設を運用しなければなりません。
具体的には、フロントを設けたり、宿泊名簿を設置したり、衛生管理も徹底しなければなりませんし、保健所による立入検査も受ける必要があります。

一方、特区民泊の場合は、都道府県知事の特定認定を受けた場合、旅館業法の適用が免除されます。
例えば大田区の場合、以下のような許可条件になっています。

  • 宿泊施設の利用期間は2泊3日
  • 近隣住民に対して外国人が宿泊することが事前に適切に説明されている
  • 利用開始、利用終了時の対面等での本人確認ができている
  • 消防法に合致する消防施設が設けられている
  • ゴミの適切な処理がなされている
  • 外国語での注意事項(騒音等)の説明表記がある
  • 特区民泊施設の表示がある
  • 緊急時の24時間対応ができる
  • 苦情対応の窓口が開設されている

「民泊×不動産投資」きちんと収益化させるポイント

「民泊×不動産投資」をきちんと収益化させるために、おさえておくべきポイントは、主に次の3つ。

  • 儲けやすい不動産を見つける
  • 初期費用を抑える
  • 毎月発生する運営コストを把握する

それぞれ見ていきましょう。

収益化のポイント1.儲けやすい不動産を見つける

儲けやすい・収益化しやすい不動産を探すときは次の5つのポイントを必ずおさえておきましょう。

  • 1日の宿泊料金を1万円以上にできる物件
  • 1LDK以上で広い物件
  • 4人以上泊まれる
  • 駅から徒歩10分以内
  • 競合物件が最寄りに少ない

民泊用の不動産を探すなら、1日の宿泊料金を1万円以上で提供できる物件が狙い目です。
また、4人以上で泊まれて駅から徒歩10分以内の利便性がよい物件が良いでしょう。

とくに外国人旅行者は、空港から大きな荷物を抱えてきますので、駅から歩いて10分以上かかってしまうと、予約数に影響します。

収益化のポイント2.初期費用を抑える

民泊運営を始めるためには、物件(不動産)を用意するときに敷金・礼金・保険・カギ交換代といった初期費用が必要になります。

家具・家電やその他の備品を揃えることになると、最初に50万円以上かかることも珍しくありません。
初期費用をたくさんかけてしまうと、投資金額をいつまでたっても回収できなくなってしまいます。

「そんなにかかるの?」と思う人は、家具家電のレンタルサービスを使ってもいいかもしれません。

なので、敷金・礼金が少ない物件を選び、家具などもリーズナブルなもので揃えましょう。

収益化のポイント3.毎月発生する運営コストを把握する

「民泊×不動産投資」は一般住宅をメインとして行うために、賃貸物件に住んでいるときに発生する維持費用と似ています。

例えば、家賃と光熱費とインターネット代金がありますよね。
その他に発生するコストとしては以下のものがあります。

【手数料】
宿泊利用されることで仲介サイトに払う手数料です。Airbnbの場合、手数料は一律3%。

【光熱費】
宿泊施設にかかる電気やガス代金。夏冬はエアコンの利用が多く、電気代が大きくなります。
また、ファミリータイプのお部屋ですと、シャワー・お風呂の頻度も高く、ガス代も大きくなります。

【備品・消耗品】
ゲストが消費する備品代です。電球・ティッシュペーパー・使い捨て歯ブラシといった備品の費用。
物件の広さによって変わりますが、毎月1万円~3万円ほどかかります。

【通信費】
宿泊施設に用意するインターネット代です。
WiFi・固定回線にもよりますが、毎月4,000円ほどが相場です。
外国人ゲストにとってもインターネットは必需品なので持ち運びできるWiFiが人気です。

【清掃代金】
宿泊施設の掃除を代行業者にお願いした場合に係る費用です。大体の相場は以下の通りですが、
例えば複数のお部屋を運営しており、全室シングルであれば、一部屋あたり3000円よりも安い
金額で受けてくれることもあります。

 1K/1DK/1LDKなら、1回につき3,000円から5,000円程度。
 2DK/2LDK/3K/3LDKなら、1回につき6,000~7,500円
 3LDK以上なら、1回につき7,500円以上が相場です。

【代行手数料】
運営(メッセージやり取りなど)を代行した場合にかかる費用。
運営業務全てお願いするなら総売上の20%程度が相場です。

「民泊×不動産投資」円滑な運営のために

ここまで収益化させるポイントをお伝えしましたが、実際に運営してみると想像以上に手間と時間がかかることが分かると思います。
特にコミュニケーションをきちんととれるかどうかは死活問題です。ゲストの信頼にも直結するので何としても対策を取りましょう。

英語でやり取りできる人を確保する

予約時の問い合わせもそうですが、道に迷ってゲストが物件に辿り着けないときに、しっかりと案内ができるように準備することは民泊運営の基本です。

この時に、英語対応ができる人がいないと、苦情やトラブルの原因に繋がります。
なのでAirbnbなどで民泊運営をするなら必ず英語対応ができる状態を用意しておきましょう。

民泊代行業者をみつける

あるいは、代行業者にお願いすれば、民泊運営を代わりに行ってくれますし、英語で対応してくれます。

普段は別の仕事をしていてこまめなやり取りがむずかしい。
英語が話せない。

民泊運営したいけど初めてで自信がない。
という人が利用するといいでしょう。

収益を目的とした「民泊×不動産投資」なら、1人では限界がありますので代行業者を活用することがオススメです。

以上、今回は「不動産投資×民泊」収益化のポイントと運営上の注意点について解説しました。

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2K-online事務局

主に日本国内で活動する投資アドバイザー。宅地建物取引士。税理士法人を母体とするコンサルティングファームにて約10年勤務。相続税対策としての不動産活用と、資産形成のための不動産活用が得意分野。2013年から独立し、クローズドの会員組織(階層別)を設立・運営。